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「ランドセル重い」、小学生が自ら解決! 便利グッズ製品化で大反響
大人からの批判には「反論」しました。
ランドセルが重いーー。長年小学生を悩ませている問題に、小学生自身がアイデアを出して、ある商品を考案しました。その名も「さんぽセル」。開発の背景には課題解決もさることながら、「ゲーム部屋を作る」という“野望”がありました。
「さんぽセル」は、ランドセルに取り付けてキャリー化できる2本のスティックです。今年4月、子どもの夢の実現を後押しする会社「悟空のきもちTHE LABO」が発売しました。
スティックはアルミニウム製で、車輪がついていて、重さは280g。ランドセルに取り付けて使うときのみ伸ばし、ゴロゴロと引いて移動できます。
車輪部分は取り外し可能で、交換して長期間使えるそうです。キャリー時の体感との比較を実験し、ランドセルの負荷を90%ほど削減したといいます。
伸縮自在で95〜150cmの身長に対応し、小学1年生から6年生までの体格差もカバーできるようにしました。
発売前から話題となり、約3000個の予約が入ったため、現在発送まで4カ月待ちの状態です。「骨折してランドセルを背負えないので商品がほしい」という、想定していなかった問い合わせもあるといいます。
発案のきっかけは昨夏、栃木県日光市で遊び場として開放されている廃校に集まった小学生との雑談でした。
雨の日の遊び場がなく「ゲームがほしい」「廃校にゲーム部屋を作りたい」と言う小学生に、「悟空のきもちTHE LABO」に携わる大学生が、「自分たちでお金を稼いで実現しちゃえばいいじゃん」と提案したそうです。
大学生が困っていることはないか尋ねると、「ランドセルが重い」という悩みが飛び出しました。
水泳用品メーカー「フットマーク」が2021年、小学1〜3年生1200人に行った調査によると、90.5%が「ランドセルが重い」と感じていると回答。ランドセルの重さは、中身を含めて平均3.97kgで、10kg以上の荷物を背負っている児童もいたそうです。
また、「ランドセルが重い」と感じている児童のうち、2.7人に1人は「重い荷物を背負うことが億劫で登校を嫌がった経験がある」と回答したといいます。
そんな悩みに対し、「ランドセルにタイヤをつけて引っ張ったらいいのでは」とアイデアを出したのが、当時小学4年生だった双子の兄弟です。すぐに廃校にあるものを使って試作品を作りました。
開発に携わった大学3年生の岡村連太郎さん(21)は、「話を聞いたとき、『僕が小学生のころにほしかったな』と思いました。当時もランドセルが重かった覚えがあるので」と話します。
廃校で試作品を作った後は、商品化へ向け、岡村さんら3人の大学生が参画。改良を重ね、6人の小学生が検証やアドバイスをして進めました。
「小学生に『どう?』と見せてはダメ出しをもらい、持ち帰って改良してまた見せるの繰り返しでした」
こだわったのは「軽量化と耐久性」です。
「重たい」「タイヤが壊れる」「ダサい」といった小学生のダメ出しを、一つ一つ解決していきました。ただ、小学生たちのランドセルの扱いには想定外のものも多く、耐久性や安全面を補強するため自動車の安全部品などを作る栃木県の企業に協力を依頼したといいます。
また、あらゆる通学路を想定し、大学生が手分けして踏切や歩道橋、公園、砂利道など約500kmの道のりを歩行テストしました。「階段でガンガンする」など、子どもがやりそうな動きもあえて試してみたそうです。
「小学生でもないのに夜中に赤いランドセルを持って歩いていたので、職質をされたこともありました」
現在全国各地から多くの注文が入っている「さんぽセル」。小学生たちの野望をかなえる資金は予約分で調達でき、この夏にも実現可能だそうです。
しかし、「さんぽセル」を紹介する記事が配信されると、「ネットの大人」たちからは多くの批判を受けました。
「悟空のきもちTHE LABO」によると、「これを開発した人、子供の事をよくわかってないですね」「道はずっと平らではないし、階段もあるし上り坂も下り坂もある。どう考えても背負っている方が楽だと思います」などといったコメントが寄せられたそうです。
その反応を見た大学生たちは、小学生がショックを受けないように伝えなかったといいます。
しかし、そこはデジタルネイティブな小学生たち。「エゴサーチ」をして大人たちの反応をすぐにキャッチし、悔しさを感じていたそうです。
そこで、大学生の協力のもと、自分たちの「反論」を発表することにしました。
コメントで最も多かったのは、「根本的な問題は、持ち物が多いと言う事」「この問題、そもそも『毎日の荷物をいかに軽くするか』に尽きるかと。そして、それを考えてあげるのは大人の責任」といった意見だそうです。
「悟空のきもちTHE LABO」は、「ほんとうの問題は、みんな答えが分かってるのに、意見だけ。長年、誰も解こうと動かなかったことです」としています。
開発に携わった大学生の岡村さんは、「商品を発表するタイミングでは、僕たちはほめられると思っていた」と打ち明けます。「でも、実際は1000件ほどの批判を受けて、悔しさや悲しさを味わいました」
新しい挑戦に対する大人の心無い反応に失望した大学生たち。「これからの時代を担う小学生が、いいように叩かれて終わってはいけない」。そう考え、反論の場をサポートしました。
「(発案者の)小学生たちがずっと言い続けていることですが、さんぽセルは手段であって目的ではありません。小学生は、『ランドセルが軽くなることで学校に楽しく行きたい』『さんぽセルが売れなくても、荷物が減るのであればそれでいい』と話しています」
「さんぽセルへの反響は大きく、自分たちががんばれば実際に社会が動くことを小学生が見せてくれています。これからの日本をがらっと変える突破口になるかもしれません」
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