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『ぐりとぐら』の作者が語る子育て論 「スマホではなく子ども見て」

シリーズ累計で2400万部を超えた絵本『ぐりとぐら』。その作者で元保育士の中川李枝子さんが子育ての秘訣を語ってくれました。

「ぐりとぐら」の作者・中川李枝子さん
「ぐりとぐら」の作者・中川李枝子さん 出典: 朝日新聞デジタル

 1963年の登場以来、半世紀にわたって子どもたちに大人気の絵本「ぐりとぐら」。シリーズの累計発行部数は2400万部を超えました。その作者で元保育士の中川李枝子さん(79)が、子育ての秘訣を語ってくれました。

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「保育士をしなければ、『ぐりとぐら』は生まれなかった」と話す中川李枝子さん=東京都
「保育士をしなければ、『ぐりとぐら』は生まれなかった」と話す中川李枝子さん=東京都 出典:朝日新聞デジタル

 20歳から17年、保育士をしました。そのころは「日本一の保育士になる!」って高きを目指していたのよ。だから、「求む主任保母」の募集に、飛びついたの。だって、20歳の若さで主任になれることなんてめったにないでしょう。

 それが、みどり保育園でした。認可外の園で、広い公園の片隅にバラックがあって。私、一目で気に入ったのよ。

 園長には「保育以外はなにもしなくていいから、子どもたちが全員、毎日喜んで来る保育をしてください」って言われました。この注文は厳しいものでした。

 あの時代の子どもはたくましかった。新米の私じゃ太刀打ちできない。だから、まずは子どもをじっくり観察したの。わかったのは、子どもは遊ぶ、ありったけの工夫で遊ぶ、ということ。そこでたいせつなのは想像力と創造力。これがないと自己主張できず、まわりをひっぱれない。想像力を育むにはお話がたいせつだと気づきました。

 「ぐりとぐら」も、この保育園でのできごとからうまれたお話です。子どもたちはホットケーキがでてくる絵本が大好きで、あるときごちそうしたら大喜び。1人に小さな1枚のそのまた半分だけなのに。もっといいものを、たくさん食べさせてあげたい。そうだ、カステラだ! それも大きな! カステラは高級品で現実には難しい。でも、お話なら想像力があればいい。大きなカステラと対比したくて、小さなネズミが主人公になりました。

 お話づくりで意識しているのは、びっくりさせることと、最後は「よかったね」で終わること。子どもたちを驚かせるのは大好きだし、子どもの笑い顔がみたいから。この気持ちって、「今日は何して遊ぼうかな?」と保育のことをわくわく考えるのと同じです。

 あの17年間は私の財産です。ただ、そこでわかったことは、保育士がどんなに一生懸命でも、子どもは理屈ぬきでお母さんが大好き、ということ。子育て中のお母さん、今のあなたはどれだけ幸せか。子どもの要求は「抱いて。おろして。ほっといて」と変わっていきます。幼児期はしっかりと、抱いてあげてほしいとおもいます。

 「ぐりとぐら」を書いてからずいぶんたち、子育て環境は変わりました。子どもは自然の呼びかけにこたえて遊ぶものだけれど、今は野原が減ってしまって。

 とはいえ、子育ての本質はそう変わるものではないはず。たいせつなのは、人と人としてのつながり。一番いやなのは子どもへの無関心です。

 乳母車を押しながらスマホをみているお母さん、ぜひ画面ではなく、子どもをみてあげてください。

    ◇

 なかがわりえこ 1935年、札幌市生まれ。「ぐりとぐら」シリーズ(福音館書店)作者。絵は妹の画家・山脇百合子さんが担当した。

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