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2016年10月27日

九州にカボチャの「独立国」を作ってしまった、72歳の数奇な画家人生

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油彩画「かぼちゃのブリューゲル」とトーナス・カボチャラダムス館長=北九州市門司区谷町2丁目

油彩画「かぼちゃのブリューゲル」とトーナス・カボチャラダムス館長=北九州市門司区谷町2丁目

 カボチャドキヤ国立美術館(北九州市門司区)は、地元在住の画家トーナス・カボチャラダムスさんの作品約100点を展示している私立美術館だ。空想の国カボチャドキヤでは、みんなが子どもになって、うその皮を脱ぎ、楽しそうに暮らしているという。細密で不思議な描写に初めは圧倒されるが、眺めるうちに懐かしさと温かみを覚え、楽しく穏やかな気持ちになれる。

カボチャドキヤ国立美術館の外観

カボチャドキヤ国立美術館の外観

カボチャはみんなのお母さん

 縦164センチ、横178センチの油彩画「かぼちゃのブリューゲル」。海にせり出した巨大なカボチャの表皮をらせん状に巡る通路に沿って、昭和の雰囲気をした商店や住宅が立ち並ぶ。

 チャンバラをしたり、鉄輪を棒で転がしたり、リヤカーを引いたり、足場の上で修繕したり、鍋の汁物を食べたり、グラスを手に語らったり、湯船につかったり、空を眺めたりなど、300を下らない数の人々の様々な営みが描かれている。

 カボチャラダムスさんは言う。「カボチャは、尊敬されていない、高貴でない、ありふれたもの。私たちはそこから生まれ、そこに帰っていく。カボチャは自然というみんなの大きなお母さんです」

「かぼちゃのおかあさん」

「かぼちゃのおかあさん」

人の暮らしが面白い

 横たわる女性を模した建物を中心に据えた油彩画「にこにこ元気町」、サザエの貝殻や蜂の巣を題材にした「さざえ町商店街」「風の巣山」など、カボチャドキヤの観光名所を描いた銅版画シリーズ。女性もサザエも蜂の巣も、自然の象徴だ。これらをはじめ、大勢の人間が描き込まれた作品が多い。

 「いろいろな人を描かないと面白くない。人の暮らしが一番面白い」。一つの作品の完成まで1年以上かかることもあるという。

 大勢の人間が存在する風景は、昭和30年代の故郷・門司港の光景だ。「人が生き生きと楽しく暮らしている絵を描こうとすると、その頃の風景になる。人々がまちの中でいろんなことをしているのが楽しい」

「人糞発電所」

「人糞発電所」

世界全体を描きたい

 名画「バベルの塔」で知られる16世紀の画家ピーテル・ブリューゲルを師と仰ぐ。例えば、何百もの人々が描かれている「十字架を担うキリスト」。右隅の処刑場へ向かう人々の中にほんの小さく、連れた子どもの帽子を高く上げて、からかっているような大人の姿がある。

 「世界の部分ではなく全体を、隅から隅まで生きているように写し取っている」と憧れる。

 「この世界にはたくさんの人や生き物がいる。それらを一つも欠かさず、省略なしに描くのが理想。どれが大事でどれがいらないじゃなく、全てが等価値。等価値である以上、すべてを描かなくてはいけない」

「かぼちゃのブリューゲル」

「かぼちゃのブリューゲル」

東大をドロップアウト

 カボチャラダムス(本名・川原田徹)さんは、裕福な家庭で育った。建築家を志して東京大学に入学したが、「いわゆる自分探し」に悩んでドロップアウト。「壁に当たったことがなかった。これでええんかなーという気がずっとしていた」

 24、25歳頃のある夜、長年の悩みが晴れた。一時戻っていた門司港の家で静かな暗闇の中、草や木や石と自分が、一体になったような感覚を体験した。

 「自分よりずっと大きなものと一つになったところに本当の自分がある」。東京から故郷に引き上げ、絵を描き始めた。

 72歳の今も、自作したカボチャ型のアトリエで創作を続けている。「仕事ですからね。今日は今日、明日は明日でやることがある。たいしてもらえなくても幸せです」。最近の楽しみは、週末に欧州のオペレッタをDVD鑑賞することだ。

カボチャラダムスさんのアトリエ内

カボチャラダムスさんのアトリエ内

土曜と祝日のみ開館

 カボチャドキヤ国立美術館は、篤志家が買い取った1918年建築の洋館に2002年に設立された。

 土曜と祝日の午前11時~午後4時のみ開館する。鑑賞後には運営するボランティアがミントティーを振る舞ってくれる。入館料300円(中高生100円)。午後は館長のカボチャラダムスさんが在館し、趣味のリコーダー演奏を披露してくれる。

     ◇

【カボチャドキヤ国立美術館】
住所:北九州市門司区谷町2-6-32
電話:093-331-5003

その描写に圧倒、そして何だか癒やされる…カボチャ画家の世界
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