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HKT48秋吉優花さん 15年目のグループへ「変化も伝統も大事に」
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HKT48の現役メンバーで最もキャリアが長いひとり、秋吉優花さん(25)は、特技の歌や演技を生かした個人での活動も力を入れています。12歳で加入した後、シングル曲の選抜から外れたことをきっかけに、自分の強みを探したそうです。歌への思い、そして11月26日で劇場公演開始から15年目に入るHKT48への思いを聞きました。
ファンにとって感慨深い光景でした。9月に東京都内で開かれた「Boostyファンまつり」のイベントの一幕。
HKT48の秋吉優花さん(25)が、元SKE48で歌手の野島樺乃さん(24)、NGT48の三村妃乃さん(23)とともに立ったステージで、「はじまりの唄」で美しいハーモニーの花を咲かせました。
「はじまりの唄」は、AKB48グループで歌が上手なメンバーを競う「AKB48グループ歌唱力No.1決定戦」の第3回大会の決勝進出者9人によるユニット「Nona Diamonds」名義で2021年に発表された曲です。
3人は「歌唱力決定戦で一緒に戦ってきた仲間と、こうしてまた、一緒に歌うことができてうれしい」と声をそろえました。
約4年ぶりに3人で歌ったことについて、秋吉さんは「同世代がとても頑張っているからすごく刺激を受けました。私も頑張らないと、と改めて思いました」と振り返ります。
秋吉さんは2期生として2012年9月に劇場でお披露目されました。当時小学6年生、2期生で最年少でした。
テレビのバラエティー番組でも無邪気で元気なキャラクターが人気を博します。
この年、劇場支配人兼任としてHKT48に移籍した指原莉乃さん(32)からも面白がられ、番組でも「いじられ」て、人気になります。
翌2013年発売のシングル「メロンジュース」で、研究生ながら選抜メンバーに選ばれます。
しかし、人気メンバーが多かった1期生、2期生に加えて、3期生でも「なこみく」の愛称で親しまれた矢吹奈子さん、田中美久さん(ともに24、卒業)が当時12歳で加入し、話題を集めます。
翌2014年春に発売されたシングルは「なこみく」の初選抜とともに秋吉さんも選抜入りしますが、その次のシングルからは選抜メンバーから外れました。
ただ、当時のHKT48は人気が沸騰していた時期、テレビ番組への出演、年に何回もあるライブツアーと、メンバーは多忙を極めていました。
番組に出演した時もメンバー同士のライバル意識や、目立とうという意識も強かったそうです。
「頑張って前に出ないという気持ちがありました。めちゃくちゃ忙しい時期があったから、自分の対応力がすごく広がったと感じています。今、仕事がハードな時でも、あの時に比べたら頑張れそうと思えます」と振り返ります。
ただ、スケジュールに追われる日々を過ごすなかで、次第に悩みも膨らんでいきました。
「いただいた仕事を頑張ってこなしていく感じでしたが、選抜でないなか、どう頑張ったらよいか悩みました」
まだ中学生でしたが、HKT48をやめようかと思ったこともあったそうです。
歌うことは元々好きでしたが、「どうしたら自分がやりたいことが出来るんだろう。メンバーがいっぱいいる中で、どうしたらこの思いを伝えていけるのだろうかと考えていました」。
高校入学後に練習を始めたのが、アコースティックギターでした。ボーカルのレッスンも受けるようになります。
「今のうちに自分ができることをやろう、スキルを磨こうと思いました」
それが、やがて実を結んでいきます。CS放送やネット配信もされた「AKB48グループ歌唱力No.1決定戦」で、2019年の第1回大会から決勝に進出し、以降決勝の常連となります。
「歌唱力No.1決定戦をきっかけに、歌ともっと向き合って頑張りたいと思いました。歌の練習や、大会の本番を通じて自分自身と向き合うことができます。アイドルの現場とはまた違った形で、言葉を歌に乗せて届けられるのはとても素敵な経験です」
舞台での演技の仕事も並行して次第に増えていきました。
アジアからのファンともコミュニケーションを取れるように、中国語の会話も独学で学びました。
現役メンバーでは2人いる2期生がもっとも先輩です。
「みんな後輩だから、自分がちゃんとしなきゃという意識があるんですが、歌うことや、舞台での演技など個人のお仕事は、それとは違って、食らいついていく感覚が楽しいです」
そうした思いの一方で、選抜入りへの思いは常に去来していました。
