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『27時間テレビ』4年ぶり復活の成否は 37回目、番組の〝変化〟

千鳥のノブ(右)と大悟=2019年11月、東京都世田谷区、村上健撮影
千鳥のノブ(右)と大悟=2019年11月、東京都世田谷区、村上健撮影 出典: 朝日新聞社

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今月22日~23日にかけて放送されたフジテレビの大型特番『FNS27時間テレビ』。今年は総合司会に千鳥、かまいたち、ダイアンを据え、『千鳥の鬼レンチャン』をベースに構成された。一部では「惨敗」などとも評されたが、筆者は改めてテレビの底力を感じた。今年の放送での変化を交えながら、テレビ史に残るであろうこの番組の特異性を振り返る。(ライター・鈴木旭)
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本当に「惨敗」だったのか

1987年から2019年まで毎年放送され、フジテレビをはじめフジネットワーク系列局の一大イベントとして知られる『FNS27時間テレビ』。2020年~2022年まで新型コロナの影響で休止していたが、37回目となる今年は4年ぶりの復活を果たした。

番組を通じての平均視聴率は、世帯6.5%、個人4.0%、コア(13~49歳)4.6%(ビデオリサーチ調べ・関東地区)。一部のメディアで「視聴率は低迷」「惨敗」などと報じられたが、視聴率はコア、個人全体、世帯ともに、すべてのパートで同時間帯横並びトップとなる視聴率をマークしたという。

後述するマラソン企画で体調不良者への対応が遅れたことや、出演者が別の出演者に「中指を立てた、立てない」が取り沙汰されてしまう(本人は番組中も、番組後も否定)など、残念な点もあったが、筆者は個人的に、あらためてテレビの底力を感じることになった。

その見どころと過去の深夜帯コーナーとの違い、多角的な連携の巧みさなど、4年ぶりに復活した番組の特異性を振り返る。

「千鳥スタイル」の安心感

ポスタービジュアルに「鬼笑い祭」と銘打っていた通り、今年は人気番組『千鳥の鬼レンチャン』をベースに構成。序盤からメインコーナー「サビだけカラオケ」のスペシャル版「タッグモード大会」(2人1組で音程を外さずにサビを歌い切る企画)を開催し、華原朋美と丘みどり、演歌歌手の徳永ゆうきと彩青ら番組にゆかりのあるペアが番組を盛り上げる。

また、「FNS鬼レンチャン歌謡祭」では、「タッグモード大会」に挑戦したタレントのほか、南こうせつや森高千里ら歌手本人、ギャロップ・林健、霜降り明星・せいやらがマジメに歌唱したことに加えて、T.M.Revolution(西川貴教)の楽曲「HIGH PRESSURE」のサビを「カラダぐぅ~♪」と歌って爆笑を誘ったほいけんたが本人とコラボを果たすなど、生放送とコラボ企画を特長とする『FNS歌謡祭』と『鬼レンチャン』の強みが融合していた。

「400m走サバイバルレンチャン」から発展した「100kmサバイバルマラソン」も、なかなかに見応えがあった。同コーナーは100kmマラソンで先導車から引き離された者が脱落し、必要以上に休憩時間を取らずに勝負したらいつゴールできるのかを検証するというもの。

賞金1000万円がかかったレースとはいえ、ゴールした者たちが軒並み涙を見せる姿から「途方もない暑さと距離、走り切った清々しさ」が同時にこちらに伝わり、素直に感動を覚えた。タレントが長距離を走るのに余計なドラマは必要ないと改めて感じる。

前述したように、参加タレントがゴール直後に体調不良を起こした際、番組側の対応が遅い場面があった。ハードな企画である以上、こうしたときの迅速な救護は不可欠だろう。もちろん放送日までの準備やサポートはなされていただろうが、最後まで「すべてが見られている」という意識での対応を望みたい。

こうしたVTR映像を見ながら、千鳥とかまいたちがワイプ越しに何かしら口にするのも、いつもの『鬼レンチャン』のスタイルだ。まるで視聴者と同じ自宅に座り、テレビに率直な言葉をぶつけているような感覚。その安心感や親近感からくる面白さは、今までの『27時間テレビ』の中で間違いなくトップだったように思う。

「ピリピリから和やか」深夜帯の変化

個人的にもっとも注目していたのが、スペシャル企画「チームDEファイト」だった。

同企画は、1990年代に一世を風靡した『ダウンタウンのごっつええ感じ』の体を張ったコーナーだ。それを、“ほぼごっつチーム”の松本人志、今田耕司、東野幸治、板尾創路、ほんこん、木村祐一の6人と“鬼レンチャンチーム”の千鳥、かまいたち、ダイアン3組で対戦。テレビスターの新旧対決に期待が膨らんだ。

“あっち向いてホイ”で負けた側にクリームが発射される「あっち向いてバズーカ」、チームの1人がパチンコ玉のようにローションまみれのレーンを滑ってピンを倒す「パチンコ人間ボウリング」の2ゲームが行われたのだが、対戦そのものよりも“余白”ばかりが印象に残っている。

序盤から一向にしゃべらない笑顔の板尾、「あっち向いてバズーカ」で異様にジャンケンに勝つ松本、スタッフのミスで別の場所から発射されたクリーム、「パチンコ人間ボウリング」でゴムを引っ張るユースケのズボンから見えた半ケツ……。ここまでバカバカしいゲームバラエティーは久しぶりで嬉しくなった。

