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魅力度ランキング最下位〝定位置〟だけど…茨城県や県民の受け止めは
民間調査会社の「都道府県魅力度ランキング」で、最下位が〝定位置〟のようになっている茨城県。しかし、茨城県が独自に公表している「幸福度指標」では全国上位に位置しています。日々、茨城県を取材している記者として思うことは……。(朝日新聞記者・羽賀和紀)
今春、水戸総局に赴任したとき、職場にあった1冊の本がおもしろくて、何度も読み返しました。
地元出身の漫画家・佐藤ダインさんの「だっぺ帝国の逆襲」(小学館)です。
東京の仕事を辞めた主人公のダイゴが茨城県庁に転職し、地元の魅力を探るために奔走する――。
そんなストーリーで、豊かな食文化に魅力的な人々など、茨城の魅力が満載の1冊です。
茨城は人口規模も県内総生産も全国11番目と上位にあります。1人あたりの県民所得は東京都、愛知県に続いて3位と、「懐」事情も豊かだそうです。
観光やグルメの分野での評判も悪くありません。
梅などの花を前面に打ち出した誘客キャンペーンがヒットし、観光産業はわいています。
近年は「常陸乃国(ひたちのくに)」のブランドなどで販売する農水産品が人気で、グルメも話題です。
しかし、なぜかイメージはよくありません。
その理由の一つが、民間調査会社のブランド総合研究所が発表している「都道府県魅力度ランキング」とされています。
茨城は過去17回のうち12回で最下位になりました。まさに、最下位が「定位置」状態です。
このランキングで、今年は埼玉県が最下位に転落しました。初めての事態に埼玉では大きなショックをもって受け止められたようで、「最下位の先輩」として、埼玉県の担当記者とコラボして、それぞれの県の実情を描く記事を書きました。
茨城の方はといえば、今回一つ順位を上げて46位になったとはいえ、地元ではほとんど話題になりませんでした。
魅力度向上に必死のはずの県の担当者も「いちいち行政が一喜一憂するほどのものではない」とにべもありません。
実は、県は政府統計など42のデータをもとにした「幸福度指標」を独自に公表しています。
「魅力度」では低迷から抜け出せずにいるものの、この幸福度指標では茨城は全国で上位につけていて、自らの施策に自信を持っているのです。
11月末に発表された今年度の幸福度指標も13位と、堂々の順位でした。
ただ、よく見ると、刑法犯の多さなどで「安心安全」分野では44位と、生活者としてはあまりうれしくない結果が出ています。
総合順位も3年連続で13位と上向く兆しが見えないのもやや気がかりです。
「だっぺ帝国」では、「これだけ茨城の魅力を訴えてもわかってもらえないなら独立する」と、ダイゴが知事に「独立建白書」をたたきつけます。
もちろん、茨城が本当に日本から独立することはありませんが、日々茨城の取材にあたる者としては、やっぱり茨城の魅力をもっと知ってほしい――。それが取材を終えての本音です。