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過去最高額、1億9千万円の古書ってどんな本? 古本にも中国マネー
3月に過去最高額の本が売り出されました。値段はなんと1億9440万円。億単位の本ってどんな本なのでしょうか?
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3月に過去最高額の本が売り出されました。値段はなんと1億9440万円。億単位の本ってどんな本なのでしょうか?
3月に東京都内のホテルであった「国際稀覯(きこう)本フェア」に過去最高額の本が売り出されました。値段はなんと1億9440万円。中国関係の古書では、経済成長した中国からの買い戻しが目立ち、中国のオークションサイトで売り出されることも。億単位の本ってどんな本なのでしょうか?
1億9440万円で売り出されたのは、「唐柳先生文集(とうりゅうせんせいぶんしゅう)」(2冊)。唐時代(618~907年)の文人政治家・柳宗元(りゅうそうげん)の著作です。木の板を彫って版をつくる木版印刷が本格化した南宋時代(1127~1279年)の「宋版(そうはん)」とされています。
古書籍の中でも宋版は別格の存在だとされています。漢籍が専門の高橋智・慶応大学教授は「中国で木版印刷が本格化したのが宋の時代。数も限られ、宋版は中国では宝の中の宝という扱い」と説明します。1972年に国交正常化のため訪中した当時の田中角栄首相に、毛沢東主席が土産に贈ったのも宋版の複製品だったといわれています。
売り出したのは神保町で3代にわたり中国関係の古書を専門とする「山本書店」。店主の山本實(みのる)さんによると、戦後の混乱期に、先代の父親が入手したそうです。
「父の時代には旧財閥の一族から書物の処分を依頼されることもあったと聞いています。価値がわかる本屋が数軒呼ばれていたようです。神保町で商売していたことが信用になったのでしょう」
一方で、当初から日本人の買い手はつかないかもしれないという見方もありました。「間違いなく重要文化財の価値がありますが、この値段で買う人は日本にいないでしょう」と高橋教授。
「唐柳先生文集」は、元々、鎌倉時代に中国から金沢北条氏の図書館である金沢文庫(横浜市)にもたらされたものでした。神奈川県立金沢文庫の西岡芳文学芸課長は「中国から来た本ですが、700年以上にわたり日本の文化が守り伝えたのです。何とか日本に残ってほしい」としていますが、県にはそのような予算は考えられないそうです。
最近は神保町の別の古書店で億単位の本が売れ、中国の美術オークションサイトで売りに出されているそうです。古書店長らによると、急激に経済成長した中国による古書の買い戻しが目立つそうです。
1億9440万円の文集は会期中に買い手は決まりませんでしたが、いまも商談は続いています。「国内に残るといいのですが……。本をもたらした先人たちのことを考えると複雑です」と山本さんは話しています。
宋版は、中国国内でも残存数がほとんどなく、中国だと国宝に相当する文化財として扱われる可能性もあるそうです。文化庁によると、「唐柳先生文集」は、文化財の指定を受けておらず、海外への持ち出しに制約はないそうです。