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「WELQでガン調べて愕然…」 看病で社長引退、南場会長が語った言葉
DeNAが運営する医療・健康情報サイト「WELQ」などで盗用や内容に誤りのある記事が掲載されていた問題で、経営陣が12月7日夕、会見を開きました。会見の約2時間前に広報部から送られてきた「登壇者追加のお知らせ」には、創業者である南場智子会長の名前がありました。南場会長は、家族の看病のために社長を退き、闘病中はネットで病気の情報を集めていたと言います。医療事業の旗振り役でもあった南場会長が語った言葉とは?
南場会長といえば、会見の2日前に長く看病していた夫の紺屋勝成氏(53)を亡くされたばかり。2011年には看病のために社長を退く決断をするほど、家族を大事にしてきたことで知られています。
DeNAでは遺伝子検査事業を始めるなど医療分野にも力を入れてきただけに、今回のWELQの問題とは切っても切り離せない人物ではあるのですが……まさか、喪に服されている時に登場されるとは。
広報に問い合わせたところ、「まずは自分の言葉で説明したい」と本人の強い意向だということでした。
会場に現れた南場会長は、黒いスカートスーツに白いカットソー姿。落ち着いた足取りで会場に入ってきたものの、ずっと伏し目がちで、硬い表情。
守安功社長が冒頭の説明で「医療関連の情報、細心の注意を払うべき」と読み上げたところで、胸に手をあてて、何かを振り切るように頭をふりました。
「南場さんは、ご家族の介護をして、WELQの記事をみたことはあるのか?見たときにどう思ったか?」
ある記者の質問に、南場会長は、まるで待っていましたとばかりに話し出しました。
「不覚だが、(問題となっているような)WELQの記事は認識していなかった。家族の闘病が始まった時から、ネット情報を徹底的に調べた。『ガンに効くキノコ』など、ネット情報がそれほど役に立たない、ネット情報が信頼できないと思った」
南場会長は、ネットの医療情報に疑問を感じた2011年以来「論文を読んだり、専門家からレクチャーを受けたりしていた。ネットでは毎日、同じ患者さんのブログはチェックしていた」と明かしました。
WELQの問題を知ったのは今秋、報道が過熱しだしてからだったそうです。
「WELQでガンを調べて記事がでてきたときには、いつから重い医療情報をあつかっているのかと愕然とした。それは経営者として不覚だった」と述べました。
南場会長は経営者として、WELQへの責任は認めます。
別の質問では「南場会長のかかわった医療メディア『メドウェッジ』の記事がWELQに譲渡されていた。医療で払うべき細心の注意が払えなかったことや、事業を手元に置いておくべきだったとか、反省点がないか」と問われました。
「メドウェッジ」について、南場会長は「学術論文を一般の家族や健康に関心がある人に届けることが目的で、医療のプロが書いていたが、想定ほどユーザー数が伸びなかった」と振り返りました。
譲渡した経緯については「WELQを始める時にある程度の記事量を確保するため、最初の種コンテンツとしてまとまったものがほしいということで、内容は過程からして信頼置ける内容だったため」と説明。
一方で「専門的な情報を素人に届けることを事業として続けられる状態の解を見つけることができなかった」と反省の弁を口にしました。
一連の問題については「WELQで信憑性の怪しいものが含まれていたこと、それが医療情報だったことには大変申し訳ないの一言です」と謝罪しました。
会見では、著作権侵害で問題になった人物をメディア事業に採用したことについても説明がありました。
「そうした人を採用するのは経営会議でも問題になった。その若者が、ネット上で炎上して心をいため、おわびをし、反省しているならもう一度チャンスを与えてみようじゃないか、と私が発言して、その人物にも会い、確認した」
「ネット文化の発展で、大きな間違いをおこしたところにチャンスを与えることは、安易におこなったのではなく、喧々諤々話し合った」
自身の判断で決めた人事であることを明かした南場会長は「その後、教育をできたのかがわからないが、結果として同じような過ちを当社自身が起こしてしまった。認識の甘さであったと感じている」と話しました。
「DeNAが信用を毀損したという事実があるので、努力して信頼回復に努めたい」
会見が終盤になるにつれ、まっすぐ前を向いて話したり、思いを語る機会が増えていき、守安社長の言葉を補足するように話す回数も増えていきました。
ベンチャーとして時代の流れをつかみ、次々と業態を変えながらプロ野球のオーナーになるまで成長したDeNA。今回の問題では、ITベンチャーのサクセスストーリーを自ら汚す結果となりました。
3時間近く続いた会見後、あるIT業界関係者が問題の発覚直後にコメントした「DeNAはコンプガチャ問題でかなり勉強したはず。経営者の評判が良いだけに、利益重視に走ってしまう体質は不思議です」という言葉を改めて実感しました。
今回の問題では、発覚直後に守安社長が次々と記事の非公開を決断した、その危機管理も話題になりました。
経営者の評判のよさと、問題のある事業とのかい離。コンプガチャ問題で学んだのは危機管理だけだと言われない再生策を出せるのか。同社は、今後、第三者委員会の調査で問題の本質を明らかにし対応策を示していく、としています。
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