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中国が完敗、言い渡された「5つのダメ出し」 南シナ海境界線
南シナ海に主権が及ぶとして海洋進出を強める中国に、国際司法が初めてNOを突きつけた…。フィリピンが国連海洋法条約違反として申し立てた仲裁裁判。申し立てから3年半を経て出した結論は、中国の管轄権を全面的に批判するものでした。オランダ・ハーグにある常設仲裁裁判所が中国に突きつけた「5つのダメ出し」とは?(朝日新聞国際報道部記者・今村優莉)
判決の最大の焦点は、中国が主張する独自の境界線、いわゆる「9段線」を認めるかどうかでした。中国側は南シナ海の全域がすっぽり収まる9段線を境界線として主張し、ここに自国の権利が及ぶとして、七つの岩礁を埋め立て、人工島などを造ってきました。
中国が埋め立てた人工島が何にあたるのかも争われました。仮に『島』であれば、周囲12カイリ(約22キロ)が“領海”として認められ“排他的経済水域(EEZ)”では資源の探査や人工島が設置できます。『岩』は領海のみが認められます。満ち潮の時は水没してしまう『低潮高地』だと何の権利も認められません。
中国の南シナ海における活動については、中国艦船がフィリピンの漁民の漁業を妨害しているという批判が起きていました。
中国の“人工島”建設に関しては、自然を破壊しているという指摘がありました。
大規模な人工島建設を強行した中国の態度が、今回の紛争を悪化させたかどうかも争われました。
さて、対する中国の反応を見てみましょう。もともと中国はこの裁判について「一片の紙くず」(戴秉国・前国務委員)、「受け入れず、参与せず、認めない」(人民日報)、「茶番劇」(王毅外相)と、相手にしない立場をとっていました。
判決が下った翌13日、中国国務院は2万字に及ぶ白書で反論。タイトルは《中国は断固として、南シナ海に関する争いをフィリピンとの話し合いを通じて解決していく》というもので、これまた「5つの主張」を展開しています。
【主張1】南シナ海「2000年前から支配」
中国人民の南シナ海における活動は、紀元前2世紀の西漢時代にさかのぼる。中国が最も早く発見し、命名し、利用し、かつ周辺海域にて有効的、平和的に主権を担ってきた。中国がこの海域における権益は長い歴史をかけて確立されたものであり、法的根拠に十分基づいたものだ。
【主張2】争いの発端は「フィリピンが違法に占拠」
南シナ海を巡る中国、フィリピン両国の争いの発端は、フィリピンが違法に中国の管轄する南沙諸島の島嶼を占拠したことが核心だ。南沙諸島はフィリピン領土の外にある。国際海洋法の制度の発展が中国・フィリピン間の海洋区分の争いを生み出したのだ。
【主張3】争いは「話し合いによって解決する」
中国は断固として南シナ海諸島における主権を守り抜き、フィリピンによる一方的な訴えに反対する。フィリピンとは話し合いを通じて解決していく。だが、残念なのは、フィリピン側に協力する意志が乏しいため、両国の話し合いが停滞している。
【主張4】「問題を複雑化しているのはフィリピンの方だ」
フィリピンは、中国との間で成立した南シナ海紛争の解決に関するコンセンサスに背き、「国連海洋法条約」の制度を乱用して勝手に(仲裁裁判所に)訴えた。この行為は解決を導くためではなく、これを機に中国の自国の管轄を否定したいだけなのだ。
【主張5】中国は南シナ海を平穏に保つ要である。一貫して憲法に従い、国際法治の促進を保ち、国際法を尊重し、争いや不一致を話し合いによって解決してきた。ウィンウィンの関係を通じて南シナ海を平和的、友好的、協力的な海にするために尽力する。
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