IT・科学
14日夜、冥王星に米探査機が最接近!発見した天文学者の遺灰載せて
7月14日夜、米探査機「ニューホライズンズ」が打ち上げから9年半を経て、冥王星に最接近します。同機には、85年前に冥王星を発見した天文学者の遺灰も載せられています。
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7月14日夜、米探査機「ニューホライズンズ」が打ち上げから9年半を経て、冥王星に最接近します。同機には、85年前に冥王星を発見した天文学者の遺灰も載せられています。
7月14日夜、米航空宇宙局(NASA)の無人探査機「ニューホライズンズ」が打ち上げから9年半を経て、冥王星(pluto、プルート)に最接近します。探査機による冥王星の観測は人類史上初めて。地球から数十億キロとあまりに遠いために謎が多い冥王星ですが、今回の観測で新たな発見が期待されています。果たして、冥王星にガミラスはいるか?
このニューホライズンズですが、少し意外なものを搭載しています。それは、85年前に冥王星を発見した天文学者の遺灰です。
冥王星の存在自体は、19世紀から予想されていました。天王星や海王星の軌道のズレから海王星の外側に未知の惑星があると考えられていたのです。
Happy Birthday Clyde Tombaugh! American astronomer and #pluto discoverer born Feb 4, 1906. #PlutoLives pic.twitter.com/v0MgZvsAJq
— NASA New Horizons (@NASANewHorizons) 2015, 2月 4
1930年2月18日、米国ローウェル天文台に所属していた24歳の天文学者クライド・トンボー氏が、1月の別々の日に同じ宇宙空間を撮影した写真を見比べる方法で新惑星を発見しました。
Today in 1930: Clyde Tombaugh at Lowell Observatory took this photographic plate that led to discovery of Pluto. pic.twitter.com/tWiYVHKH7E
— SmithsonianAirSpace (@airandspace) 2015, 1月 23
ローウェル天文台が、この快挙を発表したのは同年3月13日でした。19世紀半ばの海王星発見以来のビッグニュースに世界中が沸きました。
ちなみにこの日は、私財を投じて同天文台を設立し、火星観測と並んで未知の惑星発見に情熱を燃やしながら、発見できずにこの世を去ったパーシヴァル・ローウェル氏(1855~1916)の誕生日でした。
新たに見つかった惑星。ギリシャ神話の「冥府の王」にちなんだ「Pluto(プルート)」という名前は、英国の当時11歳の少女ヴェネチア・バーニーさんが発案しました。
ヴェネチアさんは後年、NASAのインタビューで当時のことを語っています。
85 years ago today, a newly discovered planet got its name. Thank you Venetia! http://t.co/HezsecNLaR #Pluto pic.twitter.com/iRQg3ik6pv
— NASA New Horizons (@NASANewHorizons) 2015, 5月 1
新惑星が見つかったという発表の翌日、家族で朝食を取っていた時でした。新惑星発見の報道に「何と呼べばいいんだろう」と話した祖父に対し、ヴェネチアさんは即座に「プルートでしょ」と答えました。
ギリシア神話に詳しかったヴェネチアさんは「太陽系の惑星に『プルート』が使われていないことは知っていた」と振り返ります。その後、祖父がヴェネチアさんの発案を天文学者に伝えたことから、5月1日に正式に「プルート」に決定しました。
また和名「冥王星」は、星に関して多くの著作がある英文学者の野尻抱影さん(1885~1977)が命名しました。
意外なところでは、天文好きで知られるタレントの中川翔子さんは、野尻さんとは遠い親戚にあたるそうです。
ニューホライズンズの打ち上げは2006年1月でした。太陽の光がほとんど届かないぐらい遠くに行くことから、太陽電池ではなく放射性物質プルトニウムを利用した電池を搭載。当時は「打ち上げに失敗するとプルトニウムが散らばる」と反対運動も起きたそうです。ちなみに何の因果か、冥王星(プルート)もプルトニウムも語源は同じです。
ニューホライズンズには意外な「積み荷」もあります。それは冥王星を発見したクライド・トンボー氏の遺灰です。トンボー氏は1997年、90歳で亡くなりました。それからわずか18年で、遺灰とはいえ自ら発見した冥王星に向かうことになるとは、生前には夢にも思わなかったでしょう。
Did you know? Clyde Tombaugh will be at #Pluto on Jul 14. His ashes are carried on @NASANewHorizons
@NewHorizons2015 pic.twitter.com/HP03wJzQ0g
— Ron Baalke (@RonBaalke) 2015, 7月 4
他にも、「名前を冥王星へ送ろう」という企画に参加した43万4千人分の名前を記録したCD-ROM、「冥王星は未探査」と記された1991年の米国切手などが載せられています。
"Not Yet Explored" will change July 14. Hey, @USPS! We’re ready to help with a new #JourneyToMars stamp! @USPSstamps pic.twitter.com/HT8Vps6JBX
— NASA (@NASA) 2015, 7月 8
ニューホライズンズ出発からわずか7カ月後の2006年8月、冥王星は惑星の地位を失います。
チェコのプラハで開かれた国際天文学連合(IAU)の総会で、惑星の新しい定義が決まり、太陽系の惑星から冥王星が除外され、「水金地火木土天海」の8個となったのです。
「冥王星降格」について、「発見国」である米国の落胆は大きく、米CNNは「かわいそうな小さな冥王星」と速報したそうです。
そして、なぜか米大リーグの公式サイトまで「冥王星、マイナー行き」との記事を掲載し、話題になりました。
ところで冥王星と聞くと、「ガミラス帝国の前線基地か……」と思いを馳せるヤマト世代の方もいらっしゃるでしょう。太陽系の最果てというイメージから、冥王星は宇宙戦艦ヤマトをはじめ、銀河鉄道999など数々の作品で描かれてきました。
では、生命の存在は?果たして「冥王星人」はいるのか?
米ジョンズ・ホプキンス大応用物理研究所がホームページで、この問いに答えています。
残念ながら「極度に寒く、表面温度はマイナス233度で、生命は存在しそうにない」ということだそうです。
ニューホライズンズは14日午後8時49分(米国時間同日午前7時49分)、冥王星をかすめるように最接近します。その距離は、約1万2500キロ。人類史上、探査機が最も冥王星に近づく瞬間です。冥王星や衛星のカロンの画像を撮影するほか、大気の成分なども調べるそうです。
どんな新発見があるのか――。もしかして生命の痕跡は――。世紀の瞬間は間もなくです。
【参考】