感動
子猫の命守ったリレー 消防、獣医師、外国人観光客ら川転落から救う
3月上旬、大阪府堺市の川に子猫が転落した。小さな命を救ったのは、市民、消防隊、警察官、獣医師、そして堺を旅行中だったメキシコ人姉妹の連係プレーだった。子猫は元気を取り戻し、飼い主が現れるのを待っている。
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3月上旬、大阪府堺市の川に子猫が転落した。小さな命を救ったのは、市民、消防隊、警察官、獣医師、そして堺を旅行中だったメキシコ人姉妹の連係プレーだった。子猫は元気を取り戻し、飼い主が現れるのを待っている。
3月上旬、大阪府堺市の川に子猫が転落した。小さな命を救ったのは、市民、消防隊、警察官、獣医師、そして堺を旅行中だったメキシコ人姉妹の連係プレーだった。子猫は元気を取り戻し、飼い主が現れるのを待っている。
「人が川に落ちた」
堺市消防局に119番通報が入ったのは6日午後5時18分。4分後、管轄の堺消防署の隊員ら31人が現場の堺市堺区の土居川に駆けつけると、転落した人はすでに自力ではい上がっていた。だが、よく見ると川面では子猫がもがいている。誰かが子猫を助けようとして過って川に落ち、果たせずに戻ったらしい。
「溺れる」「もうアカン」。川岸を取り巻く市民から声が上がり、傘や布を使って子猫を助けようとしている。動物の救助は専門外の消防隊だが、そうした市民の「期待の目」と「二次災害の防止」の観点から現場の判断で、ロープを使って隊員を水面近くまで降ろし、子猫を救助。歓声と拍手が起きた。
この救出劇に出くわしたのが、メキシコ出身で現在はフィリピン・マニラで子どもの権利を守る仕事をしているガブリエラ・オルグインさん(41)とその妹だった。堺を観光旅行中で、現場近くのホテルに宿泊していた。
ガブリエラさんが駆け寄ると、助け出された子猫は体が冷え、ぐったりとしていた。この日午後5時の堺の気温は9.2度。とっさに自分のコートを脱いで子猫を包んだ。救出されたことに安心したのか、それまで取り巻いていた人たちはいなくなり、現場に残ったのはガブリエラさん姉妹と消防隊、警察官だった。
「このままでは死んでしまう」と、警察官に近くの動物病院を探してもらい、「中津動物病院」に運び込んだ。中津賞(すすむ)院長(72)の診察では、低体温症で血便、鼻血も出ていた。お湯で体を温めてからスタッフ4人がかりで乾燥させ、肺炎防止の抗生物質を与えてからICUに緊急入院させた。子猫は生後5カ月ほどでオスの雑種という。
旅行中だったガブリエラさんは中津院長に子猫を託し、フィリピンに戻った。自身のフェイスブックに救出劇の動画を掲載し、中津院長とも連絡を取り合った。メールでの取材に対し、ガブリエラさんは「子猫が助かったと知って感動して泣いてしまった」と答えた。
治療費を受け取らなかった中津院長は「子猫が助かったこともだが、外国人旅行者の優しさにふれることができて私もうれしい。首輪は無いが、とても人になついているので飼い猫だと思う。心当たりのある人は連絡してほしい」と話している。
子猫はすっかり元気になり、体つきがふっくらしていることから病院内では「まるちゃん」と呼ばれてかわいがられているという。
問い合わせは中津動物病院(072・232・6472)へ。
(朝日新聞堺支局 白石昌幸)