話題
トランプ氏、4日に1回ゴルフ場「大統領になったら行かない」の約束は
「私が大統領になったらゴルフには行かない!」と宣言して、アメリカ大統領になったドナルド・トランプ氏。ふたを開けてみれば、2017年1月に就任してからの1年間で、ゴルフ場に足を運んだ回数は90回を超えました。しかも、訪れるのは自らの所有地ばかり。支持率は一向に上がらず、公約も未達成のものが多いようですが、ゴルフばかりして大丈夫?(朝日新聞国際報道部記者・軽部理人)
1月15日。この日は、アメリカの公民権運動を指導した故マーチン・ルーサー・キング牧師を記念する祝日です。歴代大統領は奉仕活動に従事しています。その一方でトランプ氏は、自身の所有するフロリダ州の「トランプ・インターナショナル・ゴルフクラブ」にいました。土日祝の3連休、毎日ゴルフ場にいたことになります。昨年末には、クリスマスの25日を除いて7日連続でゴルフ場に出向いていたこともあります。
トランプ氏は、大のゴルフ好きとして有名。単にプレーするだけでなく、アメリカ国内ではフロリダ州やカリフォルニア州など全米12カ所に、海外だとスコットランドやアイルランド、ドバイなどの5カ所に「トランプ」と名の付いたゴルフ場を所有しています。
安倍晋三首相が訪米した2017年2月、両者はトランプ氏のゴルフ場2カ所を「はしご」。計5時間にわたり27ホールを一緒に回りました。また、トランプ氏が来日した同年11月には、「霞ケ関カンツリー倶楽部」(埼玉県川越市)でゴルフをともにしました。
トランプ氏は、大統領に就任してから何回ゴルフ場に通ったのでしょうか。統計を取り続けているアメリカのテレビ局NBCによると、トランプ氏は就任1年目の2017年は計94日、自らが所有するゴルフ場を訪れました。だいたい4日に1回はゴルフ場にいることになります。
歴代のアメリカ大統領にも、トランプ氏と同じくゴルフ好きは多くいます。1993年から2期8年間務めたビル・クリントン元大統領はミスショットを何度も打ち直すことで知られ、18ホールで100回打ち直したこともあったとか。大統領退任後、ゴルフ誌の取材に「大統領職はとてもストレスが多く、精神と体を休める必要がある。ゴルフはそれに最適だ」と答えています。
同じく大のゴルフ好きだったオバマ前大統領は、在任中の2期8年で約300ラウンドを回りました。ちなみに最多は、約1200ラウンドのウッドロー・ウィルソン第28代大統領です。
トランプ氏が実際にいくつラウンドを回ったかは分かっていませんが、単純に1日に1ラウンドとして計算した場合、今のペースを続ければ、8年在職したら720ラウンドは回る計算になります。
ゴルフをすること自体は何も悪くありません。アメリカのメディアはたびたびトランプ氏のゴルフ場訪問を報じていますが、ゴルフをしていることを批判しているわけではありません。問題は、トランプ氏が過去にオバマ大統領のゴルフを繰り返し批判していたことです。
「オバマはゴルフをし過ぎている! 私が大統領になったら、仕事に打ち込むからゴルフをする時間などないだろう。すべきことがたくさんあるから、ホワイトハウスを離れることはほとんどない」
何度も何度も、繰り返し批判していました。過去の発言といまの行動がかけ離れていることは、明らかです。
After tweeting about London, President Trump went to his golf course for the 2nd day in a row.
— Bradd Jaffy (@BraddJaffy) June 4, 2017
Watch candidate Trump on Pres. Obama & golf: pic.twitter.com/1HFVmPASU3
Can you believe that,with all of the problems and difficulties facing the U.S., President Obama spent the day playing golf.Worse than Carter
— Donald J. Trump (@realDonaldTrump) October 14, 2014
「ゴルフ場に行ったからといって、必ずしもゴルフをしているわけではない。ミーティングをすることもある」
2017年3月、記者団からトランプ氏のゴルフ場行き過ぎ問題について質問があった時、当時のスパイサー報道官はそのように弁明しました。
けれど皮肉なことに、同じ時間帯にゴルフ場にいたプレイヤーがSNSに投稿した写真などによって、トランプ氏がミーティングではなく、実際にゴルフをしていることがたびたびバレています。
また、テレビ局CNNのカメラがゴルフ場脇の公道からトランプ氏のゴルフ姿を撮影していると、大型トラックが視界を遮るように停車したことも。撮影妨害だったのか、そこはわかっていませんが……。
Spotted: President trump golfing for the second day in West Palm Beach. pic.twitter.com/nu88ahCP7l
— Allie Malloy (@AlliemalCNN) April 9, 2017
もう一つの問題は、大統領という公人の立場を利用して宣伝をしているのではないか、ということです。
トランプ氏はゴルフ場に限らず、自らの所有地を頻繁に訪れています。ちなみにその数は121日(ゴルフ場含む)。計算すると、3日に1回です。その代表格が、フロリダ州にあるリゾート施設「マール・ア・ラーゴ」。安倍首相や中国の習近平国家主席も迎え、首脳会談を行いました。一般の人も使えますが、入会金は20万ドル(約2300万円)、年会費は1万4千ドル(約160万円)。
トランプ氏が別荘代わりに滞在することもしょっちゅうです。
アメリカの識者は「今や『マール・ア・ラーゴ』と聞けば、トランプ氏の持つリゾート施設だと誰でも知っている。自分の所有地を頻繁に訪れることが無料の宣伝効果になっていて不適切だ」と指摘しています。
昨年6月にはワシントンとメリーランド州の司法長官が、トランプ氏が公務と自身の事業を適切に分離していないのは憲法違反にあたるとして提訴しました。
米メディアによると、過去にトランプ氏とゴルフをしたことがあるスポーツ記者は、トランプ氏についてこう述べていたそうです。
「スコアを正確に付けるといったゴルフのルールにほとんど従わず、グリーンにさえ乗っていないのに打たずに1打で入ったことにしていた」
トランプ氏は「アメリカ・ファースト」政策を進めるあまり、オバマ政権が世界や他の国々と定めたルールを壊し続けています。地球温暖化対策の国際的な枠組みである「パリ協定」や環太平洋経済連携協定(TPP)からの離脱、イスラエルのエルサレムを首都と宣言することなど枚挙にいとまがなく、そのせいで世界は混乱に陥っていると言っても良いでしょう。
ゴルフは紳士のスポーツ。ゴルフ好きならば、ルールを守ってほしいものです。
Arabella singing a song she learned for #ChineseNewYear. Wishing everyone an amazing year to come during these days of celebration. 新年快乐! pic.twitter.com/jxHHLvhmzm
— Ivanka Trump (@IvankaTrump) 2017年2月2日