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なぜ〝わき水〟が感染源に? 「流しそうめん」カンピロバクター中毒

“わき水”には危険も潜んでいるが……。
“わき水”には危険も潜んでいるが……。 出典: Getty Images

目次

飲食店で「流しそうめん」などを食べた客892人にカンピロバクターによるとみられる集団食中毒が発生。カンピロバクターでは「加熱不十分な肉料理」を原因とした食中毒がしばしば注意喚起されますが、今回の感染源は“わき水”とされました。なぜ水が感染源になるのでしょうか。(朝日新聞デジタル企画報道部・朽木誠一郎)
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流しそうめんの食中毒で892人

石川県の飲食店で8月に発生した集団食中毒について、同県は6日、患者数を892人と確定させたことを発表しました。

同県によると、1298人から相談を受け、石川県や富山県、東京都、大阪府、愛知県など18都府県の892人を患者と認めました。全員が8月11~17日(15日は店休日)に店で食事をした1歳から80代の男女で、611人が下痢や発熱などで病院を受診、22人が入院していました。同県によれば、重症者はいないとのことです。

店でそうめんやイワナの塩焼き、かき氷などを食べた客が症状を訴えていました。同県が調査し、店で使っていたわき水から細菌のカンピロバクターが検出されたことで、店は営業停止に。

店は今年7月中旬の豪雨被害で水質検査ができていなかったといいます。店は食中毒患者への賠償を終えた後に廃業すると発表しました。
 

加熱不十分な肉料理が多いが…

カンピロバクターとは、どのような病原体なのでしょうか。内閣府食品安全委員会によれば、カンピロバクターは「1年を通じて特に気をつけたい食中毒菌の一つ」。鶏刺しや鶏タタキ、鶏レバーなどの生肉や、加熱が不十分な肉料理を食べたことによる食中毒の事例が、毎年、多く報告されています。

カンピロバクターは鶏や牛などの家畜の腸内に生息しており、生の鶏・牛の肉や、肝臓に付着していることがあります。この菌は、冷蔵または冷凍温度でも長期間にわたり生存できます。

カンピロバクターが付着した食品を食べると、2~7日ほどで、下痢、腹痛、発熱、頭痛、吐き気、おう吐などの症状が現れます。死亡例は少ないものの、乳幼児・高齢者など抵抗力の弱い人は重症化する危険性もあり、注意が必要です。

まれに、カンピロバクターに感染した数週間後に、手足の麻痺や顔面神経麻痺、呼吸困難などを起こすギラン・バレー症候群を発症する場合があり、筋力低下や運動麻痺の後遺症が残ることもあります。

厚生労働省によれば、カンピロバクターによる食中毒は、国内で発生する細菌性食中毒の中で、近年、件数がもっとも多いもの。年間300件、患者数2000人ほどで推移してきました。

患者数は、コロナ禍の2020~22年は700~900人台に半減していました。これは、飲食店の利用が減ったためとみられています。今年は飲食店の利用が増えたためか、各地で発生が報告されており、専門家からは今後、急増のおそれがあるとして警戒されています。

しかし、今回は「流しそうめん」です。石川県は、店が使っていたわき水からカンピロバクターを検出したと発表しています。実は、わき水や井戸水、簡易水道は動物の糞便などによりカンピロバクターに汚染されている可能性があります。
 

わき水、井戸水でも食中毒発生

国立保健医療科学院のデータベースによれば、カンピロバクターは「大気や乾燥に極めて弱いが、湿潤な環境では長期間生存できる」ことから、「水が原因となることがあり、以前から井戸水、水道水、わき水による食中毒事例が発生している」ということです。

「水系感染症は、カンピロバクター以外に病原大腸菌、赤痢菌、サルモネラなどでも発生している」「これらの感染症は適切な浄水処理や塩素消毒など衛生管理を十分行うことにより防止することが可能である」と同院。

また、国立感染症研究所も「井水、湧水および簡易水道水を感染源とした水系感染事例」においては「その原因の大部分は不十分な消毒であった」としています。

管理者や提供者には衛生管理の徹底を望むとともに、個人でできる対策として、わき水などを飲む際は、それが汚染されている危険性も考慮し、飲む前に必ず煮沸消毒をする、あるいはそもそも衛生管理が不十分な水は飲まないようにしましょう。
 

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