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ユニーク学部名は就活に不利? 最近多い「地方」「国際」、その実態

大学で最近、増えているユニークな学部名。就活の場面では、不利にならないのか。面接でユニーク学部名を突っ込まれたらどう返せばいいの?

中山間地域で田植えをする高知大地域協働学部の1年生ら=高知県仁淀川町、2015年5月26日
中山間地域で田植えをする高知大地域協働学部の1年生ら=高知県仁淀川町、2015年5月26日 出典: 朝日新聞

目次

 芸術地域デザイン学部(佐賀大)・地域協働学部(高知大)・国際地域学部(福井大)……。大学で最近、増えているユニークなキラキラ学部名。読んだだけでは専門がわからない名前も少なくありません。新しさはあるものの、就活の場面では、不利にならないのか。面接でユニーク学部名を突っ込まれたらどう返せばいいのか。大学ジャーナリストの石渡嶺司さんに聞きました。

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「国際」「グローバル」「地方創生」

――最近、増えているユニーク学部の傾向は?
 去年あたりから国立大学で文系学部の改組がはじまり、話題になってきました。多いのは、「国際」「グローバル」と「地方創生」。ただし、企業側は、同じ学部の中でも学生の能力に差があることは、よくわかっています。学部の名前だけで極端に有利になることはないでしょう。

 気になるのは、就活でうまくいかないことを、学部の名前、あるいは大学の偏差値のせいにしてしまうケース。これは、言い訳に過ぎません。昔から就職に不利と言われている文学部でも、文章が書けたり漢字を知っていたり、有利な点はある。教育系学部から民間に就職する場合も、他の学部より、しっかり勉強している実績がある。通る人は通っています。

外資系企業が多く入居する東京駅八重洲口の「グラントウキョウサウスタワー(手前)」と「グラントウキョウノースタワー」=東京都千代田区で
外資系企業が多く入居する東京駅八重洲口の「グラントウキョウサウスタワー(手前)」と「グラントウキョウノースタワー」=東京都千代田区で 出典: 朝日新聞

面接で「その学部って?」聞かれたら…

――面接で「その学部ってどういう意味?」と聞かれたら
 多くの学生は、自分の大学、学部に多少のコンプレックスと誇りを持っています。そこを刺激されて袋小路に入り込まないこと。聞いている方は、本当に、知りたいわけではない場合がほとんど。それを真剣に受け止めると「話が長い」など、変な流れになってしまう。文系のユニーク学部の場合は、さらっと流すのが一番いいんです。

 受け答えが上手なのは、就活前から社会人とたくさん話している学生。当然、何回も聞かれている質問なので、どこまで話せばいいのか心得ています。

企業との面接に臨む学生ら
企業との面接に臨む学生ら

入ってびっくり、グローバル系学部の学費

――グローバル系学部で気をつけたいことは?
 受験する時に意識しないことが多いのが、学費と生活費です。留学を義務づけている学部がほとんどなので、欧米の留学だと交通費と生活費がけっこうな額になります。国公立でも私立大並みの金額になってしまう。

 さらに、グローバル系学部の学生は留学から帰ってくると、もっと勉強したいと思う人が多い。4年で卒業しない人も少なくないので、さらにお金が必要になる。結果、学費を夜の仕事で稼ぐような状況になることもあります。

 今、グローバル系学部が増えて乱立状態になりかけています。長崎大多文化社会学部は今年度、定員割れなったくらいです。グローバル系学部に入って、700万円、800万円近い学費を払っても、それに見合う企業に入れるか。受験する際には、真剣に考えた方がいいでしょう。

国際教養大のシンボルとも言える、24時間オープンの図書館。春休みでも机に向かう学生がいる=秋田市
国際教養大のシンボルとも言える、24時間オープンの図書館。春休みでも机に向かう学生がいる=秋田市 出典: 朝日新聞

地方志望は業界絞るな

――地方で働きたい学生は?
 地方創生系の学部を、地元企業が求めているとは限りません。そもそも、中小企業が多いので採用のノウハウがないのが実情です。そうなると、文学部や法学部といった、伝統的学部の方がわかりやすいという面もあります。

 また就活の際には、地方に絞るなら業界はできるだけ広げた方がいい。マスコミやエアラインなど、業界を絞ると、倍率が高すぎるので通らないことがほとんど。一度、大手企業に入ってから地元企業に転職した方が、可能性が高いです。

地元志望の学生に人気のエアライン系職場。搭乗カウンターに飾り付けられた「金魚ちょうちん」=岩国錦帯橋空港
地元志望の学生に人気のエアライン系職場。搭乗カウンターに飾り付けられた「金魚ちょうちん」=岩国錦帯橋空港 出典: 朝日新聞

自分の将来、決めつけてない?

――学部選択で、陥りやすい落とし穴は?
 自分の将来像をよっぽど明確にもっていないのなら、専門性の高い学部に絞らない方がいいです。部活や趣味の延長で学部や職業を決めつけてしまう人が少なくない。でも、受験生の段階で、そんなに将来像がはっきり持てている人はほとんどいない。

 大学生になってから、進路が変わる可能性は大いにあります。無理に絞らずに、法学部や社会学部といった、広い分野に接点がありそうな学部を選んでおく方が無難です。

いしわたり・れいじ 1975年札幌市生まれ。ライター・大学ジャーナリスト。東洋大学社会学部社会学科卒業後、編集プロダクションなどを経て2003年から現職。大学や就活の現場を長年取材、執筆。著書に『就活のコノヤロー』(光文社新書)、『教員採用のカラクリ』(共著、中公新書ラクレ)などがある。
いしわたり・れいじ 1975年札幌市生まれ。ライター・大学ジャーナリスト。東洋大学社会学部社会学科卒業後、編集プロダクションなどを経て2003年から現職。大学や就活の現場を長年取材、執筆。著書に『就活のコノヤロー』(光文社新書)、『教員採用のカラクリ』(共著、中公新書ラクレ)などがある。
関連リンク:朝日新聞出版 最新刊行物:新書:女子学生はなぜ就活で騙されるのか

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