ネットの話題
昭和レトロのかたまりだ!秋田新幹線25周年ポスターが渋すぎる
怪獣映画意識「社内でも賛否両論あった」
今年で開業から25周年となる秋田新幹線。メモリアルイヤーを祝う、記念キャンペーンのPRポスターが「渋すぎる」と、ネット上で注目を集めています。制作元企業に、誕生のいきさつについて聞きました。(withnews編集部・神戸郁人)
縦長の画面を、鋭くとがった切っ先で、引き裂くように疾走する深紅の列車――。ポスターを見た時、真っ先に目に入るのは、秋田新幹線の車両「こまち」です。
上方に視線を移すと、更に驚くべき光景が広がっています。燃えさかる炎の中、紙垂(しで)つきの御幣を振り上げて猛り狂う、赤と青のナマハゲ。背景に浮かび上がる巨大秋田犬。雪化粧した秋田駒ケ岳上を浮遊する、円盤状の黄色い物体……。
秋田名物のオンパレードとも言うべきイラストの下には、「開業二十五周年 秋田新幹線」と書かれています。往年の怪獣映画のタイトルを思わせる、奥側から手前へと飛び出すように構成された、立体的なロゴが印象的です。
このほか、東京―秋田間の移動時に停車する16駅の名前に加え、開業日も「1997.3.22」と明記されています。
絶妙な古くささと、何とも味わい深い外観に、ツイッター上は「このセンスがたまらん」「秋田犬のボス感すごい」などと盛り上がりました。
2022年は、JR東日本管内を走る秋田・東北・山形・北陸・上越・東北の各新幹線が、それぞれ周年を迎える「新幹線イヤー」です。各線の開業日前後に、期間限定で記念グッズを販売するなど、様々なキャンペーンが予定されています。
このうち、先陣を切るのが、3月22日に運行を始めた秋田新幹線です。ポスターのビジュアルが、秋田ゆかりのもので満たされているのも、お祝いムードを盛り上げる施策の一環だったのです。
とはいえ、「攻めた」デザインであるのも事実でしょう。ネット上では、東海道新幹線を舞台とした、1975年公開のサスペンス映画「新幹線大爆破」のポスターに酷似している、との指摘も少なくありません。
「実は弊社内でも、当初、賛否両論がありました」。そう打ち明けるのは、一連のキャンペーンを企画する、JR東日本クロスステーションの担当者です。
いわく、自身は昭和30年代の生まれといいます。ビジュアルの構成にあたって、当時、怪獣映画がはやっていたことを思い出しました。
昭和の風俗が「レトロ」ともてはやされる昨今の情勢も踏まえ、怪獣映画風とすれば、自分と同世代の人々と、若者の両方を取り込めると考えたそうです。描き込む対象を選ぶ上で意識したのが、「秋田を代表するもの」を採り入れることでした。
こまちの赤い車体は、夏の祭事「竿灯(かんとう)祭り」で使われる提灯(ちょうちん)付きの竿(さお)や、ナマハゲの色をイメージしています。裏側に炎を配置することで、雪の中を走り抜ける、新幹線の情熱を象徴的に表しました。
議論になったのが、背景にあしらうモチーフです。「稲庭うどん」や「曲げわっぱ」、「きりたんぽ」など、名産品が豊富な秋田県。選択肢の多さに悩みつつ、最終的にはインパクト抜群のナマハゲと秋田犬を、大胆に配置することにしました。
ちなみに、秋田駒ケ岳上の物体については「お客様各人に、お好きなようにご想像頂ければありがたい」としています。
各モチーフのバランスを「侃々諤々(かんかんがくがく)しながら決定した」(担当者)、今回のポスター。JR秋田駅併設の商業ビル・トピコのほか、3月14日~5月23日の間、埼玉県鉄道博物館でも展示される見込みとなっています。
デザインを目にした人々から、好意的な反応が寄せられている点に関して、担当者は次のように話しました。
「大変うれしく感動しております。今年は、我が国に鉄道が開業して150年となります。この記念すべき年に、鉄道近代化のシンボルでもある、各新幹線の開業周年も迎えます」
「新型コロナウイルス禍で、鉄道をご利用になるお客様も低迷していますが、このキービジュアルをご覧になって、秋田に行ってみたいと思う方が増えれば幸いです」
秋田新幹線の記念キャンペーンは、19日開始です。秋田・岩手両県のこまち停車駅にある「NewDays」15店舗で、ポスターのビジュアル入りクリアファイルなど、16種の関連商品が発売されます。詳細は同社の公式サイトで確認して下さい。
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