商業施設の中にあるエスカレーター。何の変哲もないように見えて、あれ、カーブを描いてる……? 実はこのように“らせん”の形をしたエスカレーターは、現在国内では設置施設の閉鎖や撤去も続いており、「何気に珍しい物」であるとして、ネットで話題になりました。なぜ珍しいのか、国内唯一のメーカーに話を聞くと、単に「バブルの遺物」ではない、現在も続く意外な需要が見えてきました。(朝日新聞デジタル企画報道部・朽木誠一郎)
7月初旬、X(旧Twitter)で「何気に珍しい物」「日本で現存しているのは20基にも満たず」「技術的に難しい物らしくその数は減るばかり」として話題になったのが、福島市のイーストビルにあるカーブを描く“スパイラルエスカレーター”です。
このようならせん型のエスカレーターは、現在も全国の複数の場所にその姿を残しています。
そのほとんどが1980~90年代に設置されたもの。施設などの建て替え時期に当たる2010年代後半から最近にかけて、施設自体の閉鎖や撤去も続いています。一方で、東京都内のパチンコ店やスポーツクラブといった身近な施設で出くわすこともあるのが特徴です。
このスパイラルエスカレーターは、国内では三菱電機ビルソリューションズのみが製造しています。同社の担当者に話を聞きました。
もともと、エスカレーターが弧を描くのは物理的に不可能とされていたそうですが、同社が独自に回転運動と縦運動が複雑に絡み合う動作を可能にする技術を発明。
それが1980~90年代のラグジュアリーな建築の空間設計にマッチし、設置が進みました。これまでの累計生産台数は111台(国内:37台、海外:74台)だといいます。価格は通常のエスカレーターより高額で、建築条件などで異なる特注品になるということです。
一方で、広い敷地面積が必要になり、コンパクトな建物には設置しづらいことから、時代の変化とともに、現在、国内需要は減っています。国内最後の導入は同社がエレベーター・エスカレータの開発・製造をする愛知県の稲沢ビルシステム製作所の2016年でした。
現在も製造は続いており、ラグジュアリーなデザインが喜ばれる海外での導入は続いています。アメリカ・ラスベガスのフォーラムショップスや、中国・上海の新世界大丸百貨には12台と大規模な設置もあります。
レトロな建物に残ることから「バブルの遺物」といった見方をされがちですが、実際にはバブル後も導入は続き、現在は海外へ。国内では見かけなくなりつつあるスパイラルエスカレーターは、その印象的な姿に、日本に限らず世界の建築のトレンドを映しているとも言えそうです。