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銭湯・ぜんざい・タマゴサンド…東西でこんなに違う? 比較本が人気

同じ言葉で同じものを指しているのに、東西でこんなにも違うの? そんな驚きを集めた本が人気です。

東西の違いを集めた「くらべる東西」より
東西の違いを集めた「くらべる東西」より 出典: 東京書籍提供

目次

 「いなり寿司」「ぜんざい」「銭湯」など、同じ言葉で同じものを指しているのに、東西でこんなにも違うの? そんな驚きを集めた本が人気です。文をおかべたかしさん、写真を山出高士さんが担当した「くらべる東西」(東京書籍)です。6月9日に発売されると、早くも在庫切れが相次いでいます。いったいどうやってネタを探したのか? おかべさんに話を聞きました。

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東西のタマゴサンドを比較
東西のタマゴサンドを比較 出典: 東京書籍提供

銭湯の湯船の位置は


 この本では、関東と関西の文化、食べ物、風景などを比較。「桜餅」「座布団」「縄文土器」など、全部で34の違いを写真に撮って、ひと目でわかるように工夫してあります。

 例えば、「いなり寿司」は東が俵型で、西は三角形。「ぜんざい」は東は汁がない。「銭湯」の湯船の位置は、東が浴場の奥、西は中央にある……といった具合。写真による比較だけでなく、それぞれの解説や関連情報も紹介しています。

 出版社勤務後、作家・ライターとして活動しているおかべさんと、フリーランスカメラマンの山出さん。これまでにこのコンビで「目でみることば」「似ていることば」といった本を出しています。

東西のいなり寿司を比較
東西のいなり寿司を比較 出典: 東京書籍提供

おかべさんに聞きました


 発売後、ネット上で「おもしろそうな本ですね」「ずっとこんな本が出てほしいと思っていた」などと話題になり、在庫切れで現在増刷中です。

 いったいどうやって、これだけネタを集めたのか? おかべさんに話を聞きました。

 ――「くらべる東西」を企画したきっかけは

 「『くらべる東西』は、東京書籍から出版している『目でみることば』シリーズの第7作となります。『目でみることば』は、『引っ張りだこ』や『図星』など、慣用句や言葉の由来となったものを写真に撮るという企画でした。これが好評だったので、以来、私とカメラマンの山出さんとのコンビで、写真で一目瞭然にするというコンセプトのもと、いろんな本を作ってきました」

 「このシリーズに『似ていることば』という本があります。これは、林と森など、似た言葉をそれぞれ写真に撮って違いを説明するという企画ですが、このなかで『関東と関西では、シャベルとスコップが意味するものが逆である』というコラムを書いたところ、反響が大きかったので『東西ネタ、いけるかな』と思い、トライしてみました」

東西の桜餅を比較
東西の桜餅を比較 出典: 東京書籍提供

お気に入りのネタは


 ――ネタはどのようにして探したのでしょうか?

 「新しいものを入れようと、いろんな文献を見ました。網野善彦さんの『東と西の語る日本の歴史』(講談社学術文庫)で、石器や土器が違うという話を知り、東西の縄文土器を国立歴史民俗博物館に協力していただき撮影しました。インターネットもけっこう調べました。ネットの断片的な情報には『本当かな?』というものも多々あります。座布団の閉じ糸の形が東西で違うというのも、ネット上のつぶやきのような記述で見つけたものです。これが本当に正しいのか座布団屋さんに問い合わせたところ『本当です』というので、お邪魔して撮影させてもらいました」

 ――経験上知っていたことと、新たに調べたこと、どちらの方が多かった?

 「掲載しているネタは、新たに知ったもののほうが多いです。『おでん』や『いなり寿司』のように以前から知っていたこと、つまり多くの人が知っているであろうことは、ちゃんとお店にお邪魔して、美味しそうに撮ることを意識しました」

 ――おかべさんが最も気に入っているネタを教えてください。

 「『名山』ですね。企画を進めるうちに『東の~、西の~』と並び称される言葉がたくさんあることがわかり、このなかで『西の富士、東の筑波』というのを知りました。富士山というのは、普通、東のものですが、これが『西』とある。これは東京(江戸)を起点にした言葉で、西に目を向けると富士が、東に目を向けると筑波があることを意味しているのです。歌川広重の浮世絵『名所東京百景』を見ると、たしかに西の景色には富士が、東の景色には筑波があるんですよね。この二つの名山の写真を山出さんが素晴らしく撮ってくれたのもありますし、追加情報として広重の浮世絵も紹介できた。企画が始動したときには、思いも寄らないネタだったので、お気に入り度が高いです」

東西のねぎを比較
東西のねぎを比較 出典: 東京書籍提供

なくなりつつある違い


 ――取材・執筆を通して気づいたことは

 「東西の違いというのは、どんどんなくなっているということです。昔は、こういった文化の違いがあったけれど、今は効率化の面や、全国化の余波で減っています。ネット上でこの本の断片的な情報が出回っていたときに『こんな違い見たことない!』という人が少なくありませんでしたが、減っているのですから、見たことのない人が多いのは当然です。表紙にもなっている湯船が中央にある西の銭湯も、配管などの面から見ればあまり効率的ではないようです。だから改装の折に、奥にするところが少なくない。でも、関西の銭湯だからと中央に据えているところもあるわけです。この本で紹介している『東と西の違い』は、なくなりつつある日本文化の紹介という一面があります。だから、とくに若い方は初めて見るものが少なくないでしょう。でも、ご年配の方には『懐かしい』と思ってもらえるのではないかなと思っています」

 ――大変だったことは

 「単純ですが、ひとつのネタを東と西で撮らねばならないので、大変です。適した取材先を探すのも大変。『目でみることば』シリーズは、借り物の写真は一切使わず、すべて撮りおろしていますので大変ですが、そこは一生懸命やらないと伝わらないものがあると思っています」

 ――この本を通して伝えたいメッセージを教えて下さい

 「あまり大袈裟(おおげさ)なことは考えていませんが、この本を読んだ方が、東とか西に行ったとき、今までとちょっと視点が変わったりして、豊かな気持ちになってもらえたら嬉しいです。あと、この一冊の本で、みなさんの話題が広がるのも嬉しいですね」

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