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「共産外し」ネット上で大騒ぎ 神奈川県議会に何が起きた?
5月12日「神奈川県議会」という言葉がツイッターで次々につぶやかれ、「トレンド」入りに。共産会派の代表質問を制限する決議をめぐり「共産党へのレッドパージだ」「民主主義に反する」などの投稿が相次ぎました。ネット上で批判が相次いだこともあって、決議はトーンダウン。「保育園ブログ」では、実際に政策を動かすところまでいったことことからもわかるように、ネット上の声は政治にとって無視できないものになりつつあります。(朝日新聞東京本社社会部記者・仲村和代、横浜総局記者・岩堀滋)
普段はあまり注目されない地方議会の話題ですが、この日だけは様子が違っていました。「神奈川県議会」が「全国区」になったのです。朝日新聞社の分析では、「神奈川県議会」という言葉を含むツイッターの投稿数は5月12日の1日で約2万8千件にのぼり、地方議会の話題としては異例の多さでした。
問題となっていたのは、前日の5月11日から県議会の議会運営委員会で審議されていた、共産会派の代表質問を制限する案です。自民、公明、民進などが賛同の意向を示していましたが、審議はもめ、日をまたいで断続的に続いていました。この模様を傍聴者がネットで発信したことで、騒ぎは全国に。連日の議運の傍聴は史上初めて抽選となり、県庁前ではプラカードを掲げた抗議する人の姿もありました。
そもそも、なぜこんな決議が審議されることになったのでしょうか。発端は、昨年4月の県議選で、それまでゼロだった共産が6人当選したことです。新人ばかりの共産会派が、「議会のルール」に反することを繰り返したとして、他の会派が問題視。共産も非を認め、2月の定例会では代表質問を辞退しましたが、その後も「不手際」が続いたことから問題がこじれました。
結局、決議はトーンダウンし、共産に対して「これまで引き起こした事態の猛省を求める」内容に。16日の本会議で、傍聴席の市民の声に議員が「出てけ」と応酬する中、賛成多数で可決されました。
賛成した会派のある県議は「元々、質問制限までするのは理由付けが難しいとは思っていたが、共産がネット上で主張を展開し、参院選を前にイメージがよくないと感じた。決議はいい落としどころ」。一方、当の共産議員は「うちの支持者ではなく、知らない顔ばかり。ここまで騒ぎが大きくなるとは」と困惑顔でした。
議会制度に詳しい広瀬克哉・法政大教授は、「円滑な議会運営にはある程度のルールが必要で、共産の行動に問題はある。だが、新人議員の研修を会派任せにせず、議会として教える仕組みも必要。代表質問の権利を議会内の申し合わせで奪おうとしたことは、多様な意見を反映させるという議会の存在意義に関わる。それこそ猛省すべきだ」と話しています。
今回の問題は、安保関連法案への反対運動などを通じ、政治的な話題をネットで論議し、実際の行動にもつなげる動きが定着しつつあることを示しているのではないでしょうか。2月に「保育園落ちた日本死ね!!!」と題したブログが国会で取り上げられた際、安倍晋三首相の答弁や議員のヤジが国民の怒りを買い、政府が緊急対策を打ち出したことも、記憶に新しい出来事です。
大村華子・関西学院大准教授は「ネット上での世論形成は、選挙や政治運動といった選択肢に加えた新たな経路となった。政策変化に至るとは限らないが、政治家にとって見過ごせないものになっている。いまは政治への関心が高い層が中心だが、スキャンダルや国政選挙などの大きな出来事の際は、ネットを通じて関心を持つ層も増える可能性がある」と指摘します。
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