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中国でトランプ人気 暴言が「誠実な人」評価に 「美人の娘」効果も
アメリカ大統領選挙で共和党の指名を獲得したドナルド・トランプ氏。中国に対しても、さんざん悪口を言ってきましたが、なぜか中国人に人気があります。専門家は、これまで人権問題で中国を批判してきたアメリカ自身、同じ問題を抱えていることを証明する「象徴」になっていると指摘します。加えて、大統領選より前から知名度のあった「美人の娘」の存在もあるようです。
トランプ氏は中国語で「特朗普」と訳されています。これは発音が似ている漢字の当て字です。また、発音が近い漢字「床破」と呼ばれることもあり、こちらは「ベッドが壊れた」という意味で、多少の揶揄が含まれています。
中国語版ツイッターの微博(Weibo)では、トランプ氏のファンらしき人物が作ったアカウント「川普粉糸団」(「トランプのファンクラブ」、現在「米国人権大観察」)が、4万人以上のフォロワーを持っています。
そのほかに「床破粉糸団」(床破ファンクラブ)のアカウントも存在し、「天降偉人特朗普」といった表現でトランプ氏を「偉人」とたたえる文章がネット上で拡散しています。
中国の大手新聞「環球時報(Global Times)」系列のウェブサイト「環球網」が5月11日に行ったネットアンケート調査では、トランプ氏に好意的な結果が出ました。
調査では、トランプ氏を「好き」と答えた人は6割近くに。また、アメリカ大統領になったら、中国にとって「ポジティブ」という意見が「ネガティブ」をわずかに上回りました。
同じ調査は、3月にも行われており、その時は、「ポジティブ」は45.6%、「ネガティヴ」は54.4%で、「ネガティヴ」が上回っていました。しかし、「トランプ大統領」の可能性が高くなった2カ月後には、意見が逆転。現時点では、トランプ氏に米国大統領になってほしいという意見がやや優勢になっています。
中国で好意的な評価が目立つトランプ氏ですが、当初は、中国でも暴言王として知られ、ここまでの人気はありませんでした。
以下、中国に関する「暴言」です。
数々の暴言があったにも関わらず、中国では人気が高まりました。なぜなのでしょう?
一つはトランプ氏自身の話題性です。単純に面白い人として、髪型が話題になり、演説中の様々な表情がスタンプとして中国のSNSで出回っています。
二つ目はトランプ氏の娘です。長女のイヴァンカ・トランプ氏(IvankaTrump)は、大統領選より前に中国で名前が知られた存在でした。
ジュエリーデザイナーとして、「IvankaTrump伊万卡特朗普」の名前で2012年3月1日に新浪微博でアカウントを作り、多くの情報を発信をしています。現在は発信を中止していますが、16000人以上のフォロワーがあり、「美人」と評される外見から、トランプ人気のプラスになっています。
三つ目は、トランプ氏自身の経歴です。ビジネスマンの実績として、毎年数百万ドルを中国で稼いでいるとされています。「I love China, I love Chinese」というトランプ氏の発言とともに、実務家としての側面も注目されています。
また、「刺猬公社」というウェブメディアの調査によると、中国のトランプファンたちが彼を支持する理由として、「リアリティ番組」のような選挙キャンペーンをあげています。ライブ感、参加感のある選挙演説は、中国人にも響いているようです。
早稲田大学客員研究員・政治学博士、張剣波氏によると、トランプ人気の裏には「人権問題」もあると言います。
張氏は「これまでアメリカは他国の人権問題を多く指摘し、とくに中国に対して人権を武器として厳しく批判してきましたが、結局アメリカ国内でも多くの人権問題・人種差別が存在していることを、トランプ氏が生々しく表現してきました。それを楽しんだり、『誠実な人』といった評価をする、中国のネットユーザーも多いのではないか」と指摘します。
一方で、張氏はトランプ氏の過激な発言が、そのまま外交政策に反映される可能性は低いとみています。
「政治も外交経験も乏しいトランプ氏には、大きな不安要素もありますが、選挙段階の発言と当選後の政策には大きなギャップが存在することはアメリカ政治の常識です。クリントン氏でも、トランプ氏でも、当選したら中国と戦略的な調整しなければならないという共通の課題を抱えるのではないでしょうか」と分析しています。
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