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「アッ…」 〝詐欺〟電話に警察官が出ると受話器の先で声が漏れた

〝市役所の者〟が折り返してきた電話に警察官が出ると受話器の向こうで「アッ」と声が漏れて――
〝市役所の者〟が折り返してきた電話に警察官が出ると受話器の向こうで「アッ」と声が漏れて―― 出典: も~さんのツイッター

目次

「還付金に関してお電話させていただきました」。〝市役所の者〟を名乗る人物から一本の電話を受けた父親は、不審に思いながらもやりとりを続けた。ただ、家族の忠告で警察にも相談。〝市役所の者〟が折り返してきた電話に警察官が出ると、受話器の向こうで「アッ」と声が漏れて――。実際のやりとりについて取材しました。

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「うちの親はこれやられた…」

エピソードは、ブログ「も〜さんの隙あらば自分語り」(https://moosan.blog.jp/)で作品を発表している、Web漫画家のも〜さんが公開しました。

先月下旬、「父が還付金詐欺にあいかけた話」としてツイッター @mori2ta に投稿すると3万件近くの「いいね」を集めました。

「ほぼ同じ手口で祖母が詐欺にあいそうでした!! たまたまこの漫画を見て詐欺を阻止できました!!!!!」というコメントがあった一方で、「うちの親はこれやられちゃったんですよ…」という報告も。各地で被害が相次いでいることをうかがわせます。

「まさか詐欺では…!?」

も~さんによると、不審な電話は今年6月にかかってきたそうです。

〝市役所の者〟を名乗る相手は、電話に出たも~さんの父親に対し「還付金に関してお電話させていただきました」と続けました。

「まさか詐欺では…!?」と頭によぎった父親ですが、日頃から税金や保険料の高さに頭を痛めており「手続き…お願いします!!」と話に乗ってしまいます。

「まさか詐欺では…!?」と頭によぎった父親ですが、日頃から税金や保険料の高さに頭を痛めており「手続き…お願いします!!」と話に乗ってしまいます
「まさか詐欺では…!?」と頭によぎった父親ですが、日頃から税金や保険料の高さに頭を痛めており「手続き…お願いします!!」と話に乗ってしまいます 出典:も~さんのツイッター

「銀行のカードはお持ちですか?」「残金が50万円以上ある銀行だと、手数料が無料になりますが…」などと、電話先の相手は次々と〝手続き〟を説明してきました。

ただ、電話を受けた時は、も~さんの兄がそばにいました。「実家が飲食店で家族経営をしております」と、も~さん。「電話は開店準備をしていた時あたりだったそうです」と、兄が父親の近くにいた理由を説明します。

そばで様子をうかがっていた兄は、「詐欺やで」「詐欺」「あかんで」と繰り返し忠告をします。

一方で、電話主は「銀行の方と連絡をとって参ります」と話しました。いったん電話を切って折り返すと話したそうです。

そばで様子をうかがっていた兄は、「詐欺やで」「詐欺」「あかんで」と繰り返し忠告をします
そばで様子をうかがっていた兄は、「詐欺やで」「詐欺」「あかんで」と繰り返し忠告をします 出典:も~さんのツイッター

「詐欺ですね」

も~さんの兄の忠告を受けた父親は、折り返しの電話を待つ間、「(兄が)あまりにしつこいので渋々…」(も~さん)最寄りの交番へ相談に行きました。

そこで、警察官は「詐欺ですね」と告げたそうです。

警察官は「詐欺ですね」と告げたそうです
警察官は「詐欺ですね」と告げたそうです 出典:も~さんのツイッター

折り返しの電話を待っているということで自宅に同行した警察官。〝詐欺〟の電話に出ると、「警察ですが」と伝えました。

すると、受話器から「アッ」という声が漏れてきました。

折り返し電話を待っているということで自宅に同行した警察官。〝詐欺〟の電話に出ると、「警察ですが」と伝えました
折り返し電話を待っているということで自宅に同行した警察官。〝詐欺〟の電話に出ると、「警察ですが」と伝えました 出典:も~さんのツイッター

落ち込んだ父親

結果的には、警察官の登場によって、慌てた様子で電話は切れました。も~さんによると、続けて電話がかかってくることはなかったそうです。

も~さんは取材に対し、普段の父親について「慎重」と評します。「買い物にしても用心深いというか、疑り深い様子でした」。それでも被害に遭いかけてしまったのです。

兄の忠告がきっかけで被害に遭うことはありませんでした。ただ「自分が詐欺被害に遭いかけることになるとは思わず、『判断力の鈍ったおじいちゃんと思われてしまう』と落ち込んだ様子の父でした」。

も~さんのツイートには、漫画のおかげで被害を防げたという感謝の報告もありました。そうした点から「(父親は)誰かのために一役買えたという事で少し救いになったようです」と話します。

も~さんは今回の件を受けて、こう話します。

「私もまさか父が被害に遭いかけるとは思わず驚きました。やはり私も、頭の中に『被害に遭うのは判断力の鈍った高齢者』という意識が強くあったのではないかと思うのです。まさか自分が、まさか身内が…とならないためにも、詐欺被害を他人事に思わない、自分は絶対大丈夫と過信せず当事者意識を持つことが大切だと感じました」

「私は消えたい」

「私は消えたい」「死にたくなる」

以前に取材をした、オレオレ詐欺で300万円をだまし取られたある老夫婦の妻は、被害に遭った後、自分を責めていました。家族も「自立した両親だったので、大丈夫だろうと思い込んでいた」とした上で、何かできたことがあったのではと悔いていました。

詐欺は、金銭的な被害をもたらすだけでなく、被害者、その家族らの心もむしばみます。

警察庁によると、今回のエピソードにあった「還付金詐欺」を含む特殊詐欺の認知件数は、約1万5千件(2021年)でした。被害額は、280億円を超えます。認知件数も被害額も、高止まりしています。

特殊詐欺については、「自分は大丈夫」と、どこか「他人事」に思ってしまいがちです。ところが、実際にはそう思った多くの人が被害に遭っています。

警察庁は2018年、オレオレ詐欺の被害者354人に聞き取りをしています。それによると、特殊詐欺については「被害にあわないと思っていた」「どちらかといえば被害にあわないと思っていた」という人が9割を超えています。

誰でも、だまされる可能性があります。「お金の話をされた時は疑い、家族らに相談する」という心構えを持つだけでなく、実際に練習もしておく。そんな一歩踏み込んだ備えも必要なのではないか。取材を通じて、そうしたことも思いました。

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