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このバイトをやると売れる?芸人で話題 剪定、効率よく進めて…
ジャパネーズ・アチャさん
ここで働いた芸人が「次々に売れる」と話題になっているバイト先があります。元キックボクサーが代表を務める人材派遣会社です。バイト歴5年目の芸人ジャパネーズのアチャ・マサノブさんに、その実態を教えてもらいました。(ライター・安倍季実子)
M-1グランプリのファイナリストになった人気芸人を次々に輩出していたことから、「働くと売れる」「パワースポット」と噂される「ZONEインターナショナル株式会社」。
元WKAムエタイ世界ライト級王者の小林さとしさんが代表を務める会社で、主な仕事内容は造園業です。
バイトしていた芸人の活躍が著しいのはもちろん、芸人がバイト中の様子をSNSでアップしたり、人手が足りない時に募集を呼びかけたりすることからも、芸人から愛されるアットホームなバイト先としても注目を浴びています。
しかし、バイト歴5年目で一番の古株に当たるコンビ「ジャパネーズ」のアチャ・マサノブさんは、「バイト先がパワースポットだから売れるんじゃなくて、社長と親方の2人が応援してくれるから、芸人が頑張れて、その結果として売れていくんだと思う」と話します。
代表の小林さんが芸能活動への理解が深く、芸人の仕事を優先して働ける環境だといいます。
また、バイトする芸人同士の交流もさかんで、刺激しあって芸の道を高められるのだそう。
「芸人にとってめちゃくちゃいい環境だと思います。社長も現場監督の親方もめちゃくちゃいい人で、『芸人辞めてこっちに来い』とは絶対に言いません。逆に『早く売れてテレビに出てよ』って言われます。だから、今のバイトを辞めたいと思ったことは一度もありません」と話します。
これまで、バイト仲間でM-1のファイナリストになった人には、「真空ジェシカ」の川北茂澄さん、「モグライダー」のともしげさんがいます。
「その時もみんなで喜びましたし、僕個人としては、仲間が売れていく成功例を見せてくれた気がして嬉しかったです」
アチャさんがこのバイトを始めたのは、2018年の夏。
それまではコンビニやカラオケで深夜バイトをしていましたが、体力的にキツくなってきたこと、体調を整えようとバイトのために予定を調整しなければならないことがネックになっていたといいます。
新しいバイトを探していたとき、芸人仲間から「葉っぱを集めるだけで9000円もらえるバイトがある」という話が舞い込み、「最初は半信半疑だった」と振り返ります。
しかし実際には、「知っている先輩芸人や格闘家や俳優さんたちがいる、すごくアットホームなバイト先でした」と笑います。
バイト中のアチャさんは、公園や河原・河川敷などの清掃作業のほか、マンション敷地内の除草や樹木の剪定などを行っています。
社員が草刈機で草を刈ったり、チェーンソーで木の枝などを切っていき、バイトがそれらを収集して、トラックまで運びます。
その後、植木職人がやってきて、木や枝をゴミ出しできる既定の大きさ(1メートル以内)に切ってから運搬します。これが基本の仕事内容です。
「僕はどちらかというと効率中毒な人間で、植木屋さんを待つ時間がもったいないなと思って、自分でハサミやノコギリを一通り揃えて、枝切り作業もやるようになりました」と話します。
要領よく進めたいというアチャさんの仕事スタイルは伝染していき、現在はほとんどのバイトが自分のハサミを持つようになりました。
また、現場監督でもある植木職人の親方から「やる気のあるバイト」と見込まれて、樹木の剪定の仕方も教えてもらえるようにもなりました。
本日、ルラシオン。
— アチャ•マサノブ(ジャパネーズ) (@achamasan) December 18, 2023
クリスマスツリーみたいになってた子達は元の姿に戻してあげました。
是非お越しください。 https://t.co/jrR7WNdaLR pic.twitter.com/IMco2wKCku
現在では、ひとりでマンション内の樹木の剪定も任されています。
「草刈りやゴミ集めも、キレイになっていくのが楽しいんですが、やっぱり剪定の方が楽しいです! チェーンソーとバリカン (エンジンヘッジトリマー)の資格があれば、やれることが増えるんで、そのうち取りたいですね」
バイトはシフト制で、週に3~4日。シフトの調整や変更がしやすく、毎月の単独ライブの前は、シフトがゼロという週もあります。
というのも、昨年から単独ライブで新ネタを15本披露しているため、ネタを覚えたり準備をするのに時間が必要です。「シフト調整が柔軟な点は、本当にありがたい」とアチャさん。
バイト代は日給1万円。朝の8時半から始まり、小休憩やお昼休みを挟んで夕方頃には終了です。早ければ、お昼の2時や3時で終わることもあるそう。
芸人業と両立がしやすい上に、作業が早く進めば短時間で終わることもあるメリットがあるバイトですが、アチャさんは「早く終わるからいいわけではなく、ゴールに向かってみんなで協力しながら取り組めるところが、自分の性に合っているし、このバイトのいいところだと思います」と話します。
また、コント師としての性格がバイトにいい影響を与えているといいます。
「僕は完璧主義といいますか、どうせなら最後までトコトンやり尽くしたい性格なんです。親方に『ここまで丁寧にやってくれたの?』って言わせるくらいのレベルにまで仕上げないと気が済まないんです(苦笑)」
ジャパネーズはコントの内容や演技だけでなく、使用する小道具や音響もすべて自分たちで製作するこだわり派。舞台に立つ時に思っている「お客さんを笑わせたい」という気持ちは、バイト先では「お客さんを喜ばせたい」という気持ちに変わるのだそう。
舞台に立っている時もバイトをしている時も、常にサービス精神にあふれているアチャさん。ジャパネーズの今後の夢は、ツアーで全国をまわることです。
「小道具も音響も、いつかはプロに協力してもらって、ソフトもハードも作りこんだ完璧なコントを引っさげて、全国をまわりたいですね」
そのためには知名度アップが欠かせません。今年の目標は、やはりキングオブコントの決勝に残ることです。
「もちろんネタ番組にも出たいのですが、僕らのコントは陰の要素が強くて尺も長めなので、ゴールデンタイムに放送しているネタ番組にはハマらないんじゃないかっていうのがあります(苦笑)。だから深夜に特番でやっている『あらびき団』や、放送できるかできないかのギリギリを攻めている『水曜日のダウンタウン』に出られたらうれしいですね」
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