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「君の名は。」新海監督が仕込んだ“伏線” 前作の聖地とのつながり
ついに興行収入が100億円を突破した、アニメーション映画「君の名は。」。人気の高まりを受け、新海誠監督の過去作品にも注目が集まっています。中でも、2013年発表の前作映画「言の葉の庭」は、「君の名は。」との意外なつながりが多数あり、ファンの間で話題を呼んでいます。両作品に登場する舞台が隣り合っていることから、かけもちで「聖地巡礼」をする人も現れています。
「君の名は。」と「言の葉の庭」では、ともに万葉集が重要な意味を持っています。
「言の葉の庭」のヒロイン、雪野百香里は高校の古典教師でした。新宿御苑の休憩所で主人公の高校生、秋月孝雄と出会います。
雨が木々をぬらす美しい風景のなか、御苑内でビールを飲む雪野(実際は園内は飲酒禁止)と、学校をさぼって靴のデザインに没頭する秋月。
雪野は秋月に向けて「鳴る神の 少し響みて さし曇り 雨も降らんか 君を留めん」と短歌を謎かけのようにつぶやき、物語が動き始めます。
一方、「君の名は。」でも、ヒロイン宮水三葉のクラスの古典教師として、「ユキちゃん先生」が登場。やはり万葉集を授業で教えています。このときの何げないやりとりが、物語で大きな意味を持ってきます。
「君の名は。」のパンフレットを見ると、ユキちゃん先生は「雪野百香里その人」であると明記されています。しかし、「これが『言の葉の庭』の雪野のその後なのかは観る人の想像次第」とも書かれています。
両作品に登場する人物は、ほかにもいます。
「君の名は。」でヒロイン宮水三葉の友人として活躍した、勅使河原 克彦(テッシー)と名取 早耶香(サヤちん)です。
実は、監督自身が執筆した「言の葉の庭」の小説版にも、「勅使河原」と「サヤちん」が登場しています。しかし、この二人は東京の高校生で、岐阜県の田舎町に暮らす「君の名は。」の勅使河原とサヤちんとは、明らかに別人物です。
あくまで緩やかなつながり。新海誠監督は自身のサイトで「『君の名は。』には、僕の過去作のモチーフもたっぷりと盛りこまれています。もちろん新しい要素も多くありますが、過去作を熱心に観てくださっていた方ほど、連続性や語り直し、アップデートに気づいていただけるはずです」と記しています。
映画の舞台のモデルとなった「聖地」にも、注目が集まっています。
「君の名は。」で主人公の立花瀧がレストランでアルバイトをするシーン。店名が、建物に「IL GIARDINO DELLE PAROLE」と書かれています。この名前はイタリア語版「言の葉の庭」のタイトルと同じだと、ツイッターで話題になりました。
しかも、店のモデルとなった実在のレストラン「カフェ ラ・ボエム 新宿御苑」は、「言の葉の庭」の舞台となった新宿御苑の隣にあります。
実際に新宿御苑に行ってみました。聖地の休憩所には日曜日とあって、若者らが途切れなく訪れています。写真をとりながら「映画と同じ景色」「いま、雨が降ってきたら、私マジ感動する」と「言の葉の庭」談義を楽しんでいます。
そして、一部の人はそのまま「カフェ ラ・ボエム」へ。店の前には若者らの列ができていました。運営会社は「『君の名は。』にはスタッフロールなどに店名を出さない形でのご協力だったのですが、映画公開後はお客様が増えました。映画のシーンの影響なのか、ピザやサラダを注文される方も多いですね」といいます。
ブームとなっている「君の名は。」ですが、ファンが拡大するにつれ、楽しみ方も多彩になってきているようです。
イタリア版のロゴも、日本語版のロゴの雰囲気を汲み取ってくれてますね♪ RT @cool2mist: 言の葉の庭イタリア版、やっぱり日本語のニュアンスってすごいと思う。でも、イタリア語の柔らかい感じもいい! pic.twitter.com/fzpib6RNUj
— 新海誠作品PRスタッフ (@shinkai_works) 2015年1月27日
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