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ナンシー関が残した10の言葉 「有吉、生来ふてぶてしい」

 ナンシー関さんが亡くなって12年になります。11月14日からは渋谷パルコで展覧会も開かれます。今も色あせない、10の言葉を集めました。

2002年に急逝したナンシー関さん。今もたびたび各地で展覧会が開かれるなど、人気は衰えていない
2002年に急逝したナンシー関さん。今もたびたび各地で展覧会が開かれるなど、人気は衰えていない 出典: 朝日新聞
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 ナンシー関さんが亡くなって12年になります。11月14日からは渋谷パルコで展覧会も開かれます。今も色あせない、10の言葉を集めました。

「友人の手帳に押してあげた似顔絵が、ずるずる仕事に」

「ナンシーさんがなした仕事の全体像を浮かび上がらせた」(与那原恵さん)という「ナンシー関大全」(文芸春秋)
「ナンシーさんがなした仕事の全体像を浮かび上がらせた」(与那原恵さん)という「ナンシー関大全」(文芸春秋)

 ナンシー関さんは「消しゴム版画」というアートの分野を作ったパイオニアでした。使うのは普通の消しゴムとカッターだけ。そんな等身大な姿勢が、思わずくすりと笑ってしまう適度な「毒」もある世界観を生み出しました。

使うのは普通の消しゴムとカッターだけ。名前と資料の写真を見て、そういえばこんな人いたな、という「わりと自分にとってどうでもいい人」を題材にしたときが一番似る。不思議な「毒」も出る。
1992年6月20日:ナンシー関さん ギャラはどんぶり勘定のまま(マイポケット) :朝日新聞紙面から

「弟子をとるなんて、そこまで世の中なめてるつもりないんですよ」

 弟子入り希望者は、丁寧に断っていました。「いまでもこんなもので食べてていいのかという気持ちです」。連載を10本以上抱える売れっ子になっても、落ち着いたスタンスは終始、変わりませんでした。

いまは連載17-18本を抱える売れっ子になったが、作品のギャラはさほどはね上がってはいない。「相手も触れず、こちらも聞かずのどんぶり勘定が業界の不文律。振り込まれてみて、ああそうなのという感じです。交渉する気もあまりない」。「ほしいものは冷蔵庫」と、生活ぶりも変わってはいない。
1992年6月20日:ナンシー関さん ギャラはどんぶり勘定のまま(マイポケット) :朝日新聞紙面から

「イラスト図案集の『おじいちゃん』の欄に載ってほしい」

村山富市元首相
村山富市元首相

 村山富市元首相が首相を辞めた時のこと。「日本人の心の中に生きる幻のおじいちゃん像として、イラスト図案集の『おじいちゃん』の欄に載ってほしい」。ナンシー関さんは、村山元首相をおじいちゃんのモデルとしてとらえました。

「自分のことを『わし』なんて言うおじいちゃんは今、いないでしょう。イタリアへ行けば、おなかこわしちゃうし。笠智衆さんにも匹敵するほどおじいちゃんらしい」
1996年1月12日:こんな「前首相」になって 村山さんに各界からアドバイス :朝日新聞紙面から

「共演者が大物だろうが子供だろうが、極端に言えば動物だろうが、だれと一緒でも芸風が変わらない」

明石家さんまさん
明石家さんまさん

 明石家さんまさんについて。吉本興業の養成所出身の芸人が増えてきたことに対して述べた際、注目する芸人として明石家さんまさんの名前を挙げていました。

個人的な好みで申し訳ないけど、数年前からさんまに注目してます。共演者が大物だろうが子供だろうが、極端に言えば動物だろうが、だれと一緒でも芸風が変わらないし、すり減らない。天才ですよね。
1996年5月8日:私にはこう見える(どやねん吉本 お笑い王国の研究:16):朝日新聞紙面から

「キムタクがコスプレしてるみたいな感じ。SMAP×SMAPのコントと一緒、そのワイド版」

 初回視聴率31・3%を記録したドラマ「ラブ ジェネレーション」について。「平凡・日常を描こうとして、凡庸・お手盛りとはき違えてる。キムタクの仕事の場面とかディテールがベタベタでね。大甘、うそつけよ、という感じ」と手厳しいコメントになりました。

