IT・科学
ダイエットで「食べるの怖いな」に陥った シオリーヌが明かした体験
ありがたかったのは「体型にふれない友達」
性教育YouTuberとして活動する助産師のシオリーヌ。大学生の頃にダイエットにのめり込み、「食べるのが怖い」という気持ちになっていたといいます。そんな体験を振り返るコミックエッセイを出版しました。当時の思いや、体型に悩む人たちに伝えたいことを聞きました。(withnews編集部・水野梓)
シオリーヌ(大貫詩織)さん:助産師・性教育YouTuberとして活動。総合病院産婦人科で助産師として経験を積み、精神科児童思春期病棟で若者の心理的ケアを学ぶ。2019年2月にYouTubeチャンネルで動画を投稿。チャンネル登録者数は17.3万人。『食べるの怖いな』(ハガツサブックス、原案・シオリーヌ/作画・菊池真理子)は11月17日、エッセイ集『産んでくれなんて頼んでないし』(イースト・プレス)とあわせて発売
性の話をもっと気軽にオープンにできる社会にしようと、YouTubeの動画制作やSNS・メディアでの発信を続けているシオリーヌ。
過酷なダイエットを続け、食べ物を吐くようになってしまった体験を、コミックエッセイにして出版しました。
「自分の体験はあくまで1ケース。摂食障害はさまざまだということを知ってほしい」と、精神科の医師との対談も掲載しました。
「自分が悩んでいた時にほしかった本をつくりました」といいます。
シオリーヌの母親は、年中ダイエットをしていて「カロリー」という概念は幼い頃から知っていたといいます。
初めてのダイエットは中学生の時。体重が減ってクラスメートから「かわいくなったよね」と言われたことが〝快感〟でした。
大学2年生の時、スレンダーな女の子がタイプというパートナーのために再びダイエットを始めました。
お菓子や食事の量を減らし、毎朝体重を測る。その数字によってその日の気分が変わります。
どんどんやせていく様子に、友達から「大丈夫?」「食べなよ」と心配されるのもうっとうしく感じ、ランチや飲み会に顔を出さなくなりました。
体重が15キロ落ちた一方、一日中、食べ物のことを考えていたというシオリーヌ。
「食べたいけど太りたくない」「カロリーを外に出せたらいいのに」
いつの間にか食べたものをトイレで吐くようになっていました。
過酷なダイエットを手放したくても、なかなか方法が見つからず、誰にも相談できずにひとりで悩んでいたシオリーヌ。
「やせる方法の情報はたくさんあるのに、ダイエットから抜け出したい人のための情報は全然なかったんです」
やせたり、リバウンドしたり……その繰り返しの中でもホッとしたのは、〝体型に言及しない〟友達の存在だったといいます。
「やせているときも『すごいね』とか褒めないんです。その時は物足りないなぁって思っていたけど、太った時も何にも言いませんでした」
「あ、私の体型じゃなくて『私』を見てくれているんだって、すごく安心しましたね」
パートナーとうまくいかない時など、ストレス発散の手段にもなっていたという「食べ吐き」。
転機が訪れたのは26歳のときでした。豆腐を食べたら歯に激痛が走りました。嘔吐を繰り返したため、胃酸で歯が溶けて弱っていたようでした。
「ダイエット、やめられるならやめたいな」と初めて感じたきっかけでした。
摂食障害で悩んだ人のブログや体験談を読みあさり、まず体重計を隠して体重を測るのをやめました。
徐々に食べる量を増やしていき、当初は不安で吐いてしまうこともありましたが、今は「食べ吐き」に頼ることはなくなりました。
しかし「YouTubeで顔を出して動画を配信していると、容姿をジャッジするコメントが日常的につくんです。だから容姿を気にせずにはいられないというのが正直なところです」と明かします。
妊娠して体重が増えてきたら、「顔パンパンじゃん」というコメント。
出産後に母乳育児で自然と体重が減ると、「産後ダイエット成功ですね!うらやましい」というコメント。
「ひどいコメントは削除対応できますが、『やせましたね』ってコメントは悪意なく、褒めているつもりなんですよね。でも、母乳をあげるのをやめたら元通りになる。そうしたらまた『太った』って言われちゃうのかな、って不安になります」
【 YouTube更新📹 】
— シオリーヌ🩸大貫詩織 (@shiori_mw) August 30, 2022
出産を終え、自分も今頻繁に「痩せたねー!」と言われます。
私自身痩せようとはしておらず、母乳をあげて自然と体重が減っただけ。
卒乳したらすぐ戻るだろうし、その時には「太ったねー」と言われるんだろうなとすでに気が重いのです。
🔻https://t.co/CcpjwAbQVI pic.twitter.com/TQ3r5hslOU
「誰かが気軽に口にした『やせた』『太った』という言葉の裏で、心や身体のバランスを壊す人がたくさんいるんです」と指摘します。
容姿に口を出すことは、その人の尊厳を侵害する行為――。
シオリーヌは「そんな考え方がもっと広まってほしい」と願います。
「その人のからだのことは、その人が一番分かっています。誰かがとやかく言うことじゃない。そんな考えが当たり前の社会になってほしいです」
自分の容姿が全く気にならないと言えば、うそになる。でも、以前のような過酷な食事制限をしてまでやせたいとは、もう思えないというシオリーヌ。
「家族や友達とおいしいものを食べて、『おいしいね』って言い合える、ありがたい日常を大切にしたいですね」
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