話題
体に描く「非日常」異色アーティスト、ハロウィーン用に本気ペイント
チョーヒカルさんは、リアルなボディーペイントで注目されているアーティストです。そんな趙さんに、ハロウィーン用にペイントを本気で描いてもらうと……。
話題
チョーヒカルさんは、リアルなボディーペイントで注目されているアーティストです。そんな趙さんに、ハロウィーン用にペイントを本気で描いてもらうと……。
10月31日はハロウィーン。最近ではイベントに合わせて仮装や顔にペイントをする人も珍しくありません。チョーヒカルさんは、リアルなボディーペイントで海外からも注目されている現役美大生アーティストです。「非日常」をテーマに手書きにこだわり、数々の話題作を生み出してきたチョーさん。そんなチョーさんに、ハロウィーン用にペイントを本気で描いてもらうと……。一般の人にも使えるコツや、ボディーペイントへの思いを聞きました。
今回、チョーさんが選んだモチーフは、両目のまぶたの上に、目を描くペイントです。まずは顔をスマホでパチリ。ここから、どんどん顔が変化していきます。
これまでに100人以上の目を描いてきたというチョーさん。スマホで撮った画像を見ながら、目の輪郭を黒色で描いた後、まぶたに白色や肌色、灰色などの色を1時間弱かけて丁寧に塗り重ねていきます。眼球の周りは白色だと思っていましたが、「人間の目ってそんなに白くないんです。変な灰色をしているんですよ」。
下地が出来上がると、いよいよ眼球。「真っ黒ではなくて、光が入ると少し青くなる。どれだけ細かい色が見えるかが勝負です」。スマホの画像を何度も見ながら、リアルな目に近づけていきます。
約1時間20分かけて完成したのがこちらです。これなら、注目を集められるかもしれません。でも、ここまで凝ったものを自分で描くのは難しそう……ということで、お手軽にできる「ひび割れ」のボディーペイントを教えてもらいました。
用意するのは、市販のフェイスペイント用の絵の具です。女性が化粧で使うアイライナーやアイシャドウでも良いそうです。まずはひび割れの線を黒色で描きます。リアルに見せるポイントは2つ。一つは線の端でひび割れの分岐させること、もうひとつは分岐点を濃く描くことだそうです。
ものが割れると上下に段差が生まれ、影ができます。下がった部分は色が一段濃くなるので、黒の線の横に茶色の線を描き、段差を表現します。さらに茶色とは逆側に明るい肌色か白色に近い色の線を描きます。「影を作るところが重要。こういうひと手間でリアルさがどんどん出てくる」。あっという間、5分ほどで出来上がりました。
ボディーペイントを始めたきっかけや今後の活動などについて。チョーさんに聞きました。
――いつからボディーペイントを始めたのですか。
「美大の予備校に通っていたのですが、毎日出される絵の課題に飽きてしまって、落書きしたいなと思ったときに、紙が手元になかったんです。落書きのために新しい紙を買うのも嫌だし、じゃあもう手で良いかなと自分の手の甲に、友だちの目を書いたのが一番最初です。それが周りからの反応が良く、自分でも良いできで、面白いものが作れたと思って本格的に始めたのが、大学に受かった後の春休みですね」
――大学でボディーペイントの勉強をしているのですか。
「大学の課題とはまったく関係ないです。私の学科はデザイン科で、筆を使って絵を描くことはほとんどないんです。本当に趣味ですね」
――ボディーペイントの魅力は何ですか。
「CGがこんなに発達している時代で、パソコンでなんでもできる。手書きで描く意味って何だろうとずっと思っていました。手書きだと1時間かかるものが、CGだと5分でできる。でも初めて描いた『目』を人に見せたり、ネットに載せたりしたら、思っていた500万倍ぐらいの反応が返ってきたんですよ。手書きの力をそこで感じて、アナログって価値があるじゃないかと思いました」
――人の身体に絵を描くことの魅力はどんなところにありますか。
「キャンバスが体のほうが見る人にとって身近なんです。見る人にとっても同じ体に描いてあるので、紙に書いた絵よりも共感があるんですよね。自分の体に描いてある、とまではいかないんですけど、自分のことのように思ってくれやすいというか。1万人に1人でも絵を見て、ちょっと何かの認識が変わるとか、自分へのとらえ方がポジティブになるとか、そういう変化があるとうれしいです。そういう可能性が高い手法なんだろうなと思っています」
――「非日常」をテーマに掲げています。描くときにどんなことを意識していますか。
「パッと見たときに違和感がある、素通りされないような作品にしようということは常に意識しています。気持ち悪い、という方も多いんですが、だいたいは実際にあるものを描いています。それは非日常というか、日常+日常で違うものができる。見慣れている目でも、人体に急に描いてあると、目ってこういう感じだったよなって、見方が改まるんですよね」
――どんなアーティストを目指していますか。
「アートが世界平和に貢献すると思っています。世界平和と言うと、大きくなってしまいますが、その人の1日をちょっと楽しくするとか、ちょっと人間が好きになるとか、そういう作品を作り続けたいです。それがたくさんできたら、世界は平和になるんじゃないかと思っています」
――アートと平和はどのようにつながるのでしょうか。
「たとえば、人を殺してはいけませんと言われても、それはみんな知っています。それを心の底から思うのは、自分の中から思わないといけない、という実感がある。それを自分の中から思える装置として、美術とか音楽が有効だなと思っています。ボディーペイントは、個人的なこととしてとらえてもらえると話をしましたが、私の作品から何かを感じてくれるときもその人自らが感じてくれるので、その人が思い浮かんだことに納得をしてくれるんですよね」
「キュウリに見えるバナナを描いた“It’s not what it seems”(ものは見かけ通りではない)というスウェーデンに関連した作品を作りました。スウェーデンは平等な国と言われていますが、いまださまざまな差別があります。肌や目の色で、どうして判別しようとするのか。内面と外面は違いますし、私の絵の具で描いたものすら、見破れないんだったら、人を外見で判断できるわけないでしょ、という気持ちで書いています。それを公には言ってないのですが、作品を出したときにそれを見た海外の人から『あなたの作品を見たとき、自分でその作品を見るとそのメッセージを自分で感じることができ一番納得ができ、心底考えられる』というメッセージをいただきました。美術作品には自分から考える、本当に人の価値観を揺るがす力を持っているんじゃないかと思っています」
◇
チョーヒカル 1993年3月生まれ。武蔵野美術大学視覚伝達デザイン学科の4年生。UNUSUAL(非日常)ARTをテーマに、ボディーペイントや衣服のデザイン、イラスト、立体、映像作品などを制作する。10月30日に初の作品集『超閃光ガールズ SUPER FLASH GIRLS』(雷鳥社)を発売予定。10月23日午後1時からは東京ハンズ新宿店で即興でのモンスター似顔絵のライブがある。チョーさんのホームページは(http://www.hikarucho.com/)。
1/22枚