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発達障害の子の勘違い会話「大人も同じ…」 園児の事例集が話題に
「1人ゴミを10個ずつ拾ってゴミ箱に入れましょう」。教師のそんな言葉を聞いたある児童は、ゴミ箱をひっくり返してしまいました。その子には自閉傾向がありました。発達障害の子の勘違いについて、専門家は「聞く側がどのように理解するのかを想像しながら話す必要がある。大人同士も含めて、あらゆる人に通じることです」と話します。
2016年9月17日に朝日新聞で、京都府宇治市の広野幼稚園が、園児との会話で意図がはっきり伝わらなかった出来事を記録している取り組みを紹介しました。
先生「運動会、何か(種目)出るの?」
園児「おやつが出るよ」
園児との会話を読みかえして大人の言葉遣いを改善し、災害時の指示にもつなげているという内容でした。
記事に対して「他人事ではない」といった声が読者から寄せられました。
特別支援学級で学ぶ小学5年生の女の子は、4歳の頃、発達障害のアスペルガー症候群(現在の自閉スペクトラム症)と診断されました。
小学1年の時、「(その日の授業で)習ったところを音読する」という国語の宿題が授業のたびに出ました。女の子は毎回、4月からそれまでに習った内容を全て音読しました。日に日に読む量が増えるため、母親が「『今習っているところ』でいいのよ」と言ったが、女の子は「『習ったところ』を読まないといけないの。先生がそう言ったの」といって、なかなか理解できませんでした。
連絡帳に担任の意図を理解していないことを書き、指示し直してもらったそうです。
母親は「目立った知的発達の遅れがないため、私たちが気づいていないところで、まだ困っていることがあるかもしれない」と話します。
白百合女子大学教授(発達心理学)で、神奈川県藤沢市のわかふじ幼稚園園長の秦野悦子さんは、自閉スペクトラム症によって、言葉通りに物事を捉え、言葉には表れていない話し手の意図を理解できない傾向があるときは、話し方に注意が必要と言います。
ある小学校が遠足に出かけ、教師が「1人ゴミを10個ずつ拾ってゴミ箱に入れましょう」と話しました。自閉傾向があった1年生の児童は周りにゴミが落ちていなかったため、ゴミ箱をひっくり返してゴミを拾い集めたそうです。
「その子は『ゴミを10個拾う』ことを忠実に実行しました。その場所をきれいにする目的や、ゴミが落ちていなければ無理に拾う必要がないといった条件をしっかり伝えることが必要でした」と秦野さんは指摘します。
ほかにも、「ちょっと待ってて」の「ちょっと」はどれくらいの長さなのか。「好きにしなさい」は自由を与えることなのか、怒っていてかまっていられないことなのか、悩むこともあると言います。
秦野さんは「言葉の背後にある意図まで理解できず、困惑することがある。いろんな経験が少ない子どもなら、なおさら。話す側はあいまいな表現を避けたり、例外や条件を添えたり、具体的な話し方を心がけるようにするべきです」と話します。
そして、自閉スペクトラム症に限らず、「会話の意図を理解し合うには、発言の前提となる内容を話す側と聞く側で共有することが大切です。話す側は、聞く側がどのように理解するのかを想像しながら話す必要がある。大人同士も含めて、あらゆる人に通じることです」と指摘しています。
会話の勘違いは子どもだけではありません。
記事に対しては「目的語、修飾語の欠落。上司もこればっかりで『?』となる」など、職場で起きているという声がインターネット上で目立ちました。
第一生命保険が主催する「サラリーマン川柳」にも、上司との会話をネタにした作品が多数投稿されていました。
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