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2015年12月25日

紅白歌合戦の男女って? オネエ系の微妙さと社会の鈍感さ 北条かや

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紅白歌合戦から考える男と女の違いとは?写真は白組の常連、美川憲一さん(右)と、男性タレントで初めて紅組に出場したゴリエさん

紅白歌合戦から考える男と女の違いとは?写真は白組の常連、美川憲一さん(右)と、男性タレントで初めて紅組に出場したゴリエさん

出典: 朝日新聞

 24日に曲順が発表された今年のNHK紅白歌合戦。「今年のNHK紅白歌合戦は見どころがない」「『大物』の復活も、今さら感が否めない」など、2015年の紅白には、放送前から批判が多い。昨年は「アナ雪の演出に期待」とか、「中森明菜が新曲を披露するらしい」など、けっこうワクワクしている人も多かったが、今年はややネガティブな声が目立つ。「『性の多様化』が当たり前の時代に、男女で分ける意味がない」との批判も根強い。それでも紅白には、あえて見る価値があると私は思う。

ほうじょう・かや ライター。若者論やジェンダーの問題を中心に執筆。『キャバ嬢の社会学』『整形した女は幸せになっているのか』(いずれも星海社新書)。1月に新著『本当は結婚したくないのだ症候群』を出版予定。(撮影:青山裕企氏)

ほうじょう・かや ライター。若者論やジェンダーの問題を中心に執筆。『キャバ嬢の社会学』『整形した女は幸せになっているのか』(いずれも星海社新書)。1月に新著『本当は結婚したくないのだ症候群』を出版予定。(撮影:青山裕企氏)

出典:https://twitter.com/kaya_hojo

男女の違いを意識しはじめる時期と「紅白」

 小学生時代、大晦日はテレビにかじりついて、狂ったように紅白を見ていた。9~10歳の頃だったか、クラスの男子と、「赤組・白組どちらが勝つか」で競い合ったのを覚えている。「絶対に赤が勝つもん!」「いや、白が勝つ!」……クラスメイト同士であんなに盛り上がった理由は分からないが、きっと「男女の違い」を意識しはじめる萌芽の時期だったせいだと思う。

 自分の「性」を代表するアイドル歌手が、一生懸命に「勝ち」を目指す。男と女が対等に勝負する(ように見える)構造に、自然と血湧き心躍ったのだ。私が小学生の頃は、ちょっとお姉さん的存在だった「SPEED」や「安室奈美恵」などが出ており、自分が彼女たちと同じ「女」だと思うと、妙な誇らしさがあった。

SPEED。右から新垣仁絵、今井絵理子、島袋寛子、上原多香子=1997年10月

SPEED。右から新垣仁絵、今井絵理子、島袋寛子、上原多香子=1997年10月

出典: 朝日新聞

 少女ながらに、というか無知な少女だったからこそ、性の対立構造を”純粋に”エンタメとして消費できたのだろう。放送の最後で、勝敗が決定する瞬間。箱に入れた玉の数が数えられ、2分の1の確率で「女」が勝つと思うと、妙にドキドキした。テレビ画面に「赤組優勝!!」の字幕スーパーが出る。くす玉が割れ、紙テープが舞う。あの高揚感は忘れられない。赤組が勝った年は、お正月休みが明けると、クラスの男子にドヤ顔をしたものだ。

 今となっては、あの単純すぎる男女の対決が「当然」だったことが懐かしい。あの頃は、男女が対等に「戦う」のが自明の理だった。性別と、テストで100点を取ること、スポーツができること、学級委員長になることは、まったく関係がなかった。

2015年の第66回NHK紅白歌合戦に初出場する歌手たち=2015年11月

2015年の第66回NHK紅白歌合戦に初出場する歌手たち=2015年11月

出典: 朝日新聞

「女」が、あるニオイを放ち始めた

 中学になるあたりから、私は紅白歌合戦にワクワクしなくなった。女という「性」が、あるニオイを放ち始めたからだ。

 生徒会長には男子がなるもので、テニス部の女子はミニスカートが可愛いからチヤホヤされ、学業成績やスポーツで男子を凌駕する女子より、おバカで華奢な美人がもてはやされるようになった。教師は、男子が持ち込んだ「有害図書」を取り上げ、早熟な同級生同士がくっついて、ヤったの、ヤらないだのが話題に上った。

