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風営法クラブ規制裁判で無罪確定へ 元経営者が素直に喜べないワケ
「無許可でダンスをさせた」として風俗営業法違反容疑で逮捕された、大阪のクラブ「NOON」の元経営者、金光正年さん(53)。最高裁が7日付で検察側の上告を棄却し、二審の無罪判決が確定する。「ホッとした」と語りつつも、23日施行の改正風営法の行方を考えると手放しでは喜べないという。その理由を聞いた。
――無罪が確定することをどう受け止めていますか。
ホッとしました。ようやく報われたという思いです。2012年4月に逮捕されてからの4年間は、甘いものではなかった。顔と名前を出して風営法の改正運動に取り組んできたために、バッシングも受けました。
2014年4月に一審の大阪地裁で、2015年1月には二審の大阪高裁でも無罪判決が出ました。判決を受けてほかの大阪のクラブは朝まで営業しているのに、NOONは上告されているからそういうわけにもいかない。やはり営業的にはつらいものがありました。
――「ダンス」の定義が焦点になった一審では、摘発時の客が証人尋問され、どんな動きをしていたのか検察官から事細かに聞かれました。《「どんな動きでしたか」「ジャンプしたり、左右に移動したり」「動いているのは足ですか」「足ですね」「足の動きはどのようなものでしたか」「右足を右に一歩動かしたら、それに合わせて左足も右に動かして……」「いわゆるステップですか」「はい」》なんていう笑えるやり取りもありました。
一審は楽しかったですね。メディアも面白おかしく取り上げてくれて、「これだけバカらしい法律なんだよ」ということを世間の人たちに伝えることができたのではないかと思います。
一番つらかったのは二審の後、検察側に上告されてからの1年4カ月でした。この間に国会で風営法法改正の審議が進められて、昨年6月には改正法が成立しました。
もし審議が始まる前に判決が確定できていれば、「クラブは風俗営業にあたらない」という前提から議論をスタートできたかもしれない。法改正への影響が限定的になってしまったことへのジレンマはありました。
――改正風営法では、「ダンス」に着目した規制を改め、深夜に「遊興」をさせる飲食店に対して「特定遊興飲食店」の許可取得を求める形になります。多くのクラブは、特定遊興飲食店として許可を得ることを目指すものとみられます。改正法に対する思いは。
法律が変わった、動いたということに関しては評価していますが、そこからさらに改正を進める必要があるとも考えています。
営業可能地域がかなり狭いエリアに限定されており、特定遊興飲食店の許可を取ることができないクラブが多数あります。そういう店は、23日以降も摘発におびえながら営業しなければならない。まだまだ、法律のアップデートが必要です。NOONが無罪になったことが、彼らが闘っていくうえでの武器になっていけばいい。
そもそも「遊興」とは何なのか。ライブハウスやスポーツバーはどうなるのか、といった疑問もあります。クラブだけの問題ではありません。
――警察に対して望むことは。
大阪府警や警察庁には、新風営法の良識的な運用を求めていきたい。見せしめ的な摘発には反対です。
近隣の理解を得ながらきちんと営業している店を、杓子定規に取り締まるようなことはやめてほしいですね。
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