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漁網にからまったウミガメ、助けたのは海上保安官 SNSに感謝の声

ウミガメが、海に放置された漁網に引っかかっている――。そんな通報を受け、救助したのは海上保安官でした。SNSでは感謝の声が相次ぎ、ゴーストギア(幽霊漁具)問題を指摘するものもありました。当時のようすを、担当者に聞きました。
先日、福岡・佐賀・長崎・大分の各県と山口県西部を管轄する第七管区海上保安本部のX(旧ツイッター)アカウントがこんな投稿をしました。
<大量の漁網が漂流しており、ウミガメが引っかかっているとの通報を受け、巡視艇はやぐもを発動
ウミガメを無事救助し、航行の妨げとなる漁網も回収しました>
救助の様子を撮影した動画は約80万回再生されています。
7月22日(火)、#比田勝 海上保安署は、大量の漁網が漂流しており、#ウミガメ が引っかかっているとの通報を受け、巡視艇はやぐもを発動🚢
— 第七管区海上保安本部【公式】 (@JCG_7th_RCGH) July 28, 2025
ウミガメ を無事救助し、航行の妨げとなる漁網も回収しました。🐢#海上保安庁 #七管区 pic.twitter.com/KGPxyqOWnv
SNSでは、ウミガメを助けた海上保安官への賛辞の声が相次ぐとともに、放置漁具問題への懸念を示す声が投稿されています。
「海保の皆様はヒーローです!」「海亀を助けた海保の方に竜宮城への招待状が届いたりして」
「海のゴミ問題の深刻さを改めて感じます」「海での環境問題、本気で向き合わないと大変なことになると改めて思いました」
なぜ海上保安官がウミガメを助けることになったのでしょうか。第七管区海上保安本部の担当者に聞きました。
ウミガメが救助されたのは、長崎県対馬市の舟志湾沖、尉殿埼灯台の南東約7kmの海上でした。
第七管区海上保安本部の比田勝海上保安署に、漁師の男性から、「舟志湾内に大量の漁網が漂流しており、ウミガメが引っかかってもがいているが海保さんでどうにかできないか」との通報があったそうです。
比田勝海上保安署は韓国に一番近い海上保安署です。ふだんは国境警備や外国漁船の監視・取り締まりに取り組んでいます。
30メートル型巡視艇「はやぐも」(総トン数100トン)で現地に向かうと、ウミガメが漁網に絡まって苦しんでいたそうです。
ウミガメから漁具を切り離すために刃物を手にした海上保安官は、ウミガメに対して「できるだけちゃんと取ってあげたい」と優しく声をかけますが、網はウミガメの体に複雑に絡んでいました。
海上保安官は暴れるウミガメから水を浴びながらも、絡まった網をていねいに除去していきました。
網が切れた瞬間、海上保安官は「よおし!バイバイ!」と声を上げ、自由になったウミガメは海中に消えていきました。
担当者によると、第七管区海上保安本部の管内では、過去にも海保によるウミガメ救助がありました。
2019年8月、厳原沖で漁網に絡まっているウミガメ2匹を救助した事例があるということです。
海に流出して放置された漁網やロープ、ブイなどの漁具は、ゴーストギア(幽霊漁具)などと呼ばれ、海洋生態系や漁業資源に悪影響を与えることが指摘されています。
故意に捨てたのではなく、台風などで流されて結果的にゴーストギアになってしまう場合もあるといいます。
こうした漁具は、ウミガメや魚の体に絡まるだけでなく、海の生き物が誤って食べてしまう被害もあります。船の航行の邪魔にもなります。
また、漁具の多くはプラスチックでできています。プラスチックは軽くて丈夫で長持ちしますが、自然界で分解されにくく、半永久的に残り続けるごみにもなり得ます。漁網などは放置されても、魚を捕まえる機能が残っています。
そこで世界各地で、ウミガメ・魚・アザラシなどの海洋生物が漁網などに捕まり、ときには死に追いやられてしまう「ゴーストフィッシング」が報告されています。捕まった生物の死骸に引き寄せられたほかの生き物も捕まってしまいます。
環境省が2022年度に国内の海岸78地点で行った漂着ごみ調査では、重量では3割が漁具だったという結果でした。
公益財団法人世界自然保護基金ジャパン(WWFジャパン)が2025年に発表した報告書「日本におけるゴーストギア対策の現在地―漁業系プラスチックごみの解決に向けて―」によると、ゴーストギアは海洋プラスチックごみの約1割を占めると推定されています。
オーストラリア北部の海では、1年間で1万頭を超えるウミガメが網に絡まって死んでいると推定する調査もあるといいます。報告書では、漁業者、企業、自治体など漁業に関わる人々が連携して対策を急ぐべきであると訴えています。
第七管区海上保安本部の担当者は、海の環境を守るため、「不要となった廃棄物や、漁業活動で出た廃棄物を海洋に投棄しないようにしてもらいたいです」と話しています。
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