月9というステータスのある枠であえて「平凡」を描くことに制作側は意味を見いだしてると思う。それはそれでいい。でも、だとしたら平凡をバカにしてる。とにかくドラマが稚拙すぎる。演技の問題というより、交わされる言葉や場面設定が、ありきたりなのに地に足がついていない感じだ。
1997年10月25日:キムタクの恋はナチュラル 「ラブジェネレーション」(批評の広場):朝日新聞紙面から

「会社に人生の全権を預けているサラリーマンって、こうしてみると勇気あるなあと思った」

山一証券本店
山一証券本店

 山一証券の破綻について。「昨日までエリートの山一社員だった人が突然、路頭に迷うわけでしょ。ワイドショーでの取り上げ方も、こんな『物語』の典型にはめこんだみたいだった」と、感想を述べていました。

山一の破たんは「物語」としても劇的で、カタルシスさえ感じた。昨日までエリートの山一社員だった人が突然、路頭に迷うわけでしょ。ワイドショーでの取り上げ方も、こんな「物語」の典型にはめこんだみたいだった。無責任だけど、メディアを通した瞬間、すべては物語として観賞されるものだから。
1997年12月29日:97不景気な言葉たち:朝日新聞紙面から

「そんなにハーブってやつを育てて、みんなどうしてるのだろうか。そんなにハーブを食ってるのか?」

ハウステンボスであったガーデニングW杯=2012年9月29日
ハウステンボスであったガーデニングW杯=2012年9月29日

 雑誌「私の部屋ビズ」について。実は、高校時代は園芸部だったことも明かしています。また「園芸」と「ガーデニング」の違いについても言及。園芸系の「園芸ガイド」の付録「病害虫ハンドブック」と、「ガーデニング」系の「私の部屋ビズ」の特集「英国民宿 泊まって学ぼう、ガーデニング術」の対比から、両者の違いを浮かび上がらせました。

それはそれでいいのであるが。しかし、そんなにハーブってやつを育てて、みんなどうしてるのだろうか。そんなにハーブを食ってるのか? ハーブティー毎日飲むほどおいしいかなあ。
1998年4月27日:ガーデニング 園芸と異なるステキ ナンシー関(マガジントリップ):朝日新聞紙面から

「何の事前説明も、事後解説もなく股旅物が出てきた」

演歌歌手の氷川きよしさん
演歌歌手の氷川きよしさん

 氷川きよしさんについて。人気の秘密を、圧倒的な唐突感とギャップにあると見ました。演歌歌手らしからぬ容姿で、大時代な股旅(またたび)ものを歌うという意外性について、「あそこまでの唐突さをもった曲は近年ない」と述べていました。

異様なほど明るく素直な振る舞いは「かつての女性アイドルによくあった」とナンシーさん。それでいて歌うと正統的な歌唱力で圧倒する。
2002年4月16日:「一発屋」どころか「高打率」 氷川きよし、演歌どこまでも唐突に:朝日新聞紙面から

「来場所はどうするか。やはり筋力トレーニングをするしかない」

千代の富士=1981年10月
千代の富士=1981年10月

 子どもののころ、千代の富士が脱臼したという父親のウソを信じて述べた一言です。千代の富士の大ファンで、千代の富士本人の気持ちになって考えてしまうほどテレビを真剣に見ていた人でした。

「大相撲中継を一家で楽しみにし、千代の富士関が大好き。幼いころ、『千代の富士が脱臼したぞ』という父親のうそに『来場所はどうするか。やはり筋力トレーニングをするしかない』と本人の気持ちで考えてしまうほど、テレビと、テレビに登場する人たちが好きだった」
時代の空気、消しゴムに ナンシー関さん没後12年展:朝日新聞デジタル

「生来ふてぶてしい」

有吉弘行さん=2009年7月3日
有吉弘行さん=2009年7月3日

 有吉弘行さんについて。1998年にはすでにその存在感を見抜いていました。ナンシー関さんの文章は、テレビで見てとれるものだけを信じて書くという「顔面至上主義」を貫きました。

友人で、共著もある放送作家の町山広美さんは、ナンシーさんの没後、「毒舌コラムニスト」という呼称ばかりが先行していなかったかと疑問を投げかける。
時代の空気、消しゴムに ナンシー関さん没後12年展:朝日新聞デジタル
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