IT・科学
かいかいさんからの取材リクエスト
詐欺バスターって何?
ホラ貝サウンドで振り込め詐欺防げ お年寄り守るサウンドエフェクト
ツイッターで話題になっている詐欺バスターのホラ貝の音が気になります。 かいかい
手のひらサイズの黄色いボックスには12個のボタンが並んでいます。ボタンを押すと「この会話は録音されています」「家族に相談します」。その名も「詐欺バスター」。ネットで話題になり、メーカーには問い合わせが相次いでいます。振り込め詐欺対策のために作られたグッズですが、謎の「ホラ貝サイレン」が仕込まれているなど、突っ込みどころも。なぜこんなアイテムが生まれたのか。そこには、詐欺被害から守りたい開発陣の熱い思いが込められていました。
「詐欺バスター」を作ったのは、インテリアや生活雑貨のメーカー、アントレックス社(東京都新宿区)です。
社員のまわりにも振り込め詐欺の被害にあった人がいて、社長の発案で「楽しみながら詐欺について知ってもらう商品があれば役に立てる」という思いから作られました。
「詐欺バスター」で流れる音声は、社員の家族が出演しています。流れる音声は12音あります。
・合言葉を言ってください
・この電話の内容を全て録音しています。
・警察に相談させていただきます。
・あなたの電話番号と住所を言ってください。
・お客さんが来ているので電話を切ります。
・(ピンポーン)人が来たので電話を切ります。
・(パトカーの音)
・私の好きな食べ物は何?
・(電話のベルの音)
・一度家族に相談してからかけ直します。
・(ほら貝の音)
・悪いことはやめて正しく生きてください。
アントレックス社では「サウンドマシン」というパーティーで使う効果音などを流す商品を取り扱ったことがあり、「詐欺バスター」でも、その技術が使われています。
開発を担当した玉城恵望さんは、「ボタンは12個用意しました。お年寄りにも楽しみながら使ってもらいたくて、色んな音を入れました」と話します。
一見、ジョークグッズに見える「詐欺バスター」ですが、振り込め詐欺の現場でも使ってもらえるよう、工夫を凝らしています。
振り込め詐欺の電話は、突然、かかってきて、相手を動揺させるのが手口です。お年寄りが慌ててボタンを選ぶ心の余裕がないことを想定し、どのボタンを押しても、電話の向こうの相手を驚かせる音を集めています。
ボタンには、アイコンをつけています。デザインはなるべくシンプルにし、アイコンに対応したセリフを大きめの文字で印刷した取り扱い説明書もつけています。この取説は、電話の横に貼っておけるデザインにしています。
ツイッターでは、「詐欺バスター」の動画が投稿され、2万以上のリツイートを集めるなど評判になっています。
中でも話題になっているのが「ホラ貝サイレン」です。ホラ貝のアイコンのボタンを押すと、文字どおり、ホラ貝の「ボォー」という音が(大きめの音量で)流れます。
なぜ「ホラ貝サイレン」が実装されたのか?「そこには三つの意味があります」と玉城さん。どうやら、ネタで仕込まれたわけではないようです。
一つ目は、お年寄りになじんでもらうための仕掛けです。時代劇で登場する「ホラ貝」には戦を始める勇ましいイメージがあります。お年寄りに、ある意味「身近な」音を入れることで、「詐欺バスター」を手に取ってもらいやすくしているそうです。
二つ目の狙いは、普段から使ってもらうためです。実際、「詐欺バスター」を入手すると、誰かにこの「ホラ貝サイレン」を聞かせてみたくなります。そしてたいていウケます。孫がいる人は、絶対、聞かせたくなります。こうやって、普段から「詐欺バスター」をいじってもらう狙いがあります。
三つ目は、犯人への警告です。「詐欺バスターで犯人の心を入れ替えさせることは、まあ、できないでしょう。でも、『この電話、詐欺だってわかっていますよ』ということは伝わるはず」(玉城さん)。
振り込め詐欺などの特殊詐欺の被害額は、2015年1年間で482億円に達してます。警察は過去最多の2506人を逮捕・書類送検していますが、主犯格は67人だけ。犯行グループの全容解明は難しい実態があります。
なくならない被害に対し、硬軟織り交ぜた切り口で立ち向かう「詐欺バスター」。「ホラ貝サイレン」以外にも「悪いことは止めて、正しく生きてください」など、遊び心あふれる音声が仕込まれています。パッケージも、イメージキャラクター「鷺サギ」が描かれ、手に取りやすいよう工夫されています。
これまでは長野県や、神奈川県の防犯イベントで使われています。もちろん、高齢者だけでなく、雑貨店やホームセンターでも買えます。
最近は、ネットで話題になったこともあり、ネット通販での注文が急増しているそうです。
1/35枚