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最強チームの作り方 夏制覇の大阪桐蔭・西谷監督の気配りメソッド

どうすれば「最強のチーム」が作れるのか?今夏の甲子園で、大阪桐蔭を優勝に導いた西谷浩一監督。甲子園には春夏10回出場して4回優勝しており、「優勝確率」は4割。その指導法のコツはコワモテ?な風貌ではなく、こまやかな気配りにありました。

夏の甲子園を制した、大阪桐蔭の西谷浩一監督=2014年8月25日
夏の甲子園を制した、大阪桐蔭の西谷浩一監督=2014年8月25日 出典: 朝日新聞

目次

 今夏の甲子園で大阪桐蔭を2年ぶり4度目の優勝に導いた、西谷浩一監督(44)。1998年に就任すると、大阪桐蔭を甲子園の常連校に育て上げ、2008年夏には全国制覇を成し遂げました。甲子園には監督として春夏で10回出場し、うち4回は優勝。“優勝確率4割”のすごすぎる監督として、日本中で有名になりました。
 
 一方、今年は大阪桐蔭の快進撃と共に、その風貌も注目されました。ツイッターでは、「監督の目がガチ」「いつ見ても怖い」といったつぶやきも。
しかし、多くの名選手を育てた西谷監督の指導法は、“コワモテ”からは想像しにくい、こまやかな気配りにあるようです。「最強チーム」を育てるノウハウを過去のエピソードから探りました。

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過去の名監督に並ぶ戦績

 監督個人としての優勝回数記録(春夏通算)でも、西谷監督は3位。トップに迫る勢いです。 ■監督の優勝回数ランキング ①中村順司(PL学園)6回 ②渡辺元智(横浜)5回 ③尾藤公(箕島)4回 ③西谷浩一(大阪桐蔭)4回  これに、故・蔦文也さん(池田)ら5人が、3回と続きます。

「コワモテ」で一躍注目

 さらに今年は、大阪桐蔭の快進撃と共に、そのコワモテ?な風貌も注目されたようです。



 しかし、その指導法のコツは、コワモテからは想像しにくい、こまやかな気配りでした。
 強豪チームを育てるノウハウを、その性格が垣間見られるエピソードから探ります。

原点は自らのブルペン捕手時代

 兵庫県宝塚市出身。
 小6の時に全国制覇した報徳学園にあこがれて入学した。
 だが、最後の夏は後輩の暴力事件で出場辞退。
 1浪して進んだ関西大で主将の捕手となったが、肩の故障で満足に試合に出られなかった。
 この時、野球はレギュラー以外も含め全員でやるものだと気づく。
 大阪桐蔭の前監督が大学の先輩だった縁で93年にコーチ就任。
(ひと)西谷浩一さん 第90回全国高校野球選手権記念大会で優勝した大阪桐蔭の監督(2008年8月19日):朝日新聞
08年夏の第90回大会で優勝し、胴上げされる大阪桐蔭の西谷浩一監督=2008年8月18日
08年夏の第90回大会で優勝し、胴上げされる大阪桐蔭の西谷浩一監督=2008年8月18日 出典: 朝日新聞
 指導理念の源は、縁の下でチームを支えた現役時代にある。
 高3の夏は下級生の暴力事件で出場辞退し、紅白戦が引退試合だった。
 主将を務めた関西大では肩を痛めて試合に出られず、対戦校のデータ分析など裏方に徹した。
(ひと)西谷浩一さん 甲子園春夏連覇を達成した大阪桐蔭の監督(2012年4月5日):朝日新聞

この夏は選手の自主性を重視

 指導力が足りないと痛感した。
 58人の部員一人一人とやりとりする「野球ノート」に加え、チーム作りについて主将、副主将と意見交換するノートも作った。
 タイトルは「日本一への準備」。自分にプレッシャーをかけようと「日本一」と何度も口にした。
 「受け身のチームは勝てない」とミーティングは選手の自主性に任せた。
(ひと)西谷浩一さん 夏の甲子園で優勝した大阪桐蔭の監督(2014年8月26日):朝日新聞デジタル
優勝を決め、抱き合って喜ぶ大阪桐蔭の選手たち=2014年8月25日、阪神甲子園球場
優勝を決め、抱き合って喜ぶ大阪桐蔭の選手たち=2014年8月25日、阪神甲子園球場 出典: 朝日新聞
 先行されても粘って逆転する。
 激しい打撃戦も制する。
 チームは甲子園で様々な勝ち方を見せた。
 「選手たちは私の見えないところで結束して努力し、まとまっていった。終わった瞬間、それに気づきました」
(ひと)西谷浩一さん 夏の甲子園で優勝した大阪桐蔭の監督(2014年8月26日):朝日新聞デジタル

