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人口6700人、山奥の喫茶店に1日100人が訪れるシンプルな理由

山間の過疎地にある「coffee iPPO」。その味を求めて1日100人以上のお客が詰めかける
山間の過疎地にある「coffee iPPO」。その味を求めて1日100人以上のお客が詰めかける

目次

 東北の山村にある1軒の喫茶店が先月、開店6周年を迎えました。津波で壊滅的な打撃を受けた宮城県南三陸町から内陸へ車で40分。典型的な過疎地ですが、多い日だと1日100人のお客さんがやってきます。南千住の名店、カフェ・バッハのオーナーの薫陶を受け、栃木の人気店で修行を積んだ若い店主が貫く信念が、静かな山村に奇跡のような空間を生み出しています。

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細い細い道の先にあるお店

 登米市東和町。山の谷間に集落が点々とある、人口約6700人の静かな山村です。

 本線の本吉街道から外れ、沢沿いの細い道を走って行くと、集落の日本家屋とは雰囲気が異なる家がこつ然と姿を現します。「coffee iPPO」です。

 すでに陰り始めた陽の光の中で、煙突から立ち上る一筋の煙、窓からは暖かい灯の光がこぼれている。その様子は、一幅の絵のようです。

絵はがきのような風景に溶け込むお店「coffee iPPO」
絵はがきのような風景に溶け込むお店「coffee iPPO」 出典:「coffee iPPO」サイトから

名店「カフェ・バッハ」の薫陶受け、栃木で修業

 一歩、店内に入ると、コーヒーの匂いと暖かい空気が身を包みます。細部まで神経の行き届いた内装。良いお店がもっている雰囲気がすぐに感じられました。

 店主は、1981年生まれの嶋村一歩さん。南千住の名店、カフェ・バッハのオーナーの薫陶を受け、栃木の人気店で修行を積み、2010年5月に当地で開業しました。店は父親がつくった建物に手を加えて店舗に仕立てました。ここは、一歩さんの実家なのです。

1981年生まれの店主、嶋村一歩さん。実家で念願の店を開いた
1981年生まれの店主、嶋村一歩さん。実家で念願の店を開いた

「良いものを提供すれば、場所は関係ない」

 「良いものを提供すれば、場所は関係ない」という信念のもと、店を開いたのですが、やはり最初は不安だったといいます。一番、暇だった日は5人しかお客さんが来ませんでした。ですが、手作業で選別し、こまめに丁寧に焙煎された豆を使った一杯の評判は、じわじわと広がりました。

 今では、春から夏にかけての日曜日だと100人前後のお客さんがやってきます。

 店内の18席だけでなく、屋外に椅子とテーブルを出してもてなします。近くにある日本そば屋さんとセットで訪れる人も多いとのこと。

自然豊かな環境にある「coffee iPPO」
自然豊かな環境にある「coffee iPPO」 出典:「coffee iPPO」サイトから

変わる被災地、変わらない佇まい魅力に

 震災後は、被災地から多くの人が、一杯のコーヒーに癒やしを求めてやってきました。東和町は強固な岩盤の上にあり、震災当日でもコーヒー豆を入れた瓶は一つも棚から落ちなかったそうです。

 多くの山が切り崩され、そこかしこで高台移転の住宅と道路が建設中の沿岸部。そんな景色を見てからこの店に来ると、落ち着いた店の佇まいが、強く印象に残ります。

 ちなみに、東和町は、新田次郎の小説「密航船水安丸」の主人公で、カナダ・バンクーバーに移住し、漁業で成功した及川甚三郎の故郷。6月下旬から7月下旬にかけては、源氏蛍が飛び交う清流の町としても知られています。

コーヒー豆や器具がきれいにおさまる店内の棚
コーヒー豆や器具がきれいにおさまる店内の棚

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