閉

閉

これフカボリしてほしい

リクエストする

閉

2015年06月11日

官能小説でたどる戦後70年 おっぱいvs.お尻 尼僧vs.巫女

  • 20417

独特の言語感覚がある官能小説の世界。そもそもは、官憲の摘発を逃れるための苦肉の策だった

独特の言語感覚がある官能小説の世界。そもそもは、官憲の摘発を逃れるための苦肉の策だった


 過激なエロ映像が簡単に手に入る現代でも、官能小説が書店から消えることはありません。日陰でじっとりと咲き続けるジャンルの戦後70年の歴史をたどった本が出版されました。性行為を表現する独特の言語感覚は、官憲の摘発を逃れるための苦肉の策だったそうです。女性作家の隆盛で新時代を迎える現在に至るまで、普段は近寄りづらい世界をのぞいてみましょう。

「貫く」ならばセーフ

「日本の官能小説 性表現はどう深化したか」(朝日新書)の著者、永田守弘さん(82)は1981年に雑誌「ダカーポ」の官能小説の紹介欄を担当したことをきっかけに、このジャンルと濃密につきあうことになりました。年間およそ300作を読みます。この本では、時代順にたくさんの官能小説の引用をちりばめながら、社会情勢や流行も交えて解説します。
 戦後しばらくは性表現への摘発が相次ぎます。チャタレイ夫人の恋人事件(1950年)四畳半襖の下張事件(1972年)などが有名ですが、永田さんは「警察ににらまれないため、作家は直接的な表現を避けながら、読者にそのシーンを思い浮かべさせなくてはいけません。その工夫が官能小説の豊穣な表現を生み出しました」と話します。
 例えば「挿入」はいけません。そこで「女体を貫く」などの表現がひねり出されたのです。
 1978年の富島健夫「初夜の海」が最後の摘発になりました。今では女性器そのものの名称を書いても問題になりませんが、官能小説家たちは競い合うようにユニークで隠微な表現を生み出し続けています。

「日本の官能小説」の著者、永田守弘さん。日本の官能小説研究の第一人者

「日本の官能小説」の著者、永田守弘さん。日本の官能小説研究の第一人者

もはや男性のものでない

 官能小説という呼び名が一般的になってくるのは1950年代半ばごろ。それまでのSM趣味など好事家のひそやかな娯楽から、ポルノ御三家と称された川上宗薫、宇能鴻一郎、富島健夫らの登場もあって、より幅広い人気を獲得していきます。
 1970年代以降、会社の出世競争や人間関係で疲れたサラリーマンを癒やすかのような、たくましい男性器で女性を悶絶させるパターンの作品が読まれます。時代が下った現代では、失業などで社会から疎外感を味わう中高年が女性との出会いで精気を取り戻す「回春もの」が受けています。
 男性読者向けのイメージが強かった官能小説の世界ですが、現在は女性作家の活躍がめざましく、読者も女性が増えているそうです。攻略されるだけの女性ではなく、女性自身が性の満足を得る微妙な行為や心理を細やかに描こうとする作品が増えています。永田さんは「これまでにない新しい方向性の気配が濃くなっている」と期待を込めます。

永田守弘さん編「官能小説用語表現辞典」(ちくま文庫)。「女性器」のなかの「陰部」を表す言葉だけで40ページにも及ぶ

永田守弘さん編「官能小説用語表現辞典」(ちくま文庫)。「女性器」のなかの「陰部」を表す言葉だけで40ページにも及ぶ

バスガイド・CA出身作家も

 お尻派?おっぱい派?
 男性の女体への執着をめぐる一大テーマについて、官能小説界では時代の流れのなかで何度か偏りはありました。しかし、最近はお尻の優勢が定着している、というのが永田さんの見方です。「女性の押し出しが強くなり、男性が正面から向き合えなくなっているのではないでしょうか」と分析します。両派のなかでも、「巨乳」「美乳」などとさらに細分化された嗜好についても、本のなかで触れています。
 小説に登場する女性の職業設定も、時代によって流行があります。かつて人気だった尼僧が下火になる一方で、女子学生がアルバイトすることは多い巫女はよく採りあげられています。最近では、バスガイドやキャビンアテンダントなど実際に職業体験を持つ女性作家が登場し、業界の内情に通じた作品を発表しています。

