twitter facebook hatebu line LINE! エンタメ 2024/01/29 みんなの感想 〝今〟が続くことはありえない…だから描き続ける「特別じゃない日」 「特別じゃない日 思い出の映画館」(実業之日本社)より。 出典: 「特別じゃない日 思い出の映画館」(実業之日本社) 朽木誠一郎 朝日新聞デジタル企画報道部記者 漫画 目次 稲さん「実はホラー映画が好き」 一個一個は大したことなくても 「ネガティブ」から生まれた“ほっこり” 「特別じゃない日」をテーマに描き続けている漫画家の稲空穂さん。作品をまとめた単行本の第4巻「特別じゃない日 思い出の映画館」(実業之日本社)が1月18日に発売されました。発売前重版が決定するなど、注目度の高い本作。テーマは「映画」で、ミュージカルからホラーまで、さまざまなジャンルの作品にまつわるエピソードを描いた稲さんに、その意図を取材しました。(朝日新聞デジタル企画報道部・朽木誠一郎) 【PR】手話ってすごい!小学生のころの原体験から大学生で手話通訳士に合格 稲さん「実はホラー映画が好き」 「特別じゃない日 思い出の映画館」(実業之日本社)より。 出典:「特別じゃない日 思い出の映画館」(実業之日本社) ――2巻のテーマは「猫」、3巻のテーマは「ごはん」でした。今回は「映画」です。お好きなものを描いているのだな、と思ってもよろしいでしょうか(笑)。 はい、猫もごはんも映画も好きです(笑)。映画は昔から好きですね。 ――4巻のなかで取り上げられている映画のラインナップは、ホラーが多めですよね。少し、これまでの稲さんの作品のイメージとは違うというか……。 (一同笑)。ゾンビ映画がすごく好きなので。(同席した)編集者さんが「稲さんが好きな作品なら何でもウェルカムだよ」みたいに言ってくれるから、調子に乗ってしまったかもしれません。 ――『サウンド・オブ・ミュージック』のあと、『ミッドサマー』『新感染 ファイナル・エクスプレス』『悪魔の毒々モンスター』と続いていきます。 ちょっと趣味に走りすぎちゃったかな(笑)。家族からは「大丈夫なの?」と言われたりしたんですけど。編集者さんが提案したのは『映画クレヨンしんちゃん 謎メキ! 花の天カス学園』だけですね。 ――今回、どうして映画をテーマになさったのでしょうか。 テーマは一巻一巻、編集者さんと決めて作っています。もう4巻なので、そろそろ私の好きなジャンルで、いつも観ている映画だったら、作品に落とし込みやすいのかなと思って。今までのテーマとはちょっとだけ違うものを、あえて選んでみました。 自分が思い入れのあるテーマには、私にしか表現できないものもあるかもしれないと。 一個一個は大したことなくても ――マンガを描かれるとき、どんなことを大事にしていますか? 見逃しがちな大切なものを、ちょっとずつ表現していくことに、私自身は重きを置いています。 今回、映画をテーマにしていますが、映画という媒体を通した上で、身近な人との感じ方の違い、思いの共有の仕方を改めて捉え直すというか、みなさんがこれまで映画を通して感じたことを「こうだったな」と思い返すきっかけになったら、と思いつつ描いた話が多いです。 ホラー映画の回には、私が体験したエピソードを反映したものもありますし。 ――稲さんがホラー映画を観ているところは想像がつきにくいのですが、どんなエピソードでしょうか。 私はとてもホラー映画が好きで、最初は友だちと観ていたんですけど、だんだん一人減り二人減りと、一緒に観てくれる人が減っていってしまって。 最終的に、私一人で観てたんですけど、結婚してからは夫が付き合ってくれるようになって。元々、ホラー映画が好きな人ではなかったんですけど、一緒に観てホラーに慣れてくれた、とても感謝しているという体験があるんですけど……。 私のマンガって、一個一個は大したことないというか当たり前の体験ばかりなので、こういうインタビューでも話すようなことでもないんですよね(笑)。 「ネガティブ」から生まれた“ほっこり” ――いえいえ、まさに「特別じゃない日」ですよね。そういうのがいいんだよ、という。 やっぱり、「特別じゃない日」っていうテーマにおいては、日常の切り取りというのが大事なので。 もともと、大事件も、大恋愛もないエピソードばかりで。一つ一つの作品にタイトルをつけにくかったので、「特別じゃない日」の連続、というふうにしました。 ――「特別じゃない日」というのは、秀逸なキャッチコピーであるとも感じますが、どのように思いついたのでしょうか。 実は、すごくネガティブなんですけど、20歳くらいの頃から、「今の幸せはずっとないんだろうな」と思っていたんです。 ちょうど喪服を買ったタイミングでもあって。お葬式があったり、「今は会える人ともいずれ会えなくなっちゃうのかな」と考えたりして。日常の中で、今の状態がずっと続くことは、あり得ないことなので。そういうネガティブなことがずっと頭にあって過ごしていたんです。 だから、「日常がいいな」と思った瞬間を切り取ってきました。でも、「特別じゃない日」じゃないですか。読者の方が支持してくださるかわからなかったんですよね。編集者さんにも「読者さんがついてくれるのかな」とずっと伝えていて。今も不安なんですけど、続いているのは本当にうれしいですね。 ――登場人物同士のつながりが描かれ、作品の世界観がどんどん広がっています。今後、どのようなエピソードを描いていきたいですか? もともと、どのエピソードから読んでもらっても共感してもらえるように、「どこにでもいる誰か」の短編、ぶつ切りの話として描いていこうとしていたんです。 でも、編集者さんと相談して、登場人物に名前をつけることになって。それからここまで話が続いてくれたおかけで、続く分だけキャラクターを増やし、人の輪も広がっていきました。この世界が、その向こうにも広がっていると感じてもらえたらうれしいな、と思います。 稲空穂さんのツイッターがこちら 書籍「特別じゃない日」の第1集はこちら 書籍「特別じゃない日」の第2集はこちら 書籍「特別じゃない日」の第3集はこちら 書籍「特別じゃない日」の第4集はこちら withnewsでは原則毎月第三水曜日に、稲さんの漫画とともに作品に込めたメッセージについてのコラムを配信しています。 気乗りせず映画館デートでミュージカル 男性に訪れた意外な〝結末〟 1/13枚 withnews