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M-1準優勝のあの芸人、奈良のアイドルの裏方に 何があった?

あれから15年。

芸人を引退した元「ハリガネロック」のおおうえくにひろさん
芸人を引退した元「ハリガネロック」のおおうえくにひろさん

目次

ハリガネロックのツッコミで活躍も、芸人引退

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 12月4日、漫才コンビの頂点を決めるM-1グランプリが開催されます。初開催となった2001年、準優勝を果たしたのが「ハリガネロック」でした。あれから15年。ツッコミ担当のおおうえくにひろさん(43)は芸人を辞めて、奈良のご当地アイドルグループの裏方になっていました。驚きの転身の背景には、一体何があったのでしょうか? 記者が取材をしました。

NHK上方漫才コンテストで最優秀賞に選ばれた時のハリガネロック。右がおおうえくにひろさん、左がボケ担当のユウキロックさん=1997年
NHK上方漫才コンテストで最優秀賞に選ばれた時のハリガネロック。右がおおうえくにひろさん、左がボケ担当のユウキロックさん=1997年
出典: 朝日新聞

きっかけは「あまちゃん」

 ――現在の仕事内容は。

おおうえさん

 仕事のメインは、奈良のご当地アイドル「Le Siana(ルシャナ)」のイベントの構成作家やMCなどです。ちゃんと名刺も持っていますよ。それと自分のタレントとしての活動です。活動の拠点も奈良に移しました。今は実家で両親と暮らしています。家族は東京に残したまま、単身赴任です。
【奈良のご当地アイドル】ルシャナのホームページはこちらから
奈良のご当地アイドルグループ「Le Siana」
奈良のご当地アイドルグループ「Le Siana」

 ――なぜアイドルの裏方になろうと思ったのですか。

おおうえさん

 きっかけは2013年の朝ドラの「あまちゃん」です。毎日、楽しみに見ていましたね。主人公の天野アキがご当地アイドルになるのを見て、ご当地アイドルっておもしろいなと思ったんです。それで、ぼくの出身地だった奈良にもいるのかなと調べたら、「ルシャナ」がおったんですよ。ちょうど半年ぐらい前に発足したばかりだったかな。

 ――「あまちゃん」だったんですね。

おおうえさん

 歌を聴いたら、すごくよかったんです。胸に響いたっていうか。それからライブに行くようになったり、ルシャナのイベントの司会を依頼されたりしてするうちに、どんどんファンになっていったんです。と同時に、アイドルの仕事っておもしろいなぁとも思った。
「あまちゃん」がきっかけ
「あまちゃん」がきっかけ 出典: 朝日新聞

 ――ちょうどいいタイミングだった。

おおうえさん

 あとですね、30歳ぐらいで東京に出てから、地元の奈良のことが妙に気になるようになったんですよね。郷土愛っていうんですかね。自分が奈良の出身というのを意識するようになった。甲子園でも奈良代表をめっちゃ応援するし、奈良出身者に会うとテンションが上がるし。

 ――決断の最後の決め手は。

おおうえさん

 2014年にハリガネロックを解散して、1年間はピン芸人をしていました。これから自分が本当にやりたいことは何かというものを考えたときに、大好きなアイドルと奈良のために何かしたいと思ったんです。ルシャナの事務所の方とはイベントとかでよく知ってたんで、「一緒にやりませんか」と自分からお願いしました。事務所にはルシャナのほかに大阪の「堺・泉州」のご当地アイドル「Culumi(クルミ)」も所属しており、彼女たちのサポートもしています。

芸人とは違うアイドルの世界

 ――そもそもルシャナとはどんなグループですか。

おおうえさん

 全員が奈良県内の出身で、衣装や楽曲も奈良をイメージしています。グループ名は、東大寺の大仏(盧舎那仏〈るしゃなぶつ〉)からとりました。奈良の魅力を全国の人に伝えたいと活動しています。現在のメンバーは4人です。ちょうど今、新メンバーも募集していますよ!

 ――やっぱり、芸人とは違いますか?

