お金と仕事
どっちが本物?驚異の食品サンプル 毎月クイズ出題、その狙いとは?
自社のホームページで毎月1問、クイズを出題している会社があります。
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自社のホームページで毎月1問、クイズを出題している会社があります。
自社のホームページで毎月1問、クイズを出題している会社があります。手作りの食品サンプルと本物の料理の写真を並べて、どちらが食品サンプルかを選んでもらう内容です。「再現したいものは、料理そのものではなく、その料理のおいしさや魅力」と語るメーカーの担当者に話を聞きました。
ホームページにクイズを掲載しているのは、食品サンプルを手がける「いわさき」(大阪市東住吉区)です。東日本を中心としている「イワサキ・ビーアイ」は、ルーツが同じ関連会社で、両社を合わせると食品サンプル業界でのシェアは7割に上るそうです。
1932年(昭和7年)に「岩崎製作所」として食品サンプルづくりをスタートし、現在では販促ツールの企画・デザインから、備品や店舗設計なども手がけています。
そんな会社が出題しているクイズですが、今月のお題は「中華飯」。海鮮と野菜の中華丼と、とろとろ卵の天津飯が並んでいます。色つやともにどちらも本物のように見えます。
画像の下にチェックボタンがあり、食品サンプルだと思う方を選んで「投票する!」ボタンを押すと、答えが明かされる仕組みです。ページの下の方には2015年1月からの過去の問題も掲載されています。
クイズは、得意先にプレゼントしているカレンダーから出題。正解を載せていないため、カレンダーを見た人が毎月ホームページにアクセスして答え合わせをする仕組みです。(ちなみに、このカレンダーは非売品です)
自社の技術力をアピールする狙いのようですが、他にはどんな意図があるのでしょうか? いわさきの担当者に話を聞きました。
――本物とサンプルを比較するクイズを始めたきっかけは
「長年にわたり飲食店のお得意先様へのサービスとして、食品サンプルの技術力と面白さを伝えるカレンダーを制作してきました。それを一般の方にも楽しんでいただこうと企画しました。見比べることで、楽しく迷いながら食品サンプルの技をじっくり見て驚いていただきたい、という狙いです」
――あえて本物と比較する狙いは
「食品サンプルは飲食店の販促アイテムです。店頭に並べたときに華やかに見えるよう、実は彩度を少し高めて『本物以上においしそう』に作られています。これまでは実物料理への配慮もあって、並べて比較することは控えてきました。しかし、製作技術の高まりとともに、『本気で腕を振るってリアルに近づけようと思えば、どこまで迫れるのか』ということに、あえてチャレンジしたくなったんです」
――料理を選ぶ上で工夫していることはありますか
「二つの写真を並べて、食品サンプルがどちらかを見極めると同時に、『どっちが食べたいか? おいしそうか?』と、いつの間にか食欲にも働きかけるような料理をセレクトしています」
――反響はありますか
「カレンダーはお得意先の飲食店で大変好評で、店長さんやスタッフさんの間で『どっち?』ということで話題にのぼり、毎月コミュニケーションの場になっているそうです。カレンダーの答えは毎月ホームページで分かるようになっているのですが、営業員が『先に答えを教えて』と尋ねられることも多いと聞きます」
――カレンダーはいつから始めたんですか
「初めてお得意先にオリジナルカレンダーを配ったのは昭和30年です。食品サンプルのエビと鯛を手描きしたイラストに日付を入れたものでした。その後、写真カレンダーに変わり、1990年代から2000年代はアート・アイデア作品を展開。最近は販促品としての機能やリアリティーの追究へとテーマが変遷しています。日頃お世話になっているお得意先さまへ、感謝込めて年末に営業員が一軒ずつお店を回ってカレンダーをお渡しすることはいわさきの伝統です」
――メッセージをお願いします
「よく『本物そっくり』と言っていただきますが、実は食品サンプルが再現したいものは、料理そのものではなく、その料理の『おいしさ』や『魅力』です。食品サンプルは昔も今も職人が一点一点、丹精をこめて手作業で作っています。日本で生まれ日本独自に発展した食品サンプルを、今後ともご愛顧のほどよろしくお願いします」
◇ ◇ ◇
紹介している食品サンプルは、カレンダー用と製作スキルコンペ用のものです。通常商品とは異なり、製作時間とコストを掛けた「プレミアム仕様」とのことでした。
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