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どっちが木彫り?クイズを解いて巡る展覧会 100分の1探す問題も
途中から本物も木彫りに見えてきて…
どっちが食べ物で、どっちが木……? 思わず作品とにらめっこしてしまう展覧会が東京・渋谷で開かれています。作者は木彫りアーティストのキボリノコンノさん(@kibori_no_konno)。展示はクイズ形式になっていて、来場者が解答用紙に答えを書きながら進みます。会場ではあちこちから「どれだろう?」「分っかんないなぁ」という声が。筆者も挑戦してきました。
1月下旬に東京・渋谷で始まった展覧会「どっち?展」(ほぼ日主催)。
フランスパンやアーモンドなど本物の食べ物と忠実に再現された木彫り作品が並び、「木彫りは、どっち?」と書かれています。
様々な角度から展示を眺め、木彫りを探す来場者。それぞれが解答用紙とペンを持ち、答えの番号を記入していきます。
数人で来た人は「どれだろう?」と話し合い、1人で訪れた人からは時折「分っかんないなぁ」と独り言がもれていました。
筆者もその一人。何度もキボリノコンノさん(以下コンノさん)を取材し、実物の木彫り作品を見てきたはずなのに、「どれだ……」「分かんないわ」を連発していました。
クイズは2択問題から始まって難易度はどんどんあがっていき、終盤には100個の「煮干し」から木彫り1個を選び出すという超難問が待ち構えています。
100個の煮干しを前に、筆者は苦笑いしかできませんでした。もう解答は当てずっぽうです。
すべて見終わった後は、赤ペンで答え合わせ。クイズは全部で20問、24点満点です。正解数に応じて「木彫り判定士」のレベルが分けられていて、「木製認定証」をもらえます。
多少自信のあった筆者でしたが、結果は17点。もっと正解したかった……と思いましたが、「プロ級」と認定されました。
この日は満点が4人いて、平均点は17.7点だったそうです。
18点だったというパート従業員の女性(50代)は、展示を見るために北海道から上京しました。
「実物と比較したら木は分かるのではないかと思っていたけど、最後のほうは本物が木に見えてくるマジックにかかったような感じです。ここでしか味わえない、とても楽しい時間でした」と話していました。
「どっち?展」を担当した、コンテンツ企画、制作などを手がけるほぼ日の松家文子さんは、展覧会の開催について、「社長がコンノさんのファンで、2023年4月に『何かやりましょう』とお声がけしたことがきっかけです」と話します。
同社社長でコピーライターの糸井重里さんは、以前からいちユーザーとしてSNSでコンノさんの作品を楽しんでいたそうです。
本物そっくりな木彫り作品をSNSに投稿し、多くの人を驚かせてきたコンノさんですが、昨春から「そっくりだけではない楽しさ」を求め、木彫りクイズを出していました。
その後、木彫りクイズをまとめた絵本『どっち?』(講談社)が発売されることになり、並行して出版記念の展覧会「どっち?展」の企画が進んでいきました。
コンノさんとほぼ日のスタッフで話し合いを重ね、展示は「体験型」に。答え合わせを終えた後も、当日のみ再入場可とし、正解が分かったうえで改めて作品を観察できるようにしたそうです。
松家さんは「クイズを当てるのも楽しいですし、間違ったとしても、コンノさんがどれだけリアルに作っているのかを実感できておもしろいと思います」と話します。
展示会には木彫りのアーモンドと本物のアーモンドが置かれたコーナーがあり、来場者自らが手にとって番号に配置し「木彫りクイズ」の写真を撮れるようになっています。
「『出題する楽しみをみなさんにも味わってほしい』という僕の思いをほぼ日のスタッフさんがくみ取って、アイデアを出してくれました」とコンノさんは話します。
木彫りを通じたコミュニケーションを大切にしたいというコンノさん。来場者が撮った「木彫りクイズ」をSNSに投稿したり、家族や友人にクイズを出したりして楽しんでほしいと考えています。
「見てもらうだけではなくて、SNSでリプをいただくのも大歓迎です。展示会場では、『これ分かります?』と来た人同士のコミュニケーションも生まれていてうれしく思います」
今回の展示会では、木彫り作品が「そっくり」「おもしろい」という見方に加え、来場者自身が「見破る」という要素もあります。
作家としては「リアルではない部分を見つけ出される怖さがある」としつつも、見破られることで「創作意欲がかき立てられ、まだまだ頑張らないといけないという気持ちになった」と話すコンノさん。
「『どっち?展』はみなさんへの挑戦状でもあり、自分への挑戦状でもある。またレベルアップさせてもらえるんじゃないかなと思います」
展覧会は渋谷パルコ8階「ほぼ日曜日」で、3月10日まで開催されます。
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