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嵐の聖地「大野神社」 今や年間20万人 5色のお守り、チケット祈願
「嵐の5人に会えますように」「コンサートに行きたい!」そして、「ずっとずっと5人でいてくれますように」――。山のふもとにたたずむ滋賀県栗東市の神社に、色とりどりの絵馬7千枚以上がかかっています。そう、ここはアイドルグループ「嵐」ファンの“聖地”。リーダーの大野智君と名前が同じの「大野神社」です。ただそれだけなのに、無名の神社がこの数年で一躍、年間20万人が訪れる人気スポットになりました。(朝日新聞大阪生活文化部記者・尾崎千裕)
9月初旬の金曜日。最寄りのJR駅からはタクシーで約20分。はっきり言って不便なのに、平日でも参拝者は絶えません。ちょうど、11月から始まる嵐のドームツアーの抽選待ちの期間だったこともあり、週末には1日2千人が訪れたそうです。
滋賀県彦根市の主婦(35)は、2度目の参拝。前回絵馬を書くと、高倍率のアリーナツアーのチケットが当選しました。カラフルに仕上げた絵馬を手に「今年も当てたい」と力が入ります。
中国・北京からはるばる来たのは、26歳と27歳の会社員2人組。6日間の予定で大阪・京都観光に来日し、ネットで知って念願だった大野神社まで足をのばしました。「ずっと来たかったので感激。12月の東京公演が当たるようにお祈りしました」
大野神社の歴史は千年以上。国重要文化財の楼門をはじめ、改修工事中の拝殿などを抱える由緒正しい神社です。
その境内に置かれた机に向かって、ファンはみな絵馬を書いています。嵐のメンバー5人それぞれのイメージカラー(青、赤、緑、黄、紫色)のサインペンも細いものから太いものまで大量に用意されています。テント屋根もあり、ここで4、5時間過ごすファンもいるとか。
5色をあしらった何種類ものお守りや絵馬のほか、だるまやバッジも用意。昨夏には、5色の箱に入ったバウムクーヘンを扱う地元のカフェが境内に出店しました。「参拝記念」の撮影スポットやファンが寄贈した嵐グッズの展示コーナーもあります。
参拝するファンの間ではすっかり有名人、禰宜の大宮聰さん(43)に話を聞きました。
「すべては、嵐のファンとの会話がきっかけ。求められることにこたえてきたらこうなったんです」
6年ほど前のある日、わざわざ県外から訪ねてきた女性に「青色のお守りはないですか」と尋ねられました。
当時、嵐のメンバー全員の名前も定かでなかった大宮さんは「???」。
よくよく話を聞くと、「嵐の大野君と同じ名前の神社だから参拝に来た」。記念に大野君のイメージカラーの青色のお守りがほしいのだとわかりました。
お守りの制作に乗り出すと、つぎつぎにミラクルが重なります。
ファンとに渡した名刺がきっかけで、名字の「大宮」は大野君と二宮和也君のユニット名「大宮SK」と同じだし、名前の聰は大野君の「さとし」と同じ読みと判明。誕生日は、松本潤君と同じ日だったのです。
ネットで火が付き、訪ねたファンが境内やグッズの写真をアップすると、さらに加熱しました。
「参拝される方の気持ちをくんだ環境作りをする、ファンの方が気持ちよく過ごせる場所を作るのも僕らの仕事だと思うんです」
「御利益がある」と、大宮さんの名刺も引っ張りだこ。以前は年に50~100枚だったのが、いまは10万枚刷ります。
ファンの要望を受け、名刺の名前「聰」には「さとし」とフリガナをふりました。
スマホを渡され「チケットの申し込みボタンを押してほしい」と頼まれたり、握手を求める列ができたりすることもあります。大宮さんは、できる限りきめ細かい対応を心がけています。
「正直、2、3年で飽きるのかなと思っていましたが、嵐のファンは飽きない。それがすごい。今では国民的人気だし、宝ですよね」
白髪のおばあちゃんから孫まで3世代で参拝するファンを見ると、びっくりするほどのパワーを感じるといいます。
「大野神社は嵐さんにパワーをもらいましたが、こちらからもファンのみなさんが集う場を作ることで、嵐さんにパワーを吹き込んでいきたいという思いがあるんです」
そうした循環が大野神社のパワーをさらに引き出してくれると信じています。
同時に大宮さんには「神社や信仰というものに親しむ窓口になれれば」という思いもあります。
実際、大宮さんの肩書「禰宜」の意味を調べたり、神社での参拝マナーについて調べたりしてくれるファンも。山に抱かれた静かなたたずまいの雰囲気にひかれて神社に通うリピーターも生んでいます。
関西には大野神社のほかにも、嵐メンバーの名字と同じ神社が点在しています。
「嵐神社めぐり」「4社(5社)めぐり」といって、はしごするファンもたくさんいます。
まずは、神戸市中央区の二宮神社。
ここにも、メンバーの5色で描いた虹と「叶」の漢字をあしらった絵馬が用意され、ファンに人気です。
地名が「二宮」のため、近くには「二宮商店街」や「二宮筋商店街」も。
兵庫県尼崎市にあるのは、櫻井神社。尼崎城の歴代城主をまつるために建立された神社です。
それぞれに意味がある5色の石を使ったお守りがあります。
櫻井神社は大阪府堺市にも。また、松本神社は京都府城陽市にあります。
ただ、「相葉」神社は今のところ見つかっておらず、かわりによく似た名前の神社を見つけて巡っているファンもいるようです。
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