出典:pixta

「淫心を燃えたたせる」

 時代を超えて、一定の愛読者を保ち続ける官能小説の魅力は何でしょう。
 永田さんは言います。
 「官能小説は性欲をかきたてるためのものでなく、もっと感性の深くにある淫心を燃えたたせるものです」

永田守弘さんオススメ 初心者も読みやすい官能小説

◇ベテラン・中堅
・睦月影郎「誘惑フェロモン」 (二見文庫)
・藍川京「華宴」(幻冬舎アウトロー文庫)
・霧原一輝「逃亡者は蜜濡れて」 (竹書房文庫)
・館淳一「目かくしがほどかれる夜」(幻冬舎アウトロー文庫)
・橘真児「おんな、金沢 待ち濡れて」 (双葉文庫)
・草凪優「君の中で果てるまで」 (角川文庫)
◇注目の若手女性作家
・うかみ綾乃「ドミソラ」(幻冬舎)
・花房観音「花祀り」 (幻冬舎文庫)

永田守弘著「日本の官能小説 性表現はどう深化したか」

永田守弘著「日本の官能小説 性表現はどう深化したか」

出典:朝日新聞出版 最新刊行物:新書:日本の官能小説


あわせて読みたい

『ねるねるねるね教室』って何? クラシエ公式、マジメな知育の場に
『ねるねるねるね教室』って何? クラシエ公式、マジメな知育の場に
世界が注目する港町ダンケルク ノーラン最新作が、いま世界を変える
世界が注目する港町ダンケルク ノーラン最新作が、いま世界を変える
PR
出会いはディズニー、人生変えた彼女の一言 5年後に偶然再会し結婚
出会いはディズニー、人生変えた彼女の一言 5年後に偶然再会し結婚
金閣寺が焼けた日 放火した僧の「その後」 恩赦で出所後、結核に…
金閣寺が焼けた日 放火した僧の「その後」 恩赦で出所後、結核に…
「レアな鉄道車両」を次々と入手・・・「埼玉の眼科」どんな先生?
「レアな鉄道車両」を次々と入手・・・「埼玉の眼科」どんな先生?
苦労は見えない、だから… 夫婦の危機に「イタワリ仮面」、共感続々
苦労は見えない、だから… 夫婦の危機に「イタワリ仮面」、共感続々
藤井四段の自宅で見た「普通すぎる日常」服はお下がり、将棋盤まで…
藤井四段の自宅で見た「普通すぎる日常」服はお下がり、将棋盤まで…
禁じられた改札タッチ、「とてつもない金額」とは? JR看板を検証
禁じられた改札タッチ、「とてつもない金額」とは? JR看板を検証
「投げ銭の最高額は78万円」 伝説の大道芸人、ギリヤーク尼ヶ崎
「投げ銭の最高額は78万円」 伝説の大道芸人、ギリヤーク尼ヶ崎
友人がニセ情報をシェア、8割は指摘せず放置 理由は「面倒だから」
友人がニセ情報をシェア、8割は指摘せず放置 理由は「面倒だから」
NEW
1カ月ぶりの休み、起きたらもう夜9時…マンガ「夜廻り猫」が描く休日
1カ月ぶりの休み、起きたらもう夜9時…マンガ「夜廻り猫」が描く休日
有楽町発世界へ!スタジオアルタ新劇場公演。演出家と出演女優が語る
有楽町発世界へ!スタジオアルタ新劇場公演。演出家と出演女優が語る
PR

人気

もっと見る