メンバー以外も巻き込んで一丸に

 1993年にコーチに就くとすぐ、「練習の機会を奪いたくない」と下級生による先輩の練習着の洗濯を禁止。
 1年生を上級生の実戦練習に加える。
 指導者が尻をたたかずとも先輩の背中を見て練習する姿勢が部の伝統になった。
(ひと)西谷浩一さん 甲子園春夏連覇を達成した大阪桐蔭の監督(2012年8月24日):朝日新聞
春夏連覇となった12年夏の第94回大会閉会式で、選手らと記念撮影に収まる、大阪桐蔭の西谷浩一監督=2012年8月23日
春夏連覇となった12年夏の第94回大会閉会式で、選手らと記念撮影に収まる、大阪桐蔭の西谷浩一監督=2012年8月23日 出典: 朝日新聞
 優勝の瞬間、かたわらにいた記録員を抱きしめた。
 「彼が一番大変だったと思うから」。
 メンバー外の部員を思いやる姿勢は、頂点に立っても変わらなかった。
(ひと)西谷浩一さん 甲子園春夏連覇を達成した大阪桐蔭の監督(2012年4月5日):朝日新聞

こまやかな目配りで、やる気を引き出す

 部員へのこまやかな目配りが結束を強めた。
 練習後も午後10時半まで寮に残って相談に付き合ってきた。
 「チームのために」と、メンバー外の3年生がすすんで他チームの偵察に向かい、撮影したビデオは試合対策の一助になった。
(ひと)西谷浩一さん 甲子園春夏連覇を達成した大阪桐蔭の監督(2012年4月5日):朝日新聞
ノックバットを手に選手を指導する西谷浩一監督=2009年6月18日、大阪桐蔭グラウンド
ノックバットを手に選手を指導する西谷浩一監督=2009年6月18日、大阪桐蔭グラウンド 出典: 朝日新聞
 不振の選手への配慮も忘れない。
 今大会の1、2回戦で無安打だった7番打者の佐野力也選手(2年)を呼び、「これで打てるようになるで」と左ひじに5センチ四方のテープを張った。
 何の効果もない冗談で表情が緩んだ佐野選手を翌日、2番に起用。
 4安打の活躍を引き出した。
(ひと)西谷浩一さん 第90回全国高校野球選手権記念大会で優勝した大阪桐蔭の監督(2008年8月19日):朝日新聞
練習を見守る西谷浩一・大阪桐蔭監督。若い!=2006年8月4日
練習を見守る西谷浩一・大阪桐蔭監督。若い!=2006年8月4日 出典: 朝日新聞
 大会前、交通事故で車いす生活を送るOBに「あきらめるな。優勝旗を持たせてやる」と誓った。
 試合後、宿舎を訪ねた彼に約束を果たすと、大きく息を吐いた。
(ひと)西谷浩一さん 甲子園春夏連覇を達成した大阪桐蔭の監督(2012年4月5日):朝日新聞
大阪桐蔭の同級生と車いすで母校のグラウンドを訪れた、平岡成浩さん(中央)を迎える、西谷浩一監督(左から2番目)ら=2013年4月7日
大阪桐蔭の同級生と車いすで母校のグラウンドを訪れた、平岡成浩さん(中央)を迎える、西谷浩一監督(左から2番目)ら=2013年4月7日 出典: 朝日新聞

開幕前は、大会参加の全校に気配り

 水分補給に加え、ベンチで小まめに塩分補給をすることも大切。
 大阪大会は全国有数の激戦区なので、全校がベストな状態で戦えることが一番。
 セルフコントロールを大切にしたい。
180校の熱戦、12日開幕 監督ら5氏が展望 第96回高校野球大阪大会(2014年7月5日):朝日新聞
大阪桐蔭の熱戦を振り返る。高校野球のニュースはこちらで。 朝日新聞デジタル・高校野球特集ページ

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