お金と仕事
トヨタの燃料電池車「ミライ」 何がすごい? プリウスとの違いは?
トヨタ自動車は18日、世界初の市販燃料電池車(FCV)、ミライを12月15日に発売する、と正式発表した。実質520万円という戦略的価格で、過熱するエコカー開発競争をリードする狙いだ。
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トヨタ自動車は18日、世界初の市販燃料電池車(FCV)、ミライを12月15日に発売する、と正式発表した。実質520万円という戦略的価格で、過熱するエコカー開発競争をリードする狙いだ。
トヨタ自動車は18日、世界初の市販燃料電池車(FCV)「MIRAI(ミライ)」を12月15日に発売すると正式発表した。
1997年、世界に先駆けて市販したハイブリッド車(HV)プリウスで、トヨタ自らが火をつけたエコカー戦争。
「低炭素社会を実現する、プリウスを超えるイノベーション」(加藤光久副社長)で、過熱する開発競争をリードする狙いだ。
FCVは、高圧でためた水素と空気中の酸素を化学反応させて電気をつくり、モーターを回して走る仕組み。
排出するのは、発電時にできる水だけで、排ガスやCO2はいっさい出ない。1回の燃料補給で走れる距離は、ガソリン車に匹敵する。
石油燃料を用いるエンジンに補助的にモーターを組み合わせて走るHVは、排ガスやCO2を根絶できない。
電気モーターで走る電気自動車(EV)は、バッテリーの蓄電に時間がかかり容量も限られるため、航続距離が短くなってしまう。
そのため、「究極のエコカー」として産学官で開発が進められた。ただ、研究開発費を転嫁した高い価格や、水素ステーションが普及していないなどの理由で、公的機関へのリース販売に限られてきた。
高い耐久性の水素タンクや大容量のコンバーターなど、20年以上に及ぶという自社開発で内製。世界初の市販化にこぎつけた。
低重心化で操縦性にもこだわったといい、災害時には、住宅に向けて最大9キロワットの給電ができる。
外観では、最近のトヨタ車に共通のモチーフの、ボディサイドまで回り込む細長いヘッドライトや、左右の大きなエアインテークが目立つ。
ボディ形状自体は、流線形を強調しつつも、初代プリウスと同じ4ドアセダンだ。
イメージカラーは、水をイメージしたという濃いめの水色「ピュアブルーメタリック」となる。
希望小売価格は税込み723万6千円。エコカー普及促進策としての国の補助金が1台あたり約200万円あるため、購入負担額は約520万円となる見込みだ。
さらに、「生産サイドと一緒になって開発と改善を続け、2025年にはHV並みの価格に抑える」と意気込む。
巨額の研究開発費用を巡って世界的な業界再編の引き金にもなっている、エコカー開発競争。
トヨタは97年、世界初のHVであるプリウスで先鞭をつけた。
HVはその後、世界中のメーカーがラインナップに揃えるほど急拡大。HVをベースに、バッテリーを外部から充電もできるプラグインハイブリッド車(PHV)も増えてきた。
ポルシェやランボルギーニなど、高級スーパーカーブランドも、相次いでPHVを発表している。
トヨタ自身も、14年上半期の国内販売台数の5割以上をHVが占めた。
いぜんとして屋台骨を支える技術で、世界販売台数トップを維持する原動力になっている。
ただ、近年は、フォルクスワーゲンが得意とする、小排気量ガソリンとターボを組み合わせて低燃費を実現する技術や、BMWやマツダなどが注力するクリーンディーゼルエンジンなど、低コストのエコ技術が台頭してきた。
いっぽうEVは、日産がリーフの販売を地道に続けるほか、トヨタも出資したアメリカのベンチャー、テスラ・モーターズの高級EVも好調で、国内でも右ハンドル車の輸入販売が始まっている。
こうした中で、トヨタもHVのトップメーカーの地位に甘んじてはいられず、次の一手となる代替技術の市販化を迫られた格好だ。
トヨタのミライ発表前日の17日には、ホンダが、同じくFCVを15年度中に発売すると発表。燃料電池の小型化で、5人の乗車スペースを確保したといい、ミライの対抗馬として注目される。
いよいよ、市販FCVの開発競争が本格化することになった。
ただ、普及には課題も多い。
日常の足に使うには、ガソリンの給油に相当する、FCVに水素を補給する水素ステーションが不可欠だ。
しかし現在は、市販車を想定したステーションはほぼ皆無。岩谷産業が今年7月、兵庫県尼崎市内に国内初の施設を開設するなど、エネルギー各社の取り組みは本格化したばかりだ。
国は、15年度までに100カ所、25年度までに1000カ所という設置目標を掲げ、補助金の拡充を急ぐ。
なお、産業ガス大手の岩谷産業は、市販FCV向けの水素価格を1キログラムあたり1100円にすると発表している。
岩谷の試算では、大型セダンタイプのFCVを1キロメートル走らせた場合の燃料代は、約10円という。