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「茨城ダッシュ」は交通違反です! 県警が特設ページを作った理由
交差点を直進しようとしたら、対向車が強引に右折してきてヒヤッとした――。茨城ダッシュ、伊予の早曲がり、松本走り……。こうした運転は「ご当地走り」などと呼ばれ、全国各地にあるようです。これらはもちろん交通違反です。9月30日は「交通事故死ゼロを目指す日」。茨城県警は取り締まりや啓発活動など、茨城ダッシュの根絶に力を入れています。茨城ダッシュは交通マナーの問題だけでは済まされず、実際に事故の原因になったと思われるケースが複数確認されているようです。(朝日新聞デジタル企画報道部・武田啓亮)
8年ほど前、茨城県内で大学生活を送っていた記者は、免許取得のため県内の自動車教習所に通っていました。
特にトラブルもなく進んでいた初めての路上教習。青信号に変わった交差点を直進した後、教官から話しかけられました。
「きみ、県外出身?茨城ダッシュって知らないでしょ?茨城じゃ、強引に右折して来る車もいるから注意してね」
その時は「本当にそんなのあるのか」と半信半疑だったのですが、実際に車を運転していると、青信号を直進しただけなのに右折しようとする対向車からクラクションを鳴らされるといった経験が何度かありました。
今ではすっかり「ご当地ネタ」として定着し、SNSでも頻繁に目にするようになった茨城ダッシュという言葉。
「学生時代に注意するように言われた記憶があるんですが、茨城ダッシュってまだあるんですか?」
茨城県警に取材すると、交通総務課の川上栄司総括理事官が答えてくれました。
「いや、お恥ずかしい話なんですが、本当に多いんですよ。茨城ダッシュ」
「茨城ダッシュは交通違反です!」
茨城県警のホームページには大きな見出しの特設ページが作られています。
「茨城ダッシュをすると、横断歩行者等妨害等、信号無視、交差点右左折方法違反、交差点優先車妨害の4つの違反をすることになります」と川上総括理事官。
具体的にはどんな危険性があるのでしょうか。
「まず、対向直進車とぶつかる危険性があります。加えて、交差点をショートカットして右折するせいで、横断歩道を渡る歩行者の接近に気づくのが遅れたり、車体右側の柱(ピラー)の死角が増えたりして大変危険なのです」
県警によると、交差点で起こる歩行者と車の衝突事故の約8割が右折時に起きているそうです。
県警では「茨城ダッシュが交差点での事故を招く大きな原因になっている」と見て、本格的な茨城ダッシュ根絶に乗り出しました。
これまでも通常の交通違反と同様に取り締まっていましたが、今年6月には茨城ダッシュの集中取り締まりを実施するなど、茨城ダッシュに特に狙いを絞った取り組みを進めているそうです。
茨城ダッシュをめぐりSNSなどで散見されるのが「右折信号が少ないのが悪い」といった主張です。
県警交通規制課に話を聞くと「信号の設置や切り替え時間については全体の交通量のバランスを見て決めているため、安易に右折信号を増やせば解決する問題ではない」と話します。
また、他の都道府県と比べて茨城県の道路事情が特別だというデータも無いそうです。
主要な道路では右折信号や右折レーンの整備が進んでおり、信号の配置や切り替え時間は周辺の交通量に応じて数年ごとに見直されているとのこと。
右折信号がなかったり青信号の時間が短いと感じたりする道路には、一方を優先すると他の車線が渋滞してしまうなどの「できない事情」がある場合がほとんどだそうです。
県警では「時間帯によっては混雑することもあると思うが、急ぎたい気持ちをぐっとこらえて交通ルールと命を守って欲しい」と呼びかけています。
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