こうした矢野さんのセンスやユーモアが、ネットでの好意的な反応につながっています。
しかし、実はこのポスターへの反響について、成田病院事務局の担当者は「最初は複雑な思いだった」と明かします。というのも、同院は基本的に院内撮影禁止。拡散されたポスターの写真は許可を得ず、投稿されたものだからです。
担当者も「患者さんのプライバシーへの配慮から、院内は撮影禁止ですので、ご理解ください」とあらためて注意喚起します。
記者が取材で訪れて実物のポスターを見ると、ネズミキツネザルの毛並みや診察室の椅子の光の反射まで描き込まれており、その完成度の高さに驚かされました。
院内では、禁煙エリアを示したり「歩きスマホNG」を伝えたりするポスター、食堂での感染防止対策を呼びかけるシール、職員への配布物などに矢野さんのイラストが使用されています。
現在、事務局は矢野さんに依頼するとき、細かい設定はせず一任しており、「新作を楽しみにしている状態」だそう。矢野さんはそれについて「プレッシャーがかかる」と苦笑いします。
大きな反響があったことで、京都や大阪、広島の医療機関からも、ポスターを掲示させてほしいという依頼があったそうです。
矢野さんが制作したオリジナルの著作物ではあるものの、当初は「医療全体の安全に貢献したいという病院としての思いで、正式に依頼していただければ、お使いいただいていた」(事務局担当者)。
以降も問い合わせが続き、現在は
公式サイトの「掲示物ダウンロード」のページから、無償ダウンロードができるようになったということです。使用の対象は医療機関に限られ、目的外の使用は禁止で、利用規約の確認が必要。ただし、閲覧は誰でも可能です。
「SNS上での動向は知りませんでしたが、安定的に月に数件ダウンロードされているようなので、それを見るにつけまだおもしろがってくれる人がいるのだなあ、とうれしく思っておりました」と矢野さんは話します。
本来であれば、病院を訪れた人の目にのみ、触れていたであろうポスターが、ネットの普及により何度も“発掘”され、多くの人を楽しませています。気になる人は矢野さんの他のイラストを含め、チェックしてみてはいかがでしょうか。