とくに2021年発売の「君とどこかへ行きたい」は年長メンバーの「つばめ選抜」、若手メンバーによる「みずほ選抜」の二つの選抜グループが出来て、選抜入りしたメンバーが多かったため、入れなかったショックは大きかったそうです。
ただ、このシングルのカップリング曲「UFO募集中」で初めてセンターを務めました。
この年の夏に開かれたファンによる人気投票イベント「リクエストアワー」では3位に入り、ステージで喜びを爆発させました。
秋吉さんが再びシングル選抜入りしたのは、2023年発売の「君はもっとできる」でした。
前回から9年ぶり。「ここで入れなければ辞めよう」と思い詰めていた時期の吉報でした。
HKT48の活動は14年目に入りました。アイドルという活動自体は「ほぼやり残した事がないんじゃないかっていうほどさせてもらいました」と話します。
だからこそ、「新しい事に挑戦する時に向上心が生まれると思うので、見つけていきたいです。後輩に甘えられる時は甘えつつ、個人で外の仕事をやっている背中を見て、後輩が自分も頑張ろうと思えるような先輩でありたいと思っています」と話します。
先輩から見て、当時と現在のHKT48はどう映っているのでしょうか。
「1期生、2期生だけの頃はガチャガチャだったんです。ダンスもトークも。でも元気さやパッション(情熱)は人一倍ありました。仲の良さもずっとそうです。そうした部分はこれからも変わらないでいてほしいです。一方で、今はどのメンバーもダンスがうまいし、動きもそろえようと意識が強くなっています。そうした変化している部分も、伝統もどちらも大切にしていけたらと感じています」
そして、後輩たちにこんなメッセージを送ります。
「後輩たちには、自分が好きなことをどんどんやってほしい。個人が何かしたいって思った時に、みんながまとまり過ぎていたら、逆に難しいと感じてしまう時があるかもしれません。私が率先して変なことをしていきたいです。変なことが自由にできる環境であり続けたいと思っています」
自身の今後については、現在約920回に達している劇場公演の出演回数の1000回達成を目標に掲げています。
HKT48では1期生の下野由貴さん、2期生の上野遥さん(ともに卒業)だけが達成しています。
「劇場があるからここまでやって来れました。ファンの人との絆が生まれていったのは劇場公演があったからこそ。だからこそ、ファンの人、劇場のスタッフさんへの恩返しに近い意識で、1000回まで頑張りたいです」
ただ、舞台への出演などで今年は劇場公演への出演回数が少なかったうえ、10月13日から約1カ月にわたって劇場公演自体の休止が続いています(11月22日に7期研究生公演、23日から各チームの新公演を開始の予定)。
HKT48の運営会社の発表によると、「公演運営に携わるスタッフ体制の変更に伴い、準備および体制の整備に想定以上の時間を要しているため」で、運営側が不手際をおわびする異例の事態となりました。
この件をめぐって、秋吉さんはオンラインの配信で、長年劇場公演や配信を支えてきたスタッフへの感謝を語ったうえで、「劇場運営のスタッフさんが変わるって、ファンの皆さんには関係ないことじゃないですか」などとファン目線に立って、発言しました。
自身の性格を「ぐいぐい引っ張るタイプではなく、末っ子気質」と自己分析する秋吉さんが、積極的に発言したのはなぜでしょうか。
配信では、「前までは自分の個人仕事を大切にしよう、何か起きても触れないでおこうと思っていました。ですが、昔からいたスタッフさんがほとんどいなくなり、自分たちが説明しないといけない局面が増えていると感じています。劇場もメンバーも好きなので、(先輩として)きちんと話していかないとと思いました」などと語りました。
秋吉さんの誕生日である10月24日に予定された生誕祭も延期され、急きょ劇場で、ファンを前に記念イベントが開かれました。
その席で、秋吉さんは、改めて劇場の運営スタッフとファンへの感謝を口にしました。
そして「歌詞が今の私たちに合っているんじゃないかと思います」として、劇場公演の1曲「To be continued.」をギターで弾き語りしました。
<あれもできなくて、これもできなくて、今日の短さを嘆く。できなかったことを指折り数えてみるより、心にメモを残して朝を待て!>
<焦ることはないよ。振り返れば今日は今日でよかったのさ。To be continued.>
15年目を迎えるHKT48が、その活動拠点である劇場が、これからも続いていってほしい。そんな願いを込めたのかもしれません。
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