終始和やかに進行していたのも印象深い。ダウンタウンが総合司会を務めた1997年の『27時間テレビ』では、とくに若手芸人が登場する深夜帯のコーナーで独特の緊張感を放っていたものだ。

松本の著書『遺書』(朝日新聞出版)の中で、名指しで批判されたナインティナインの表情は強張り、そのほかの若手芸人はそんな空気を打破するかのように懸命に前に出ていたのを思い出す。

2005年の当該企画でも、ゲストの明石家さんまを前に、ひな壇後方に座る品川庄司やフットボールアワーがなかなか前に出られず、嘆いていた記憶がある。

それが今年の「真夜中のお笑いレンチャン〜笑いがバカスカクラシック〜」は、芸人1人ひとりにスポットが当たりやすい企画だったうえ、若手~ベテランまで幅広い芸歴の出演者たちが、お互いの面白さを引き出して笑わせていた。過去を振り返ると、そうした点からも時代の流れを感じた。

「裏被り」を許容した演出も

もう1つ特筆すべきは、多角的な連携が見る者を飽きさせなかった点だ。大きなところでは、番組の裏被り(ある局の番組と同じ時間帯に、他局の番組に出演すること)における演出だ。

『千鳥かまいたちアワー』(日本テレビ系)の時間帯は、千鳥とかまいたちがフジテレビの出演を控えたが、NHKの音楽番組『Venue101』では同時中継が実現。同番組の司会を務める濱家と生田絵梨花が、「チームDEファイト」に出演していたほんこんを加えてユニット楽曲「ビートDEトーヒ」を披露した。

また、ロバート・秋山竜次が演じる総合プロデューサー・唐沢佐吉が随所で機能していた点も見逃せない。

『27時間テレビ』冒頭から登場し、総合格闘技「PRIDE」の選手入場コールで知られるレニー・ハートさながらの声で総合司会の3組を紹介。その後も、『Venue101』との同時中継の場面で濱家と生田を先導し、千鳥、かまいたち、ダイアンが鉄板ネタに今年の『27時間テレビ』の名シーンを盛り込む「ほぼ1時間漫才リレー」の舞台裏を和ませるなど、全体の潤滑油的な役割を果たしていた。

もう1人、ピン芸人ほいけんたの活躍も目立った。「タッグモード大会」では、松浦航大とのチームで参戦。布施明の代表曲「君は薔薇より美しい」のサビで「変わった~」を「くるっくぅ~」と歌唱しクリア。歌詞を変えていると物議を醸したものの、「カラダぐぅ~」の一件といい、どうやら高い音は「う」で出すことがわかり余計おかしい。10連チャン目前の何てことない部分で音程を外した場面も神がかっていた。

「鬼レンチャン歌謡祭」では、西川貴教との共演をはじめ、モーニング娘。'23、AKB48、ももいろクローバーZと歌って踊り、国民的アニメ『サザエさん』にも総合司会の3組とともにゲスト声優として出演。イチ番組の人気者が、ここまでプッシュされるのも珍しい。

そのほか、細魚(木山裕策)、BENI、Mr.シャチホコ、よよよちゃんらが登場し、岸大介(ダイアン・ユースケ)が大御所俳優・松平健とともに「マツケンサンバ」を踊り、津田篤宏の母・きみ子さんが中島みゆきの「時代」熱唱してフィナーレを迎えるなど、『鬼レンチャン』のメンバーが総力を挙げて走り切った印象だ。

「餅は餅屋」と「真剣勝負」

『27時間テレビ』は、例年テレビスターが総合司会を務めている。ちょうど同番組が始まった頃に、タモリ、ビートたけし、明石家さんまが“お笑いBIG3”と称されたように、時代の顔となるタレントが年1回のお祭りを仕切るのが常だった。

ただ、今年は少し違う印象を持った。23日早朝に放送された『めざましテレビ』の中で、笑い飯・西田幸治が「(筆者注:総合司会に)千鳥、かまいたち、ええやんと思ったんですけど、ダイアン……ダイアン!?」と首を傾げていた通り、“テレビスター3組”というよりも“異常にバランスの良い3組”というイメージが強い。

かつて大阪の「baseよしもと」で切磋琢磨した3組は、今や『鬼レンチャン』や『火曜は全力!華大さんと千鳥くん』といった番組で抜群の相性を見せている。実際に『27時間テレビ』を見終わっても、ダイアンは欠かせない存在だったように思う。

今回、総合演出・プロデュースを務めたフジテレビの武田誠司氏は、マイナビニュースで掲載されたインタビュー「『FNS27時間テレビ』キーワードは“真剣勝負” 総合演出が4年ぶりのお笑い祭りに込める狙い」の中で、「(筆者注:『鬼レンチャン』は)ただただ真剣勝負を撮っているだけ」と語っていた。

笑いは芸人に任せ、制作側はきっちりと番組の見どころを作る。この“餅は餅屋”というスタンスに加えて、“真剣勝負”という一貫したコンセプトがあったからこそ、『27時間テレビ』に緩急も生まれやすかったのではないか。

アドリブのトークで笑わせる「明石家さんまのラブメイト10」が例年よりも新鮮に感じたのも、同コーナーに千鳥らが初登場しただけでなく、見せ方の工夫があってこそだろう。番組を制作したスタッフ、出演者の連携によって結実した成果に、今後の『27時間テレビ』にも期待が高まる。

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