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錦織圭、躍進の年を象徴するスーパーショット「ダウン・ザ・ライン」
昨年のATPワールドツアー・ファイナル。錦織圭選手が、アンディ・マリー選手を黙らせた瞬間がありました。「ダウン・ザ・ライン」という難度の高いショットを決めたのです。躍進した錦織選手の強さを物語る場面でした。
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昨年のATPワールドツアー・ファイナル。錦織圭選手が、アンディ・マリー選手を黙らせた瞬間がありました。「ダウン・ザ・ライン」という難度の高いショットを決めたのです。躍進した錦織選手の強さを物語る場面でした。
昨年11月9日、ATPワールドツアー・ファイナルの開幕戦に出場した錦織圭選手が、ウィンブルドンの覇者、アンディ・マリー選手を黙らせた瞬間がありました。「ダウン・ザ・ライン」という難度の高いショットを決めたのです。躍進した錦織選手の強さを物語る場面でした。
「ダウン・ザ・ライン」は、サイドライン沿いにストレートを打つショットです。ネットにかかりやすく、サイドラインを割る可能性も高くなり、さらに返す角度を変えるためコントロールが難しい「三重苦」のあるショットと言われています。錦織選手はこれをジャンプしながらバックで成功させました。このゲームを奪った錦織選手は、過去3戦全敗だった難敵マリーを初めて破りました。
錦織選手は、なぜこんな難度の高い「ダウン・ザ・ライン」を成功できたのか。亜細亜大教授でテニス部監督の堀内昌一氏は「錦織は繊細なタッチでラケットを操る調整力が抜群」と分析します。
抜群の調整力を育てたのは、父・清志さんの指導方法でした。錦織選手がラケットを初めて握ったのが5歳でした。手ほどきした清志さんは、ラケットを振り切る心地良さを体に染みこませました。コートの広さは度外視して、思い切り打ち、球を強く、遠くに飛ばすことから始めたのです。幼いころから「入れる」のではなく、「振り抜く」ことを心がけてきたことで、外国人選手に力負けせず、しかも正確なショットを打てるようになったのです。
加えて、昨季からマイケル・チャンコーチの指導を受け、成長著しいのがポジションを前にとる姿勢です。「50センチ前の位置を取るだけで感覚が変わるはず。自分が打つタイミングも早くなるから、リズムをつかまれにくい。その分、相手の準備する時間も奪える」(堀内氏)。マリー戦での「ダウン・ザ・ライン」も、ベースラインより前に踏み込み、打っています。早い動き出しで球を捉え、相手に準備する余裕を与えませんでした。結果、マリー選手は球を見送るしかありませんでした。