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愛ちゃんが語った結婚観 「子どもに卓球は…教えないかな」
リオデジャネイロ五輪で2大会連続のメダルを獲得した福原愛選手(27)=ANA=が、9月初めに婚姻届を提出しました。お相手は、台湾代表でリオ五輪にも出場した江宏傑選手(27)。リオ五輪前の取材では、結婚後も競技を続ける考えや、将来の子育てへの思いなどを素直に語っていました。(朝日新聞スポーツ部記者・前田大輔)
卓球の愛ちゃんが、結婚しちゃうのか――。まるで、親戚が結婚したような気持ちになった人も多いのではないでしょうか。
昨年初め、腰を痛めて試合に出られなかった福原選手を江選手が励ましたのがきっかけで、昨春から交際がスタートしました。今年4月、週刊文春の報道で交際が明らかに。
「良いお付き合いをさせていただいております」とブログで報告しました。リオ五輪の開会式では、ツーショットを披露。団体戦で銅メダルを獲得したのも、結婚を後押ししたのでしょう。
「どんな奥さんやお母さんになるんだろう」「結婚したら、現役を引退するのかな」。交際が発覚した後、日本だけでなく、中国でも人気者の福原選手の将来について、ネット上でも話題になりました。
リオ五輪開幕の約1カ月前、福原選手をインタビューする機会があり、色々と聞いてみました。「卓球を離れて世間を見てみたくないですか」と尋ねると、こう答えてくれました。
「ありますけど、多分、全てにおいて、卓球という眼鏡を通して見ると思うので、全く関係のないことでも、多分、関係してくるんだと思うんです。最終的には」
3歳から競技を始め、リオ五輪期間中の8月13日には25年目に入りました。福原選手は、卓球を「人生の先生」と呼びます。「卓球を通じて色んなことを知れたし、色んな人に出会えた。卓球に人生を捧げてきたとは思わないです。むしろ、卓球が私に捧げてくれた」と感じるからです。
そして、こう語りました。「人生の先生なので、卒業しないんじゃないかな」。4年後は東京五輪もあります。
「東京だからとか、そういうのではなくて、ずっとやっていくんじゃないかなという感じはします。5年後であっても、30年後であっても。世界ベテラン(選手権)とか出てそうですよね」。ふふふと笑いながら、話してくれました。
いつかは、子育てもしてみたいと考えています。子どもに卓球を教えたいかも、聞きました。
「できれば、子どもには自分が卓球選手ということを教えたくないですね。いつか絶対卓球をやるときがあると思うので、その時に思い切りスマッシュとかして。ちょっと、サプライズ的なことがしたい」
リオ五輪の団体戦でダブルスを組んだ一回り年下の伊藤美誠選手(15)は、3歳になる直前に「愛ちゃん」モデルのラケットを母親に買ってもらい、卓球を始めました。福原選手も、子どもに「ラケットを買って欲しい」と言われたら、どうするのでしょうか。
「うーん。どうだろう……」。福原選手は少し悩んで、答えました。「自分では教えないかな。厳しさを知っているので。もちろん、勝つ喜びも分かるけど、それには絶対、苦しさだったり、つらさだったり、そういうのは誰よりも分かるから。厳しく教えられないんじゃないかな」
幼い頃から、テレビで「泣き虫愛ちゃん」として親しまれてきました。「日本中の皆さんに見守られながら、育てて頂いた」とよく話しています。期待に応え続ける選手であり続けたい使命感はあります。
一方で、スターではない普通の「母親」になることを思い描く気持ちも、インタビューで伝わってきました。
福原選手は、家庭的な一面も持ち合わせています。遠征では常に炊飯器をスーツケースに入れて持ち歩き、選手におにぎりを振る舞ったりします。お気に入りの具は「あかもく」という海藻の佃煮。トラブル続きだったリオ五輪の選手村では、トイレを自力で修理しました。
江選手は、ドイツのプロリーグが拠点。日本の福原選手と、離ればなれの生活がしばらく続きそうです。
福原選手が初めて五輪に出場した2004年アテネ五輪以降、結婚して競技を続けた卓球の五輪選手は見当たりません。卓球選手を目指す子どもたちの目標であり続ける「愛ちゃん」には、卓球人生の新しい道筋も作って欲しいです。
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