連載
#68 夜廻り猫
「そん時は俺、残るよ」愛するペットから考える戦禍 マンガ夜廻り猫
戦禍を逃れようと、ペットを連れて避難したというニュース記事を読んだ男性。自宅の犬2匹のことを思い返すと……。「ハガネの女」「カンナさーん!」などで知られる漫画家の深谷かほるさんが、ツイッターで発表してきた「夜廻り猫」。今回は「避難の現実」を考えた家族のエピソードです。
ペットを連れて、戦禍から逃れたという新聞記事を読んだ男性。
「避難となったらうちなんかどうする でか目のが2匹だぞ」。食卓で妻と息子に声をかけます。
「乗り物や避難所で、人間より優先するわけにいかないだろ 連れていけるとしたらせいぜい1匹じゃないか」
息子が「そん時は俺、残るよ こいつらと」と答えると、妻も「あら私だって」と応じます。
「じゃ お父さんご無事で」と妻がちゃかし、男性は「えーーー」と返すしかありません。
夜の街で涙の匂いに気づいた猫の遠藤平蔵に、そんな家族との会話を伝えた男性。「いや、実際 問題だよ」と顔を引き締めます。
2匹を散歩しながら、「やっぱり戦争はだめ 絶対」とひとりごちるのでした。
ロシアによるウクライナ侵攻が始まり1カ月以上が経ちます。漫画家の深谷かほるさんは連日、避難する人びとの映像を見たそうです。
「少なくない人が、犬や猫を連れていました」と話します。
あるおばあさんは、片手に猫の入ったキャリーバッグを下げ、それ以外の荷物はハンドバッグだけで長い道のりを歩いていました。
地下室に逃げ込んだ人が抱いていた小さな犬は、人の胸に顔を押し付けてブルブル震えていました。
「置いていかれたペットの世話をしているので、怖いけれど避難しません」と言う人もいたそうです。
「動物園では空襲の中、職員の人たちが泊まり込みで動物たちの世話をしていると聞きます」と話す深谷さん。
「動物も家族です。一緒に連れていけないとなれば、動物を路頭に迷わせるだけでなく、人間にも癒えようのない傷を負わせることになります」と指摘します。
「そんなことからだけでも、私は戦争には絶対に反対です」
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