IT・科学
まとめサイトの盗用、ある“浴衣画像”が「収拾つかない」事態に
一般ユーザーの投稿記事を載せる「まとめサイト」で問題化している記事の無断盗用や規約違反。IT大手・DeNAが運営する女性向け人気サイト「MERY」が、記事公開の停止を発表するなど影響が広がっています。「まとめサイト」での盗用は、どれくらい広がっているのでしょうか? ある一枚の「浴衣画像」の被害を調べてみました。
今回調べたのは、通販サイト「浴衣結(ゆかたむすび)」に、約4年前に掲載された浴衣の装いを解説する画像です。
取材で「よく盗用されている画像」と耳にしたため選びました。浴衣姿の女性モデルがほほえみ、浴衣を着るときに使う小物の名前が解説されています。カラフルで見栄えのする、手間のかかった画像です。
「浴衣結」の運営会社エスアイピー(大阪市)に連絡をしてみると「画像を盗まれすぎて、収拾がつかなくなっている」と回答が返って来ました。
浴衣結には着付け手順を解説するイラストも多数載っていますが、これらも一緒に盗用されているといいます。
担当者は「さまざまな面で多大な迷惑をこうむっている」。転載許可の問い合わせが来ることは「ほとんどない」といい、使用許諾を出したまとめサイトは「nanapi」と「OKWAVE ガイド」だけです。
この画像、実際にどんなサイトに無断転載されているかグーグルで検索をしてみました(いずれも6日夜現在)。
クリック数回で大量に見つかりました。
まず目についたのが、まとめサイトの代表格「NAVERまとめ」です。記事の最終更新日は2013年7月で、例の「浴衣画像」が転載されています(ただし、別の女性モデルが映っている古いバージョンの画像)。さらに着付け手順のイラストが11枚ずらりと転載されています。記事の大半が、浴衣結の画像で構成されている状態です。
さらに大手企業の運営サイトが続々と出てきます。
サイバーエージェントが運営する「by.s」では、浴衣画像の出典元として、浴衣結ではないサイトが書かれているという、恐ろしいことになっています。
同じくサイバーエージェントが運営する「スポットライト」。現在、医療関係を中心に約10万件の記事のうち数%を非公開にして、不適切なものがないかチェックしています。しかし、浴衣画像はしっかり掲載されています。
まだまだ、転載先はあります。
ファッション情報が中心の「masimaro」では、浴衣画像とイラスト計20枚が転載されています。
現在は削除されていますが、DeNAが7日に公開停止する予定の「MERY」にも、浴衣画像が転載されていました。
ウェブアーカイブで調べると、2016年5月ごろまで少なくとも約2年間にわたり掲載されていました。
浴衣結の運営会社によると、浴衣画像の女性モデルについては、自社サイトにだけ画像を掲載する契約を結んでいました。
しかしあまりの盗用の多さに、他サイトへの転載を前提にした割高な契約を迫られそうになりました。なんとか避けられるよう、苦しい交渉を重ねたといいます。
担当者は「以前ならモデルを使った画像は転載しないなど、暗黙の了解があったように感じる。それが4~5年前からムチャクチャになってきた」。
大手サイトに転載されると、検索エンジンで自社サイトより目立つ位置に表示されることも。逆に浴衣結に対して「画像を他サイトから転用したのではないか」と疑う問い合わせまであったといいます。
担当者は「盗用に対応する労力が無駄で、今は何も対処できていない。まとめサイトには盗用記事を掲載しないようにして欲しい。検索エンジンも、盗用記事は目立たないようにするなど、多方面での対策が進んでほしい」と話します。
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