有害図書ポスト、通称「白ポスト」=2007年12月

有害図書ポスト、通称「白ポスト」=2007年12月

出典: 朝日新聞

 思春期に女が放ち始めるニオイには、敏感な人と、そうでない人がいる。自分にとっては、あまり気持ちのいいものではなかった。その頃から私は、紅白歌合戦に対して「別に赤白、どっちが勝ってもよくない?」と、冷めた態度をとるようになったと思う。好きな歌手が出ない限りは、特に見なくなった。仲の良い友人はジャニーズアイドルに夢中だったが、彼女たちにとっても、紅白歌合戦は「男女の対決を楽しむもの」ではなく、「男性アイドルを鑑賞するだけのもの」になっていた。

 番組の途中にある、「赤勝て、白勝て」の応援コーナーも恥ずかしかった。盛り上がり過ぎ。別にどっちが勝っても関係ないし。女特有のニオイになじめなかった自分にとって、大晦日に家族が見ている中で垂れ流される「男女の二項対立」は気まずかった。

 紅白は、男女のニオイが強烈に放たれる磁場である。新人アイドルから大物歌手まで、みんなが「男と女」に分かれて、生々しいものを隠して歌ったり踊ったりしている。恥ずかしくて直視できなかった。その気恥ずかしさは、今でも感じる。だからこそ、今年はあえて「真剣に」見てみようとも思う。

紅白歌合戦で「心のプラカード」を歌うAKB48=2014年12月31日

紅白歌合戦で「心のプラカード」を歌うAKB48=2014年12月31日

出典: 朝日新聞

オネエ系タレントの微妙な扱い

 2005年、お笑いコンビ「ガレッジセール」のゴリが女装したキャラ「ゴリエ」が、男性ソロとして初めて「紅組」扱いになったあたりから、紅白ではいわゆる「オネエ系タレント」の扱いが微妙なことになっている。

 2007年には美川憲一とIKKOが共演、2008年には、これまた美川憲一とはるな愛が共演した。昨年にはついに「もも組」なるカテゴリが登場。IKKOに加えて、KABA.ちゃん、クリス松村などが場を盛り上げたが、「性の多様化を茶化しすぎ」「もはや紅と白に分ける意味がなくなったことの現れ」との声も聞かれた。

 男女を赤と白に分けて戦わせる構図のバカバカしさに、みんな気づいているのだ。「もも組」への批判には、「そのバカバカしさをNHK自身も分かっているのではないか」という議論も、含まれていたと思う。

紅白に紅組として出場したゴリエさん

紅白に紅組として出場したゴリエさん

出典: 朝日新聞

バカバカしいからこそ、見る価値がある

 昨年、28歳になって、数年ぶりに紅白をじっくり見た。不思議なことに、思春期に感じた、あの生々しい男女の磁場や、男と女を戦わせるバカらしさが、ちょっと懐かしく感じられた。

 今さら性別で出場歌手を分ける意味などないにもかかわらず、NHKは真剣にそれを演出している。大人になって見る紅白歌合戦は、昔のお遊戯会のビデオを見ているような、生暖かい感情を沸き起こさせた。

今年、渋谷区が始めた同姓パートナーへの「パートナーシップ証明書」を手に、渋谷区役所の庁舎から出てきた増原裕子さん(左)と東小雪さん=2015年11月5日

今年、渋谷区が始めた同姓パートナーへの「パートナーシップ証明書」を手に、渋谷区役所の庁舎から出てきた増原裕子さん(左)と東小雪さん=2015年11月5日

出典: 朝日新聞

 性の生々しさを隠した、お祭り騒ぎの恥ずかしさも、「また一興」と思えるようになった。紅白歌合戦を黙って見ていられる鈍感さを身に付けることが、この社会で大人になるということかもしれない。

 今年は特別企画として、番組内で「アニメ紅白」が行われるそうだ。紅組の司会は「ちびまる子ちゃん」のまる子、白組は「妖怪ウォッチ」のウィスパーが務めるという。まる子はまだしも、ウィスパーって「男」なんだ……そこまで男女で分けるんだ……と思った。

 やっぱりバカバカしいし、昨年の「オネエ系タレント」からなる「もも組」にも通じる、節操なさがある。ケジメがないし、アホらしい。が、そのアホらしさを「嗤(わら)う」ために、私は今年も紅白歌合戦を見るつもりだ。ニヒルに過ぎるだろうか。それでもいい。NHKが演出する「男と女」に鈍感になりすぎないために、私はあえて紅白を見るのだ。

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