2017年06月15日

密輸事件の金塊、押収された後はどうなる? 98%は同じ結末だった

佐賀県唐津市の金塊密輸事件で押収された金塊。刻印が読み取れなくなっていた=6月2日、長沢幹城撮影

朝日新聞

 最近も佐賀県唐津市の漁港で金塊とみられる積み荷約206キロが密輸入されるなど、目立つ金塊の密輸事件。違法性が疑われる場合、税関などが証拠品として金塊を押収しますが、最終的にその金塊はどうなるのでしょうか。調べてみました。

金の密輸急増、背景に消費増税

 金の密輸事件は近年急増しています。税関を管轄する財務省によると、2015年7月からの1年間(15事務年度)の事件数は前年の1.7倍の294件。脱税額は前年の2.6倍の6億1千万円で、いずれも過去最高です。

金の価格と密輸処分件数=2017年4月

 何で増えているのか? 理由は脱税です。海外から日本に20万円を超える金塊を輸入する際、免税範囲を超えるので消費税を支払う必要があります。この税金を支払わないのが密輸入です。

 海外で買った金塊を密輸し、国内で売れば消費税分が「利益」になります。14年の消費増税で、その利ざやが5%から8%に拡大したことや金相場の上昇が、密輸急増の背景にあるようです。

金密輸でもうける仕組み=2016年12月

大半は罰金・税金を払って「輸入」

 財務省によると、金の密輸事件294件のうち、空港での検挙が97%を超える287件。手荷物検査で税関職員が発見するものが大半です。関税法違反などに基づき、金はその場で押収されます。

 検挙後は、専門の税関職員が事件を捜査(行政機関なので正式には調査)し、処分を決めます。処分は2つに分かれ、それにより押収した金塊の行方も変わります。

 15事務年度でみると、ほとんど、というか全体の97%(285件)は、密輸した人に返却されています。といっても、罰金(上限1千万円)と支払うはずだった税金を納めなければなりません。金自体は違法でも何でもないので、処分(通告処分)をした後、正規に「輸入」してもらうというわけです。罰金が追加されるので結局、損することになります。

名古屋税関が押収した金塊=2017年6月1日

裁判で「没収」も

 残りの3%(9件)は、捜査機関へ告発するケースです。密輸した金塊の量が多かったり、犯行が悪質だったりすると、税関は告発をし、検察庁が刑事事件として扱います。こちらは、計画的・組織的犯行の場合が多く、警察などと協力して密輸者を特定した時点で逮捕することがあります。

 検察庁が容疑者を起訴すれば、裁判が開かれ、金塊の処分についても判決が下ります。

 15事務年度は、9件のうち5件が没収の判決でした。つまり、悪いことをした罰として金も失ってしまうわけです。没収が確定すると、検察は刑事訴訟法などに基づき、売却の手続きを取ります。

 売却は入札で行われます。3月には、大阪地検が没収した金塊64キロの一般競争入札を実施。予定価格は2億9766万円(税込み)で、単独で応札した大阪市の企業が3億398万円(同)で落札しました。もちろんこのお金は国庫に入ります。

 財務省によると、残りの4件は、没収の判決が出なかったケースです。この場合は、裁判所が命じた罰則(懲役・罰金刑など)などとともに、税関が税金を徴収して、最終的には返還されます。

 大阪地検で3月、密輸事件で没収した金塊64キロの一般競争入札があった。予定価格は2億9766万円(税込み)で、単独で応札した大阪市の企業が3億398万円(同)で落札した。
 この金塊は、関税法違反などで有罪が確定した被告が密輸した。

 結局、密輸が発覚した金塊のうち98%は密輸しようとした人に返却されることになります。ただし、通常の税金に加え、罰則があり、その代償は大きいです。

 財務省によると、密輸の手口は年々、巧妙・大型化しているということです。担当者は「背景には密輸組織の存在がある。警察などの捜査機関と連携して、こうした組織を摘発していきたい」と話しています。

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