連載
#72 「きょうも回してる?」
ガチャガチャ市場、拡大続く…前年度比36%増 〝マシン〟も新挑戦
「おもちゃショー」でも新たな流れ
最近では自治体を含め、様々な業界がガチャガチャに注目するなど、市場規模の拡大を体感します。6月上旬に東京で行われた「東京おもちゃショー」を、ガチャガチャ評論家のおまつさんが、独自の視点で解説します。
日本玩具協会が、6月8日と9日の「おもちゃショー」の開催に合わせて発表した2022年度のガチャガチャ市場規模は、前年度比35.6%増 の610億円。ガチャガチャ市場初の600億円超えとなりました。
ちなみに、2012年度の市場規模は270億円だったので、この10年間で2倍以上拡大したことがわかります。
市場規模が600億円を超えた理由として、5月に発表されたガチャガチャ最大手のバンダイとタカラトミーアーツの好決算からも見て取れます。バンダイナムコ ホールディングスは、2023年3月期の決算の売上高は過去最高を記録しました。
事業別でみると、バンダイの※ガシャポンなどに関係があるトイホビー事業と、「ガシャポンのデパート」などの専門店を展開するアミューズメント事業も過去最高の業績でした。
また、タカラトミーアーツの2023年3月期の決算も増収増益となり、過去最高の売上、最高益を更新。※ガチャ事業は大型ガチャ売場の設置拡大とヒットコンテンツを使った大人向け商品の拡大等により売上が伸びました。
さらに、業界最大手でカプセル玩具自販機のオペレーションを行うハピネットも売上、利益とも過去最高を達成しています。事業別のアミューズメント事業は、ガチャガ市場が人流の回復などの影響も受け、好調に推移したほか、ハピネットが運営するガチャガチャ専門店「ガシャココ」の出店や新規ロケーションの拡大で、売上高、利益面ともに前期を大幅に上回っています。
そのほか、「ガチャガチャの森」や「ドリームカプセル」、「#C-pla(シープラ)」などのガチャガチャ専門店の出店ラッシュも市場規模拡大に寄与したと考えられます。
市場拡大の好要因は、コロナ禍でガチャガチャ業界に好循環を生み出す仕組みができたことです。つまり、コロナ禍でショッピングモールなどの空きテナントを活用した専門店が増加したことで、「メーカー」と「商品」、「売り場」の3つがうまく循環し、市場が大きくなったと言えるのです。
今回、4年ぶりに一般客にも公開されたおもちゃショー。私が覚えている限りでは、4年前までは各メーカーのブースごとにガチャガチャの売り場がありました。ですが、今回はメーカーの垣根を越え、一堂に「カプセルトイマーケット」として大きく場所を構えており、ガチャガチャの注目度の高さが伺えました。
さて、おもちゃショーのバンダイのブースで特徴的だったのが、ガチャガチャの新しい楽しみ方でした。
一つ目が「フラットガシャポン」です。フラットガシャポンは、ガシャポン史上初の最大A4サイズ・厚み1cmまでの平面商材が出てくるガシャポンマシンです。
そのマシンから出てくる商品は、サイズや厚みのバリエーション豊かな商品になっています。2022年2月の導入開始からクリアファイルや色紙、カレンダーなどを展開し、カプセルとは違うワクワク感を提供しています。8月からうちわも販売する予定です。
また、ガチャガチャ業界大手のバンダイだからこそできるサステナブルな取り組みとして、空カプセル回収機「ガシャドロイド」が初披露されました。ガシャドロイドは、「パックマン」と赤いゴースト「ブリンキー」の移動ロボット。パックマンが、使わなくなったガシャポンの空カプセルを回収し、ブリンキーがガシャポンの自販機になっています。これはカプセル回収・リサイクルや購入シーンにエンターテインメントを掛け合わせた新しい面白い試みでした。
一方タカラトミーアーツのブースでは、ガチャの歴史を紹介していました。ガチャガチャが1965年から始まった時に使用されていた機械も展示されており、子どもも多く来場するおもちゃショーにおいて、子どもから大人までガチャガチャの歴史を学べる貴重な展示だったと思います。
この2つのブースの共通点は、子どもだけでなく、大人も楽しめる要素があることだと思います。
初めて600億円を超えたガチャガチャ市場ですが、2023年度はコロナ禍で停滞した経済が動き始めた中、インバウンド需要の効果も見逃せません。訪日外国人観光客が増加すると予想されるため、ガチャガチャ業界はさらに活性化していくことが見込まれます。
※ガシャポンはバンダイの登録商標です。
※ガチャはタカラトミーアーツの登録商標です。
1/9枚