IT・科学
「バイオハザード」「逆転裁判」 33万のゲーム音を生んだ山東善樹
人気ゲームシリーズ「バイオハザード」「逆転裁判」。緻密なCGアニメーションに目を奪われがちですが、リアルな効果音も、ゲームの豊かな世界観を作る大事な要素です。その音作りの現場は、意外にアナログで泥臭い作業でした。
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人気ゲームシリーズ「バイオハザード」「逆転裁判」。緻密なCGアニメーションに目を奪われがちですが、リアルな効果音も、ゲームの豊かな世界観を作る大事な要素です。その音作りの現場は、意外にアナログで泥臭い作業でした。
ゾンビと戦う「バイオハザード」、弁護士になりきる「逆転裁判」――。臨場感ある描写で不動の人気を誇る、カプコンの人気ゲームソフトシリーズです。緻密なCGアニメーションに目を奪われがちですが、リアルな効果音も、ゲームの豊かな世界観を作る大事な要素です。1作品に使われる音数は数十万。その音作りの現場は、意外にアナログで泥臭い作業でした。
スプレー缶のキャップを外すと「カポッ」、6面立体パズルを回せば「カシャッ」、コンクリートブロックをこすって「ズザー」。
身近な日用品から生まれる音を加工して、ゲームの場面に登場させます。キャップとパズルはシンセサイザー音を重ね、決定ボタンの「カチャッ」に。ブロックは音程を下げ、キャラクターが巨大な石塊を動かす「グゴォ」に変えます。
カプコンの人気ソフト「バイオハザード」「逆転裁判」シリーズに登場する音をこんな地道な作業で作っているのが、同社サウンド開発室サウンドディレクター・山東善樹さん(39)。
ゲームに特別な思い入れがあったわけではなく、友人に「音楽関係の仕事がある」と紹介されて入社したそうです。ミュージシャンを目指していたこともありましたが、「どんどんゲーム音の奥深さにはまった」といいます。
納得できる音を得るのに妥協はしません。古いエアコン室外機の「ブワーッ」を探しに中国へ、鳥の鳴き声のために奈良の山奥へ。望みの「パコッ」がほしくて、何度も木箱を壊したそうです。そうやって作られた音の種類は、33万を超えました。
「人って、音で『変だな』と思いやすい。アニメがCGっぽくなっても違和感は少ないけど、声優が変わるとみんな騒ぎ出すでしょ」
ハードウェアの進化によって、音の鳴らし方にも徹底したリアルさが求められるようになりました。
テレビ音声は臨場感のあるサラウンドが普通です。ゲーム音も、主人公がモンスターに近づくにつれて、モノラル→ステレオ→サラウンドと変えます。
主人公が無線通信で仲間と話すシーンでは、通信中は声が濁っていますが、会話の相手がすぐ近くまで来ると、生声で話すようにプログラムで切り替わります。このアイデアは特許まで取ったそうです。
この仕事のやりがいは、「気づかれない快感」だと山東さんは表現します。
「こういうことって、普通に遊んでいると、自然すぎて気づかないと思うんです。それこそ、ぼくらにとって一番光栄なことかもしれないですね」