おおうえさん

 当たり前ですが、全然違います。芸人はステージが終われば、すぐに舞台袖にひっこむ。でも、ルシャナのメンバーはライブが終わると、自らグッズの販売をしないといけない。ファンと一緒に写真撮影にも応じるし、ファンの顔や名前を覚えることもある。この距離の近さが一番の魅力だと思います。僕も撮影係を率先して引き受けていますよ。
ルシャナの写真撮影を手伝うおおうえさん(右)
ルシャナの写真撮影を手伝うおおうえさん(右)

「もっと前に出ないと」とアドバイス

 ――具体的にどんなサポートをしているのですか。

おおうえさん

 歌やダンス以外の演出部分です。自分のキャラをどうやってアピールしていくかをアドバイスしています。テレビやラジオに出させてもらうこともありますが、台本通りにしているだけでは印象には残らない。でも、出番が終わった後に「もっと前に出ないと」って言っても、「なんで?」という目をするメンバーもいます。

 ――なかなか分かってもらえない。

おおうえさん

 もっと歌の練習がしたいという思いがあるのかもしれないけど、ライブは自分たちに興味を持ってもらう貴重な機会。これからバラエティー番組に呼ばれたら、もっとそういうことが求められますから。僕もテレビやイベントで多くのアイドルグループと共演してきたけど、人気のあるグループはとてもうまい。常に自分をどうみせるかを意識している。
ルシャナのイベントでは、司会をして盛り上げるおおうえさん
ルシャナのイベントでは、司会をして盛り上げるおおうえさん

 ――10代の女の子のサポートは難しいんじゃないですか。

おおうえさん

 最初は「おおうえさん!」なんて慕ってくれていましたけど、もう慣れたみたいでだんだん扱いが悪くなってきています(笑)

 ――扱い……。大変ですね。

おおうえさん

 でも、彼女たちの夢を応援するのはやりがいがありますよ。芸人のときも、面倒をみていた後輩は売れてほしいと思ってたけど、実際にM-1の決勝とかいくと、「おめでとう」という思いと「まじかー」という焦りの両方があった。でも、いまは違う。ルシャナに心から売れてほしいと思っている。やっぱりお客さんの前に立って、自分を表現できるってうらやましいと思うし、すごいとも思う。
ルシャナのイベントでは、司会をして盛り上げるおおうえさん
ルシャナのイベントでは、司会をして盛り上げるおおうえさん

 ――ご当地アイドルグループも激戦ですよね。

おおうえさん

 ほんと激戦ですよ。めっちゃいますもん。芸人やってるときは、いろんなアイドルと一緒にテレビに出てましたから競争の激しさはわかってるつもりです。しかも、ルシャナのメンバーはほとんどが10代。学校行きながら、がんばっている。でもね、ライブを見たファンはみんな笑顔になっている。あんな笑顔にさせる彼女たちはほんとにすごい。自分も漫才で客を笑顔にさせてきたけど、それとは全く別ですね。人をあそこまで笑顔にさせる力を持っているということを多くの人に知ってもらいたい。

芸人に未練は?

 ――仲の良かった芸人さんとは今も交流はあるんですか。

おおうえさん

 もちろん、今もありますよ。ツイッターでやりとりもしていますし、イベント情報などをリツイートすることも多いです。芸人もアイドルが好きな人が多いし、構成作家になる芸人もいる。だから、自分が奈良に行くことを伝えたときも「そうなんや~」と違和感なく受け入れてくれました。

 ――相方だったユウキロックさんとは?

おおうえさん

 松口(ユウキロック)は、僕の芸人最後の舞台に来てくれて、そのときに少ししゃべりました。「奈良に戻って、こんなことやるんや」と言ったら、「がんばりな」とエールをもらいました。

 ――芸人に未練はないですか。

おおうえさん

 今は芸人という意識はありません。ネタをやってるわけではないので、芸人というのはおこがましい。それだけのプライドを持ってやってきました。現在の肩書はタレントですね。
現在のおおうえさんの名刺。芸人の肩書はない
現在のおおうえさんの名刺。芸人の肩書はない

おおうえさん

 でも、タレントとして活動して、半年たった今、全然なんにもできていない。僕を知ってもらってから、ルシャナや奈良のことを知ってもらえればうれしいけど、今は僕とルシャナを関連づけている人は少ないですね。そもそも、僕が奈良にいることもあまり知られてないのかもしれない。奈良を盛り上げたいと思っていることを知ってほしいです。僕、奈良のためにがんばりますよ!絶対盛り上げますから。吉本の「住みます芸人」より、腕あると思いますよ(笑)タレントとしての活動はまだまだこれから。みなさん、僕のこともよろしくお願いします!

     ◇
おおうえ・くにひろ 1973年8月7日生まれ。1995年にユウキロックとハリガネロックを結成。ABCお笑い新人グランプリ最優秀新人賞、NHK上方漫才コンテスト最優秀賞、第1回M-1グランプリ準優勝、爆笑オンエアバトルチャンピオン大会優勝など、数々の賞を受賞。

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