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保育園、反対するのはどんな人? 近所のお年寄り…じゃない調査結果
足りない保育園、でも新設しようとすると地域の住民が反対する――。「反対するのは高齢者」という図式で語られることが少なくありません。でも、そんなイメージを覆す調査結果があります。そもそも反対派は少なく、年齢による偏りもなかったのです。では、どんな人が反対するのか? 騒音問題に詳しい八戸工業大の橋本典久教授(音環境工学)に聞きました。
高齢者や閑静な住宅街に住む人ほど騒音を心配して建設に反対する――。みなさんにはこうしたイメージがあるのではないでしょうか。私もそう思っていました。ところが今年8~10月に実施した騒音の意識調査で、これが覆える結果が出ました。
調査は東京都と埼玉、千葉、神奈川の3県の様々な地域の一戸建て住宅1927戸が対象で、約18%の341戸が答えてくれました。「あなたの家の隣に保育園建設計画が起こったらどうしますか」との質問に「強く反対する」「反対する」と答えたのは計1割。そもそも反対は多くはなく、高齢者ほど反対するとの相関関係は見られませんでした。住宅街の住民が、商業・工業地域の住民より反対が多いこともなかった。
ではどういう人が反対するのか。「強く反対」と答えた人の全員、「反対」と答えた人の9割超が、「自宅の横に保育園ができると騒音に対する不安を感じるか」との質問に「感じる」と回答しました。
騒音への不安を感じても、子どもが大きな声を出して遊ぶことは心身の発達に大切だとの考えなどから反対しない人も少なからずいますが、不安を感じている人ほど建設に反対する割合が高いといえる結果でした。このため、保育園建設問題では、騒音への不安を和らげることがとても大切だといえます。
必要なのが、保育園ができると実際にどれぐらいの音が出て、防音壁などの対策でどれぐらい音が減るかといった客観的データです。これがないと、実際より大きな音を住民が想像したり、園側の説明があいまいになったりしてしまいます。
2015年に東京都と青森県の様々な規模の保育園10カ所の音レベルを測りました。100人の園児が園庭で遊んでいる時、子どもたちの中心から10メートル離れた場所の音は、騒がしい街頭と同じ程度の約74デシベルでした。
一方、子どもの声は甲高く、高い音は防音壁の裏にまわり込みにくいので、その効果が高いこともわかりました。データ以上に大切なのが良い人間関係の構築です。人は、好感を持つ人がたてる音はあまり気にならず、嫌いな人やよく知らない人の音は小さくてもうるさく感じることが調査でわかっています。
園や自治体は早い段階から誠実に対応し、「音が気にならない人間関係」を住民と築いていくことが必要です。不誠実な対応は、住民の「不安」を「怒り」や「敵意」にエスカレートさせる。防音壁で実際の音を小さくしても、住民には変わらずうるさく感じられることがあり、解決はとても難しくなる。
もちろん、誠意を尽くしたと思っても解決が難しいケースもあるでしょう。高層マンションの建設は、事業者が住民に説明し、まとまらない時は第三者が加わる紛争調停委員会が和解案を出す条例を作っている自治体がある。保育園建設にも、第三者を入れる仕組みが必要ではないでしょうか。
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橋本典久教授(はしもとのりひさ) 1951年生まれ。専門は音環境工学。著書に「近所がうるさい!」(ベスト新書)など。
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