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真凜・宮原の活躍に名コーチ スケオタ注目、急成長の関西「濱田組」
世界ジュニアスケート選手権で本田真凜(まりん)選手(14)が初優勝しました。日本女子では、村上佳菜子選手以来6年ぶりの快挙です。本田選手を指導するのは濱田美栄コーチ(56)。30日に米国で開幕した世界選手権でメダルが期待される、宮原知子選手(18)のコーチでもあります。選手とコーチの結びつきが特に強いスケートの世界。指導者視点で読み解きます。
濱田コーチは、関西大学や京都のスケートクラブで指導しています。フィギュアスケート王国といえば、伊藤みどりさんや浅田真央選手(25)が出身の名古屋が有名ですが、関西からもスター候補が次々と出てきています。
濱田コーチとタッグを組むのは、田村岳斗(やまと)コーチ(36)。選手時代からファンが多く、全日本選手権優勝、長野五輪も経験しています。両コーチのもとでは、宮原、本田の両選手のほか、今季NHK杯に初出場した木原万莉子選手(18)、世界ジュニア4位に入った白岩優奈選手(14)、さらに、全日本ノービスA優勝の紀平梨花選手(13)がいます。
白岩選手は、3Lz(ルッツ)3T(トウループ)、3S(サルコウ)3Lo(ループ)、3Lz3T2Loなど、難易度の高いジャンプを様々な組み合わせで跳ぶことができ、表現力も伸びてきています。紀平選手は、ジュニアの下の全日本ノービスで100点を超える高得点をたたき出し、観客を驚かせました。3A(アクセル)に果敢に挑戦しており、世界の舞台で大技が見られる日が楽しみです。
濱田コーチのもとでは、アイスダンスで2大会五輪に出場し、昨季引退したキャシー・リードコーチ(28)も振り付けを担当するなど活躍しています。
濱田コーチの門下生の優勝は、2003年の太田由希奈さん(29)以来、実に13年ぶり。このときも安藤美姫さんが2位、浅田真央選手の姉、舞さんが4位と日本人が上位に入り、大健闘でした。その太田さんは今、東京のクラブで選手の育成に力を注いでいます。アイスショーにも出演し、息を飲むような美しく洗練された滑りをファンは今でも楽しみにしています。
同じく門下生で、笑顔がトレードマークだった澤田亜紀さん(27)は、高橋大輔さんを育てた長光歌子コーチ(65)のもとで指導者の道を歩んでいます。力強いジャンプが持ち味で、3F(フリップ)3T(トウループ)を跳んでいた選手です。全日本ジュニア優勝、世界ジュニア5位入賞を果たしています。
世界に飛び立った門下生もいます。全日本選手権アイスダンスで優勝した村元哉中(かな)選手の姉、小月(さつき)さん(25)は、現在、タイでコーチをしています。選手時代は上品な滑りで知られていました。フィギュアスケートが日本ほど盛んな国ではありませんが、語学力を生かしながら、子どもたちに夢を与えています。
全国にはほかにも、トップ選手を育てているコーチがいます。
名古屋を代表するコーチといえば、世界選手権でメダルを狙える宇野昌磨選手(18)や、村上佳菜子選手(21)らを教える山田満知子コーチ(72)と樋口美穂子コーチ(46)です。
浅田選手の元コーチでもあります。両コーチのもとには、全日本ノービスながら昨秋の全日本ジュニア選手権9位の山下真瑚(まこ)選手がいます。大きな3Lz3Tの連続ジャンプが特長で、両コーチのもとから、また新星が誕生しそうな予感です。
山田コーチの門下生で、選手時代に荒川静香さん、村主章枝さんらと競い合った恩田美栄(よしえ)コーチ(33)は、自身が育った愛知県からトップ選手を育てようと、2008年にクラブを立ち上げました。いつか全日本選手権のキスアンドクライに恩田コーチの姿が見られる日が来るかもしれません。
浅田選手を指導する佐藤信夫コーチ(74)は、妻・久美子コーチ(70)とともに、荒川さん、今月引退を表明した小塚崇彦選手(27)ら、多くのトップスケーターを育ててきました。
全日本選手権には、選手時代の10連覇をはじめ、選手・コーチとして60年も休まず参加しています。高みを目指し続ける浅田選手を諭し導いてきた名伯楽。自身も「試行錯誤」しながら静かに彼女の背中を押しています。
荒川さん、鈴木明子さんらを指導した長久保裕コーチ(69)のもとには、世界選手権代表の本郷理華選手(19)、「ポスト羽生」と名高い、ジュニア世代をリードする山本草太選手(16)がいます。さらに、全日本ジュニア3位の横井ゆは菜選手(15)も見逃せません。鈴木さんのジュニア時代を思わせるオーラがあり、踊りのセンスは抜群で、成長が楽しみな選手の一人です。
関西、愛知だけでなく、岡山にも注目です。かつて長久保コーチとペアを組み、札幌五輪に出場した長澤琴枝コーチ(65)のもとには、次世代の男子を担う2人のホープがいます。
島田高志郎選手(14)と三宅星南(せな)選手(14)です。島田選手は、初出場の全日本選手権で11位に入り、新人賞を獲得。ジャンプもスピンもうまく、演技力もあり、同世代の中ではまさに「ミスターパーフェクト」。観客の心をつかみ、生き生き踊る姿が印象的です。
三宅選手は、表現力が豊かで、観客にアピールする力があります。全国中学校大会3位ながら、満足する演技ができず涙を浮かべていました。悔しい思いを胸に来季はさらなる成長を目指しています。
やさしい口調と涙もろさで、ファンも気になってしまうのが樋口豊コーチ(66)。東京のクラブで指導し、今季で引退した西野友毬(ゆうき)さんなど、全日本選手権上位の選手を育てました。NHK杯で樋口コーチが選手にインタビューする「豊の部屋」はファンが楽しみにしているコーナーでした。
福岡を拠点に指導しているのは中庭健介コーチ(34)。全日本選手権表彰台を経験し、当時は数少ない4回転ジャンパーとして有名でした。中庭コーチの指導のもと、成長したのは宮田大地選手(19)。現在は東京で練習していますが、世界ジュニアにも出場し、中庭コーチの代表曲「映画『ブレイブハート』より」を披露しました。
試合では、観客と同じようにコーチもどきどき、わくわくしています。
名前が呼ばれて選手をリンクに送り出すときだけでなく、演技中のリンクサイドでは、ジャンプが決まったときや会心の演技をしたとき、跳びはねたり、拍手したりするコーチの姿も見られます。
演技後のキスアンドクライでは、選手と一緒に満面の笑みを浮かべたり、残念そうな表情をしたり。
選手を支えるコーチにも注目してみると、フィギュアスケートを見る楽しみが増えるかもしれません。
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